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元クラスメイト目線

「おはよー! 今日の英語自習になんないかな」「それな。まじダルいわ」いつもと変わらない朝の教室。窓を叩く雨音さえ、談笑する僕らの声にかき消されていく。ふと、教室の隅にある席が目に入った。机の上には教科書も筆箱も置かれていない。昨日からずっと、あそこだけぽっかりと穴が開いたみたいに空白だ。「あれ、あいつ今日も来てなくね?」モブAが、司の席を指差してヘラヘラと笑う。「あー、ストーカー野郎? 逃げたんじゃないの。凛にバラされて居づらくなったんだろ」「あはは、確かに! 逆恨みとかされたら超ウケるんだけど」クラスの空気は今日も「正義」に満ちていた。凛を守った僕ら、ストーカーを追い出した僕ら。自分たちがどれほど残酷な言葉を、たった一人の少年に投げつけたかなんて、一秒も考えたことはない。ふと、クラスの輪から少し離れた席に座っている凛に声をかける。「凛、大丈夫? 司が来なくなって、少しは清々した?」凛は一瞬、肩を跳ねさせた。視線を泳がせ、乾いた声で「……うん、そうだね」と呟く。その顔は少し青白いようにも見えたけれど、誰も気に留めない。どうせ、ストーカー被害のショックか何かなのだろう。「あいつがいなくなって、このクラスもやっと平和になったよな」「明日も来なくていいよ。一生不登校でいいじゃん」司が昨日、どんな顔をしてこの教室を出ていったのか。雨の中、どんな絶望を抱えて歩いたのか。そして今、彼がどこでどんな姿になっているのか。僕らは何一つ知らない。ただ、司がいないことで広くなった教室を、「快適だ」とさえ思っていた。司の机の下に、昨日誰かがつけた泥の足跡が残っていることさえ、誰も気づかずに踏みつけていく。チャイムが鳴り、いつも通りの授業が始まる。司という存在は、もうこの教室の記憶から、埃のように掃き出されようとしていた。

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