定義:喰
クリトがチエから預かった、二つ目の奥の手――草薙の剣。
ピキッ、パキパキパキと音が響き、黒い刃にヒビが入る。
そのヒビから光が漏れ、その光が強くなるたびに、黒い部分がはがれて落ち、溶け消えていく。
黒い部分が溶けるたびに、クリトの表情も変わっていった。歪み、淀んだ雰囲気も輪郭がはっきりしてくる。熱く燃えていた目に相応しい、凛とした表情になっていく。
そして剣の刃がすべて白く輝く頃には、クリトは獰猛な笑みを浮かべていた。
最後に刀身が見えないほど強く輝くと、ふっと光が収まり、見事な刃文の太刀が現れていた。
「行くぞ、クサナギ」
太刀を振り下ろし、黒く裂けた穴を空間に作ると、一足に飛び込んでいった。
一方の黒骨騎馬は、触れることすらできない薄膜の中に興味をなくしていた。
▽ ▽ 黒骨騎馬 ▽ ▽
そういえば、番になるはずだったアレはどうやら食われたようだ。
残念だが仕方ない。――だが、その近くに旨そうな魂を感じる。
黒骨騎馬はそう思い頭を巡らせた。
が、右後方に妙な気配を感じ、振り返ると、さっきの変な男が立っていた。
「そう言えば、お前ら亜死族は、恐怖を喰らうらしいじゃないか。
魔物のくせにグルメとは、贅沢だな」
ふざけたことを言い出した男は、上位の魔物である自分をまったく恐れずに睨み返している。
気に食わない。
一気に加速した黒骨騎馬は真正面から向かっていく。
だが、男は避けるそぶりも見せずに笑っている。
「今日のディナーは俺がご馳走してやる。遠慮せずに、味わえよ?
――絶望ってやつをな」
跳ね飛ばした――つもりだった。
だが、なぜか無様に転がっていったのは自分だった。
右前脚が、無い。
ありえない!
「軽いな」
いつの間にか近くに来ていた男は、見下ろしていた。
……こいつは、何なんだ?
とりあえず、距離を取らねば!
再び跳ねようにも、判断に戸惑い数瞬遅れて、更に脚が斬り飛ばされる。
「逃げられると思ってんの?無理だろ。
こいつはお前なんかを歯牙にも掛けねえホンモノを相手にしてきた神剣だぜ?
『定義:喰』」
身体に負荷がかかり、一気に潰される。力が入らない。魔力が、霧散する。
……体が維持できない!持って行かれる!なぜ?どうして!
そして、気づいたときには、剣に眉間を貫かれていた。
「終わりだ。『執行:蝕』」
眉間から白い刃をはやした黒骨騎馬は極短い詠唱の終了と同時に一気にボロボロと崩れていく。恐怖の体現として君臨していた黒骨騎馬は、その味に溺れながら意識を失っていった。
▽ ▽ ▽
やがて、虫の音が戻る。
そこには、漆黒の馬鎧だけが残されていた。
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次回嘘予告
それはまだ、終わらない。
「クリトの二日酔い」
君は迎え酒という暴挙に絶句する。




