食事中はマナー違反なのだ!
「あばばばばばばばば」
男が急いで駆け寄り、魔法陣を解除する。ラウドも聞き覚えのある声に急いで駆け寄ると、そこには軽く焦げたケイトらしき人がひくひくしていた。
「ケイト?」
ラウドが呼びかけると、やっぱりケイトだった。それはガバっと跳ね起き、ラウドに駆け寄った。そして、一気に術式を展開する。
「『嵐渦』!『遍き、満たし、導け――」
竜巻がラウドとケイトを守るように包み、さらに次の魔術を発動させようとする。
――次の瞬間、竜巻が霧散する。
そこには、剣を振りぬいたサナの姿があった。
「っく!『集い、暴れろ 嵐壊』!」
「ケイト、待つのだ!」
略式詠唱にもかかわらず、精度高く描かれた立体魔法陣により高速で発動された魔術がサナに真空の圧縮空間となって襲い掛かる。だが、再び振り抜かれた剣により魔術が掻き消される。
「!
まさか、術式の構成を切っている?ありえない!」
「ケイト、聞くのだ!
料理が台無しになるのだ!」
「こうなれば、ラウド坊ちゃまだけでも、――」
バッチーンと音が響き、今度はラウドがその手を振りぬいた。
「もう!ケイト!話を聞くのだ!」
「え、ラウド坊ちゃま。こいつらに攫われたのではないのですか?」
涙目でお尻を抑えるケイトは珍しくアタフタしている。
「いま、ユーナ達と料理を食べようとしていたのだ!
食事中に魔術を撃つのは、マナー違反!なのだ!
ケイトもいつも言っているのだ!
それと、坊ちゃまと呼ぶのはダメだと言ったのだ!ラウドはもう赤ちゃんじゃないのだ!」
「いや、あのラウド様、それどころじゃなくて、あの攫われて?」
「あー。ごめんなさい、その、説明をさせてちょうだい。とりあえず、危害を加えるつもりは一切ないから」
ラウド以上に戦闘に乗り遅れていたユーナが何とか仲を取り持とうとする。サナは既に剣を収め、男の方も向こうの方で魔法陣を張り直している。術を真正面から潰されたケイトは少しの油断も見せぬように、それでもユーナからの提案を受け入れざるを得なかった。
「わかりました。ですが、術式はステイさせてもらいます」
あえて強気にそう宣言し、ケイトは見事な立体魔法陣を複数展開した。
ケイトも加わり改めて食事が始まった。錬金術で野菜や香辛料の瞬間促成ができるため、野営とは思えない新鮮で豪華な材料。そして、マヨとか呼ばれるなぞの調味料や不思議な窯による調理などで、宮廷魔術師として長らく王級で暮らすケイトとラウドでもなかなか食べたことがないような料理が並んでいる。
「あー、まず説明させてちょうだい。私たちの旅の目的だけど……」
「ケイト、これ美味しいのだ!そっちはなんなのだ?それも美味しいのだ?」
「ラウド様。すみません、私も初めて食べるものばかりなのです。今度アミーに話を聞いてみましょう」
ケイトは彼らから悪意は感じていない。だが、この場で油断するほど、彼女の職責は軽くない。
ユーナは、聞いてねぇかもと思いながらも旅の目的を語った。とある魔術儀式の完成を目指していること、その魔術には多くの感情と魔力が必要なこと。そしてそのために、人々に絶望を与えている魔物を狩っていること。
「それで、この近辺で一番絶望していたのがラウド様でした。だから、とりあえず、その場から逃がすために、ここへ呼び寄せたんだよ。んで、ラウド様に何があったんですか?
なんか、鏡に姉が食べられたとか、なんとか」
ガツガツと一気に食べ終えたらしいケイトは、今更ながら取り繕うように口元を優雅に拭うとユーナに顔を向けた。
「それは、王家の問題です。
これ以上の干渉は無用です。さ、ラウド様帰りましょう」
「姉上を助けたいのだ!父上が、なんと言おうとも!」
読んでいただきありがとうございます
次回嘘予告
第二問!これは、どこのこと?
「クイズ!王家の問題」
地球押しが炸裂するか?




