第13話 決戦! 北の魔王アルテミス
俺たちは、塔の最上階を目指して、再び階段を駆け上る。
ようやくたどり着いたのは、塔のてっぺん。広い円形の部屋の中央に、黒いベールをまとった大男――魔王アルテミスが、玉座に座って待ち構えていた。
「……来たか、外界の者よ」
低い声が、部屋に響く。
「アルテミス! もう逃がさないわよ!」
アメリアが、剣を構える。
「ふふん。ベルセルカーとメフィスを倒したか。なかなかやるな」
「お前も倒す!」
「やってみるがいい」
アルテミスが、玉座から立ち上がる。手には、黒い大剣。
「来い!」
アメリアが、突進する。
「一段、二段、三段斬り!」
しかし、アルテミスは、軽々と三連撃を受け流す。
「ふん、その程度か」
「ぐっ……」
返す刀で、アルテミスがアメリアに斬りつける。アメリアは、寸前で受け止めるが、力負けして後ろに弾き飛ばされる。
「アメリア!」
俺は、駆け寄ろうとする。
「タクヤ、来ないで! あなたは、スキルを使う準備を!」
「……っ、わかった!」
俺は、頭の中で、状況を整理する。
アルテミスを倒す方法……"転ポテ"の中で、強敵を倒すシーンを思い返す。
第三部のラスボス、オールドポテト魔人を倒したのは――伝説の魔剣"ポテトピーラー"。毒素を噴き出す古いポテトの芽を、ごっそり削りとる、緊迫したバトルシーンで登場する武器だ。
ちょうどヤツのツノは弱点っぽいから……ピーラーで削り取ってやるぜ!
「アメリア! スキルを使うぞ! 下がれ!」
「は、はい!」
アメリアが、後ろに飛び退く。
「イマジナリースキル! いでよ、伝説の魔剣、ポテトピーラー!!」
ぼん、と空中に何かが現れる。
ずっしりと、地面に落下したのは――
……巨大な、豆腐。
「……豆腐?」
アメリアが、頭を抱える。
オールドポテト魔人を倒したあと、肉じゃがにしておいしく頂いたのだが……そこに入れた焼き豆腐が頭によぎったんだろう……
「いや、これはこれで意味がある!」
何とかするしかない……俺は、必死にフォローする。
「アルテミス! 俺を切れるか!?」
アルテミスは、首をかしげながら、豆腐の壁ごと斬りつけてくる。
「ふん!」
しかし、豆腐の壁は、想像力スキルの恩恵を受け――見た目に反して、粘着力が異常に高くなっていた。斬りつけた剣は壁にのめり込んでしまう。
「ぬっ!? なぜ斬れぬ!」
「今だ、アメリア!」
俺は、豆腐の上から飛び降りて、アルテミスの側面に回り込む。アメリアも、反対側から斬りかかる。
「一段、二段、三段斬り!」
アメリアの三連撃が、アルテミスの右肩を捉える。
「ぐああっ!」
アルテミスが、よろめく。
その時、アイリーンが、両手を高く掲げる。
「私もやりますわ! 女神の力で!」
アイリーンの両手から、淡い光が放たれる――
が、その光は、なぜか、後ろの壁を照らしただけだった。
「……あれ?」
アイリーンが、自分の手を見る。
「あれー、出ない……」
「やっぱ、追い出された影響かしら……」
アメリアが、ぼそりとつぶやく。
「……追い出された?」
アルテミスが、不思議そうな顔をする。
「いえ、コチラの話ですわ!」
アイリーンが、慌ててごまかす。
「お前、女神の使いだと聞いていたが……ちょっと信用ならないな……」
アルテミスが、半目になる。
「失礼ですわ! 私は確かにアイリーンですわよ! ただちょっと、女神様に怒られて……あ」
「やっぱり追い出されてるじゃないか!」
まさかの、敵にツッコまれるアイリーン。
「ふん、お遊びに付き合うのはここまでだ!」
アルテミスが、再び大剣を振り上げる。
「漆黒の波動!」
黒いオーラが、俺たちを襲う。
「アメリア、伏せろ!」
「は、はい!」
俺たちは、再び豆腐の壁の陰に隠れる。豆腐の壁が、黒いオーラを受け止め――
ぐにゃり、と凹むが、貫通はしない。
「やっぱ、この豆腐、防御は完璧だな……」




