第4話 ダチョウ突撃!
「あぶねえっ!」
俺は思わずダッシュして滑り込み、卵を懐に抱き抱えて間一髪、攻撃をかわす!……俺は学生の頃、ラグビー部に二週間ほど体験入部した事があるのだ。そのときの経験が役に立った!
「命を粗末にするんじゃねえよ!」
すかさずアメリアが剣を振り上げて迫る。
「一段、二段、三段斬り!」
こ気味よく剣を振り、迫る魔物をなぎ倒す。
しかし……気がつくと、周りはすっかり魔物の群れに取り囲まれていた。
「これは……キリないわね」
アメリアが剣を構えたまま、つぶやく。
さらに、魔王は黒いベールをなびかせながら、手を振り上げて魔物たちを召喚し続ける。
「くそ……やっぱ、ボスを何とかしないと……」
俺は卵を懐に抱えたまま歯ぎしりをする。
とんとん
その時、誰かに肩を叩かれた。振り返ると……ダチョウがしきりに首を後ろにひねって、背中を指している。
「ひょっとして……背中に乗れってコト?」
確か……ダチョウは飛べないけど、すごい速さで走れると聞いた事がある。小説家である俺は、雑学が豊富なのだ。
ひょいと背中にまたがり、アメリアに向かって叫ぶ。
「アメリア、乗れっ!」
「え……ええっ!」
アメリアは訝しみながらも、続いて背中に乗り込む。
むにっ!
さすがに二人乗るときゅうきゅうで……背中に柔らかい胸の感触を感じるが……今はそんなコト考えてる場合じゃない!
「クワァアアッ!」
一瞬、ダチョウの目が鋭く光った気がした。そして……鋭い鳴き声と共に……
なんと、突然、ボスのいる所めがけて猛ダッシュ!!
「きゃああああっ!」
「うおおおっ! しっかりつかまれ!」
むにゅむにゅ!
振り落とされないように、アメリアはさらに体を密着させる。さらに背中に柔らかい感触が……しかし、俺も懐の卵を割らないように、必死にバランスを取る。
「クエエエエッ!」
さらに狂ったような奇声とともに突進するダチョウ。――卵を守るため、魔物の群れをかき分け、ボスめがけて突進する!
魔王アルテミスに近づくにつれて、魔物が大型化する。巨大な岩でできたゴーレムが、拳を振り下ろす!
「あぶないっ!」
ザアアアアッ!
土煙と共に、素早く横にステップを踏み、一気に横を通り過ぎる。ダチョウの速度は、時速70キロは超えるのだ。かわした後、追いつける魔物はいない!
「魔王アルテミス! 捉えたわよ!」
背中のアメリアが叫ぶ。
魔王は微動だにせず、迫るダチョウをじっと見つめている。
「……ほう、外界の生物か。アイリーンのしわざか……」
低いつぶやきと共に、右手を高く掲げる。
「来るぞ! アメリア、気をつけろ!」
「テメェの好きには、させなくってよ!」
「……漆黒陣! 魔界に堕ちろ!」
魔王の右手か、黒いオーラが放たれる。
ダチョウの背を蹴り、女剣士が宙を舞う!
「旋風斬!」
空中で大振りの一撃。黒いオーラを吹き飛ばす。
「連撃!」
その隙を逃さずに、落下する勢いと共に剣を振り下ろす。
「むおおおおっ!」
金属の擦れる音と共に、魔王は懐に忍ばせた小刀で剣を受け止める。
「スラッシュ!!」
アメリアの必殺技――正確なリズムを刻む、三連撃ラストの一閃、魔王を捉える!
ザザザザザザ……!
「……っつ!」
その瞬間、魔王はベールをひるがえしながら、後ろに飛びのき、紙一重で剣をかわす。
「魔王のくせに、逃げんじゃねえよ!」
「ふははは、今日は、ただの散歩だ。この辺で見逃してやろう」
そして、くるりと後ろを向いて、タタタタと森の方へ駆けて行く。ダチョウの速さなら、追いつけるが……深追いは禁物だろう。
気がつくと、魔物たちもその後を追って引き上げていく。呆然とする俺の背にアメリアの声が響く。
「戻るぞ! 村の被害が甚大だ」
「お……おう!」
ダチョウに乗って、村へ戻り……ケガ人の救助に駆け回る。ようやく一段落した頃合いで、再び小屋に戻った。
「ふあああ、たいへんだった〜」
アメリアはばたんとソファに座り込む。
「……ていうか……おなか減ったわね」
ふとテーブルを見ると、そこには巨大なガチョウの卵。
「…………」
「…………」
お互い顔を見合わせてごくりと喉を鳴らした、その時……
「クワァ、クワッ、クワッ!!」
部屋の隅っこで休んでいたガチョウが俺たちめがけて飛びかかる。
「いた、いた、いたたたっ!」
激しくつつかれて、体中傷だらけに……
ガチョウは卵を大事そうに抱えて、再び部屋の隅っこですやすやと寝息を立てる。
「……ていうか……イマジナリーで召喚した生き物って、消えずにずっと残るのか……?」




