第73話 連携の力、ゴーレム戦
サラとサラダの上空からの援護が、戦況を大きく変えていた。
二羽が、ゴーレムの頭上をぱたぱたと舞いながら、青い光の核を、クチバシでつんつんとつつく。ゴーレムは、頭上の小さな攻撃者を追い払おうとして、両腕を頭の上に振り上げる。その隙に、ゴーレムの胴体と、足元が、無防備になる。
「アメリアっ、今だっ!」
「了解っ!」
アメリアが、地を蹴って、ゴーレムの足元に飛び込んだ。
「一段ッ!」
膝の関節に、深い斬撃。
「二段ッ!」
反対の膝にも、斬撃。
「三段斬りィッ!」
三撃目が、ゴーレムの腰の継ぎ目をぱきりと砕いた。ゴーレムの巨体が、ぐらりと前のめりに傾いて、ずどぉぉぉんっと地面に崩れ落ちる。そして、頭部の青い光が、ふっと消えた。
「一体目、撃破ッ!」
俺は叫んだ。
「クワッ!」
サラが、宙で誇らしげに鳴いた。
「ぴーっ!」
サラダも、続いて鳴いた。
「アルテミスさんっ、次のゴーレムの頭部を、火球で狙ってください! サラとサラダが注意を引いてる間に!」
「うむっ!」
アルテミスが、両手をぐっと構えた。
「火炎連弾、改ッ!」
彼の両手から、何十発もの火球が、次のゴーレムの頭部に、ずどんと撃ち込まれた。火球は岩の頭部をぱりぱりと割って、内側の青い光を直撃した。光が、ぱっと消えた。ゴーレムが、ぐらりと前のめりに崩れた。
「二体目ッ!」
アイリーンが、後方で聖光の杖を、ぐっと頭上に掲げた。
「皆、援護しますわよ!」
彼女の杖から、淡い金色の光が、ぱっと放たれた。光は俺たちの足元にふわりと降りてきて、薄い金色の絨毯のように広がった。
絨毯の上に立つと、俺たちの足がふっと軽くなった。岩肌の地面の振動が、聖光に和らげられて、戦闘中の踏ん張りが楽になる。
「アイリーンっ、これ、何っ!?」
アメリアが叫んだ。
「聖光の、地の盾ですわぁ!」
「いつ習得したのっ!?」
「さっき、ですわぁ!」
「い……いつの間に!?」
◇◇◇◇
戦闘は、テンポよく進んだ。
三体目、四体目と、ゴーレムが次々と崩れていく。アメリアの三段斬りがゴーレムの足を砕き、アルテミスの火球が頭部の核を撃ち抜き、サラとサラダが頭上を舞って敵の注意を撹乱する。
俺は、戦闘の指揮を執っていた。
「アメリア、次は、右後方のゴーレム!」
「了解っ!」
「アルテミスさんっ、左前のゴーレム、もう少しでヒビが入ります。もう一発っ!」
「うむっ!」
しかし、五体目を倒した頃から、俺たちは息が上がっていた。アメリアの剣を握る手は、爪の根元から、薄く血がにじんでいる。アルテミスの火球の出力が徐々に落ちてきていた。アイリーンの聖光の杖も、淡い光がわずかに弱まり始めていた。
残り、五体。俺は、奥歯を噛んだ。あと、何か必要だった。
あの巨大なゴーレムの体を、まとめて撥ね飛ばす、何か。
俺は、両手を空に向かって突き上げた。
「イマジナリースキル! いでよ、子供のおもちゃ、巨大ラジコンっ!」
ぼんと空中に、何かが現れた。ずしりと岩肌の広場に落下したのは、巨大な、四輪駆動の車のおもちゃだった。体長三メートル。タイヤの大きさは俺の身長くらいある。ボンネットには、毒々しいオレンジ色の炎の模様。ご丁寧に、リモコンまで付属していた。前世のラジコン大会で、子供たちが夢中になっていた、あれだった。
「タクヤ、それ、何っ!?」
「ラジコン! 手元で自在に操作できる!」
「変わった魔法ね! で、どうするのっ!?」
「見てろっ!」
俺は、リモコンのレバーを、ぐっと押し倒した。
巨大ラジコンが、ぐぉぉぉぉっとエンジン音を響かせた。タイヤが、ぐいと岩肌を噛んだ。次の瞬間、車がぐおっと加速して、残り五体のゴーレムの方に、突進していった。
ずどぉぉぉぉぉぉぉんっ!
ラジコンがゴーレムの足元に激突した。ゴーレムの一体が、ぐらりと上半身ごと、ばらばらに砕け散った。
「効くっ、効くぞっ!」
俺は、ラジコンを操縦し続けた。車が別のゴーレムに向かって突進する。ずどんっ、また一体、砕けた。
アメリアが、ぽかんと口を開けた。
「タクヤ、あなた、こういうの得意ね」
「子供の頃、ラジコン大会で優勝した事ある」
「すごいのかどうか、よくわからないわ……」
「まあまあすごい、と思う……」
巨大ラジコンが、残りのゴーレム三体を、次々とずどんっずどんっとはね飛ばしていった。最後の一体は、アメリアが三段斬りでしっかりと足元を砕いて、決着。
広場が、しん、と静まった。
ゴーレムの巨体の残骸が、十体、岩肌に散らばっていた。
アルテミスが、汗を額から拭った。
「ふむ……タクヤ殿のスキル、相変わらず、意味不明だな」
「効けばいいんですよ」
「うむ。効いた」
石碑の奥に、新しい道が、ぽっかりと開いていた。
力の試練、突破。俺たちは、深呼吸をして次の試練へと向かった。




