第5話 ポンコツな女神様のお使い
とりあえず……何か食べようか……
いちおう、野菜やらなんやら、食べられそうなモノがキッチンのかごに入っていたので、チャチャっと料理する事にした。
「タクヤ! お腹減った〜」
なんか、いきなりこき使われてるというか、俺が書いてるラノベの主人公とは扱いがずいぶん違う……
手際良く野菜を刻んで、スープを作る。グルメシーンを書くために、小説家として料理もひと通りこなせるのだ。
キッチンに立ち、作業しながら俺はふと尋ねる。
「そういえば……俺をこの世界に呼び寄せた……アイリーンとかいう女神がいたんだけど、知らない?」
とりあえず……いきなり放り込まれて、聞きたいコトがたくさんあるのだ。
「そうねえ……アイリーン様は、魔王に対抗する唯一の存在、女神セリオン様に仕える、直属の聖なる存在。そうそうお目にかかれる方ではないわ」
「普段は知恵の泉で人々を見守るのが仕事。めったに地上に降り立つコトはないの」
「……ん? この声は……聞き覚えが……」
ふと、玄関の方を見ると……そこに立つのは、薄手のローブを身にまとったアイリーンの姿が!
「アイリーン様!」
アメリアが立ち上がって、駆け寄る。
「アメリアちゃん〜! 元気にしてた?」
抱き合って再会を喜ぶ彼女たちに……恐る恐る尋ねる。
「え……ええと……アイリーン……?」
「あ、タクヤ! 魔王のなるべく近くに転送したけど、どうだった? 倒せそう?」
(いやいやいや、いきなりそれはないっしょ!)
「え……いや……ちょっと絡んだだけだけど……」
「慌てるコトはないわ! 戦いはまだまだ続きます」
「アイリーン様! お腹減ってません? ちょうど、これから夕食なのよ」
「やったあ! もうおなかペコペコなんです〜」
いきなり一人増えた……俺は慌てて食材を追加、三人分の食事を用意する。しかし……女神様のお使いキャラから、なんかブレてる気がするな……
「うわあ、おいしそうですっ!」
「おおっ、すごくいい香り!」
テーブルに並べたクリームシチューと、サラダに歓声が上がる。
「いただきますっ!」
賑やかに食卓を囲む。一人暮らしだったので、見た目麗しい女性に囲まれた食事、なんか新鮮だ。
勢いよくシチューをかき込むアイリーンに、ふと尋ねる。
「普段はなかなか降りてこない、って言ってたけど、どうして、ここに?」
「……んぐ、ング……ええと……女神様に……仕事が雑だって怒られて、知恵の泉から追い出されたなんて……ングング、絶対言えないわ……!」
「……!!」
(めっちゃ言ってる……! 追い出された?? 確かにこの人、なんか雑だったな……)
「おかわり!」
「私もっ!」
アイリーンとアメリアは、勢いよくもりもり食事を続ける。
「ご馳走様っ!」
「うう〜んっ、眠くなっちゃった……」
そのまま、すやすやとベッドで寝息を立てる。……ていうか、ここ、俺の家だよね??
まあ……ふくよかボディの二人が並んでぐっすり眠る様子はなかなか尊いが……
そんなコト言ってる訳にもいかないので……床にタオルを敷いて、ごろんと横になる。今日は疲れたな……
窓の外では、見たこともない星座が、静かに瞬いている。
って言うか、転生してスローライフで小説書くプランはどうなったんだよ!!




