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ナマクラ魔剣とポンコツ知恵袋、ガチャな俺  〜世界が俺にキャラを押し付けてくるんだが?!  作者: まお
鏡の聖女と、その裏に潜む者

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拠る術と、見据える先

 結果、ラウドの食事はユーナによって、王宮守護隊の食事はサナによって、大きく改善された。

 まずはマヨネーズ。そして、唐揚げ、カルパッチョ、ブイヤベースにコロッケも。次々と新メニューが並ぶようになった。

 まぁ、美食にも強く拘っていた、あの万能の魔女の関係者らしいのだ。そのレシピを持つのだから当然といえば、当然であった。


 そして、ラウドも変わっていった。ラウドは正直、ティアが鏡に捕らわれるまでは勉強などに興味を持っていなかった。

 姉のティアが非常に聡明だったこと、ラウドがまだ幼いこともあり、ラウドはあるがままに過ごしていた。さらにラウドは希少な結界魔術などを感覚的にだが高度に使えていた。そのせいもあり、勉強はおざなりにしてしまっていたのだ。

 だからラウドは今、事実上初めて王族という存在に対して真剣に向き合っている。そして王として相応しくあるための努力を重ねている。


 魔術について。魔導具(アーティファクト)について。グランタイズ王国の歴史について。

 そして経済のこと、軍事のこと、政治のこと。

 ラウドは勉強に必死に取り組むほどに、……少し苦手になってきてしまっていた。

 調べれば調べるほど難しくなっていって、知れば知るほど何も知らないと思い知った。

 王族であることの意味を理解出来ると、自分の無力が目についた。

 進めば進むほど、迷ってしまいそうになった。それでも、決して投げ出さず、ただただ今の自分にできることの一歩先へ挑み、超えていった。


 そんなラウドの表情は、以前まではホワホワとしていたものが多かったが、最近ではキリっとした顔も増えてきた。


 もっとも、今この瞬間に限って言えば


「この……ハンバーグは凄いのだ。この柔らかさといい、ジューシーで、凄いのだ!もう……凄いのだ!」


 食事に全神経が回っているので軽く語彙が死んでいる。しかし蕩けた顔は至福を雄弁に語る。

 そんなギャップに萌える近衛騎士や給仕メイドがニコニコと見守っている。



 そんな風に城は一見すると楽しく順調な日々が過ぎていった。



 そうして一ヶ月もする頃には、ユーナは他の料理人にもレシピを教え王宮の食事レベルをかつてないほど高め、サナも色々な部隊の食事改善に貢献できる程度には信頼を勝ち取れて来ていた。

 それと……まぁ、どうでもいい情報になってしまうが、サナは特に色々な……仲間?というか同士も増やしていたようだ。

 その同士には給仕メイドのアミーを筆頭にミッシェル侍女長をはじめとした女官達がおり、なにやら本のやり取りで異常に盛り上がっていた。

 ラウドはそこの場面を見たとしても決して近づいてはいけないとケイトとライムから強く言われていた。

 なんか、腐った本だとかなんだとか。

 まぁ、イミガワカラナイ上に本当にドウデモイイことではありそうなので、ラウドは素直に放置していた。




 そうして季節も移りかわり、本格的な冬の到来と共にラウドの教育もここで一気に難しいところまで来ていた。

 実地として治水に関する法案にも関わらせてもらった。隣国との貿易やその交易のための街道整備や港湾整備についても資料を見て理解出来るようになってきた。穀倉地帯を襲っていた魔獣の討伐にも参加した。

 だが、それでもラウドは焦っていた。

 ラウドは確かな成長を実感していたが、まだ届いていない。そして残されていると思われる時間はもう限界に近い。


 "良き王とは、なんなのだ?"

 "堅王アルクトのように富を集めればよいのだ?"

 "覇王ギルグスのように武を極めればよいのだ?"

 "どうすれば、王として正しく在れるのだ?"

 "彼らを超える?

 本当に?ラウドは何を成せば……"


 最近はそればかりが頭をめぐる。

 治水は結局政務文官が委細整理を進めてくれ、地方の担当官が更に細かいフォローまでをしてくれた。

 貿易は商業ギルドが末端までバランスを整えてくれていたことを知った。

 討伐には騎士団が届かない案件などには冒険者ギルドが体を張ってくれていた。

 結局、彼らのおかげだ。

 自分はただ居合わせただけ……。


 ラウドは自分ではちっぽけな成果すら成していないと痛感していた。




 そんなラウドが行き詰まりを感じていたある日。城では今日も量も質も満足な食事が振舞われ、夜の訪れとともに静かになりつつあったが、ラウドの書斎にはユーナ達とケイト、ライムがラウドのもとに集まっていた。


 ケイトは一般的な解呪の概念を集めてくれている。ライムは伝承から真実を読み取ろうとしてくれている。ユーナ達は起こる可能性のある決戦の準備を進めている。


「ラウド殿下はほんとに頑張るね。私がそれくらいの頃は薬草を摘む程度でも褒められていたのに」

「殿下、焦ってはいけません。まずは敵を知らなければ」


 ユーナもケイトも追い詰められたようなラウドの表情を心配そうに見ている。


「でも、このままでは父上を説得出来ないのだ。

 このままでは、……

 ――違う!姉上も良き王へと望んでいた!まだ、届くはずなのだ」


 あの魔導鏡は特殊な空間に在る。鏡と対となる魔導具"創崑"は王が秘宝として管理している。創崑はそこへの道を繋ぐ手段として、また鏡との契約者の証としてグランタイズ王家に代々継がれてきたのだ。

 まだ王太子として立っていないラウドの触れられるモノではない。だがティアを取り戻すためには、あの宝玉を借り受けなければならない。

 父は王族としての力を得るためには精霊との契約が必要だと言っていた。

 それなら、精霊との契約が必要でないことを。それでも国を守れると言うことを示せればよい。そうすれば、契約は不用だと言えるのではないか。

 つまり……結果をだせばよい。

 だが、ラウドはまだ届いていない。そして、ラウドは対となっているティアがかなり摩耗してしまっているのを感じている。


 焦りばかりが募る。

 この作戦にしてもそうだ。武力も魔力も、解呪についても万能の魔女の後継者と思われるサナ達に頼るしかない。そのための準備もケイトとライムが調べ上げ、根回しをしてくれている。だから、ラウドは王太子として立つため政務に邁進している。

 それしか……できないから。

 その政務も、政務官や各ギルドの皆がいなければまともに立ち行かない。

 王として、民のすべてを支えるどころか、頼ってばかり。幼いことは言い訳にもならない。ティアを取り戻すためには今、すぐにでも立たなければならないのだから。


 コンコンとノックが響き取次を問う声が聞こえる。

 話の内容が極秘なため、ケイト達に給仕も任せて他は室外に下がらせている。

 ライムがドアを開けようとする前に、開かれたドアから入ってきたのはその行為が許される者の一人。

 ――王妃であった。


読んでいただきありがとうございます


次回嘘予告

デデーン!ユーナ、アウトー

「笑ってはいけない王宮」

王妃はどんな格好してたんだろうね?


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