魔神との出会い
自殺をした僕、鈴木司は何故か黒い空間にいた。
司「ここは地獄なのか」
???「地獄じゃないよ。司くん。まぁ、まずは自己紹介だね。ボクは君たちの世界でいう魔神をやってるザラムだよ。」
ザラム「……で、キミが鈴木司くん、だよね? キミの世界の言葉で言うところの『じさつ』ってやつをして、ここまで流れてきちゃった迷子さん。」ザラムは玉座の上で小さく組み替えた足を揺らし、面白そうに司を見つめた。その瞳には、子供らしからぬ深い知性が宿っている。
ザラム「怖がらなくていよ。ボクは魂を無闇に食べたりしないから。……ただ、ちょっと困ってるんだ。魔界に人間の魂がそのままの形で落ちてくるなんて、本来ならありえないことなんだよね。キミ、死ぬ間際に何か特別なことでも願った?」ザラムはふわりと玉座から浮き上がると、司の目の前までゆっくりと降りてきた。
ザラム「これも何かの縁だ。行き場がないなら、ボクの『退屈しのぎ』に付き合ってみない? ここで永遠に暗闇を見つめているよりは、ずっとマシだと思うけど……どうかな?」
永遠とも思える静寂の中で、ザラムの言葉だけが僕の鼓膜を揺らす。『退屈しのぎ』。あっちの世界では、僕の存在そのものが『退屈しのぎ』のいじめの対象だった。家族にとっても、僕のSOSは日常を邪魔する『退屈なノイズ』でしかなかった。
司「……僕に、まだ『次』があるっていうのか」掠れた声で呟く。一度捨てた命だ。未練なんて、泥水にまみれた記憶と一緒にあそこに置いてきたはずだった。けれど、ザラムの底知れない瞳に見つめられていると、胸の奥に燻っていた冷たい怒りと、それ以上に強い「今度こそは」という乾いた渇望が、心臓を叩く。いじめられ、裏切られ、透明な存在として扱われ続けた僕。もし、場所を変えて、名前を変えて、運命さえも変えられるのなら。
司「……いいよ。付き合ってやる」僕はザラムをまっすぐに見据え、震える拳を握りしめた。もう、奪われるだけの人生はいらない。誰かの顔色を窺って、震えて過ごす夜も真っ平だ。
司「地獄だろうと、退屈しのぎだろうと、ここよりマシなら何だっていい。……ザラム、僕を別の世界へ連れて行け。鈴木司を、ここで終わらせるために」自嘲気味な笑みを浮かべた僕を見て、魔神は満足げに、そして残酷なほど美しく微笑んだ。
ザラム「いい返事だね。今から君はボクの退屈しのぎだ。簡単に死なれては困るからボクの加護を与えてあげる。あちらの世界でその力を存分に発揮するといい。」
そこで僕の意識は途切れた。




