第35話 スケベな巨大ハサミ
「イマジナリースキル! いでよ、鎖を断ち切る——ハサミっ!」
ぼん、と空中に何かが現れた。
ヴィオラの真横の地面に。
ズドオオオオォオン!!
地響きとともに、巨大な何かが突き刺さった。
それは——高さ二メートルはあろうかという――馬鹿でかい、銀色のハサミだった。その刃は地面に深々と食い込み、二本の握り手が空に向かってそびえ立っている。
「……」
「……」
「……」
「クワッ……?」
「ぴーっ……?」
全員……絶句した。
縛られたまま、アメリアが半目で見上げている。
「タクヤ……」
「あ、ああ」
「方向性は、合ってるけど……これじゃ、使えないじゃない!」
「す、すまん」
「形は合ってるけど……サイズが、ちょっと……」
「俺の想像力、相変わらずだな……」
俺は、ハサミに駆け寄って、握り手を掴んでぐっと引っ張ってみた。
びくともしない。
ぐぐ、ぐぐぐ、ぐぐぐぐ。
「重っ……これ、絶対、何キロあるんだよ……」
「ぷっ……」
ヴィオラが、扇子で口元を隠しながら、思わず吹き出した。
「あんた、何やってるの。逆さに立てて彫像にする?」
「うるさい!」
その時――。
巨大ハサミの刃が、ふぅっと——薄く光り始めた。
「えっ?」
光は次第に強くなり、眩しいほどの白い光が一斉に放たれる。俺は、思わず目を細めた。次の瞬間――巨大ハサミが地面から、自らすぽんっと抜けて――
「な、なんだ!?」
そして、ふわりと宙に浮く。まるで生き物のように、ぐるんっと向きを変えると――
シュバババババッ!
信じられない速さで、アメリア、アイリーン、アルテミス、サラ、サラダの周りをぐるぐると舞った。
空気を切り裂く音とともに、紫の鎖が——次々にぷつん、ぷつん、と弾けていく。
「きゃっ!」
「あらっ!」
「うおおっ!」
「クワッ!」
「ぴーっ!」
ものの数秒で、全員解放された。
俺たちも、ヴィオラも、ぽかんと空を見上げていた。
「な……何ですの、これ……」
アイリーンが、震える声で言った。
「タクヤ、あんた、本当に、原理わかってないの?」
「俺もよく分からないんだけど……効けばいいんだよ!」
しかし、巨大ハサミは……そこで止まらなかった。切るべきものを、まだ探しているかのように、空中でシュバババッ! と俺たちの周りを飛び続けている。
「あぶないっ!」
俺は、ふと嫌な予感がして、後ろを向いた。
巨大ハサミは、今度はアメリアめがけてぐるんっと舞い降りる。
「ええっ、待っ、ちょっとっ!」
シャキィイインッ!
巨大な刃が、アメリアの胸元の鎧の留め金を——軽々と切り裂いた!
ぱぁんっ。
乾いた音とともに、鎧の前面がはらりと地面に落ちた。アメリアの、白い、その下に着ていた薄手のシャツが丸見えになる。
そして、メロンのような胸の輪郭が、ふんわりと――。
「きゃああああっ!」
「うわぁッ!」
俺は、慌てて目を逸らした。アメリアは、両手で胸を、ぎゅっと隠して、その場にしゃがみ込んだ。
「タ、タクヤ、見ないでっ!」
「見てない! 見てないからっ!」
「絶対、見たっ! 見たでしょっ!」
「いや、その、ちらっと、しか――」
「ちらっと、見たぁ!?」
「す……すみませんっ!」
パッチィイインッ!
「いだぁッ!」
張り手がいつもより、ずっと強く飛んできた。
そうこうしてるうちに……巨大ハサミは、ぱたっと力を使い果たしたように、地面に落ちた。
ガランガランガラン――。
しーん。
ヴィオラが、扇子で口元を隠しながらぷるぷる震えていた。
「あ、あんたたち、面白すぎるわぁ……あっはっはっは!」
もう、戦意喪失。
俺は、防寒用の羽織りを取り出して、アメリアの肩にかけた。
「……ご、ごめん、本当に」
「……ふん。後で覚えてなさいよ」
アメリアは、頬を真っ赤にしたまま、羽織りの前をぎゅっと合わせる。その後で、ふっと彼女は付け足した。
「……まあ、あなたというより……」
「……?」
「あのハサミが、エッチでスケベ……なのね」
「そうそう、そうだよっ! 俺じゃない……です」




