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嘘つき男の英雄譚  作者: ベラシックス
11/12

勘違いgames


「おい!起きろ!!」


看守の怒号と牢の檻を蹴る音で起きた錬太郎。


「なんだよ!うるせぇなぁ!!」


そんな錬太郎の元に昨日の夜と同様に食事が乱暴に投げ入れられた。


「あぁ~飯が!!」


「偉そうな口をきくからだ!このブタ野郎が!!」


散らばる食事を見て戸惑う錬太郎を尻目に、看守は立ち去って行く。


(うん?そういえばアイツ・・あんなに弱っていたのに・・気のせいか・・)


昨日とは明らかに違い、血色が良くなった錬太郎に違和感を感じながらも看守は立ち去って行った。


「あぁ~また飯が・・まともに食えねぇじゃねぇかよ。」


錬太郎はぶちまけられた食事を見つめながら、悲観に浸っている。昨日と同じでぶちまけられた粥のような食事は汚い床の汚れと混ざり合い、グレーの水溜まり状態になり始めている。

それを見て錬太郎の腹の虫が大きく鳴った。


(あぁ~マジで腹が減って来たわ・・もうこの際、こんな物でも食っちまうか。体力回復させないと話にならねぇしな・・)


錬太郎はベッドを降りて、床に落ちた食事にありつこうとした。


(なんでこんな飯食わないといけねぇんだろうな・・いくら体にダメージ受けてるとはいえ・・・・うん?!あれっ?体軽くねぇか?・・てか、体の傷も無くなってねぇか?)


体や顔を擦ってみると、受けた傷が完全に回復している事に気付く。


「・・これは一体どういう事だ・・・・あっそういうことか!!」


錬太郎の頭の中に、RPGゲームで宿屋で宿泊したら、体力が全回復した事が過った。


「なんだよ!そういうことだったのかよ!!・・って事は死なない限り、この世界では何度でも寝れば回復可能・・つまり、無双出来るじゃねぇかよ!!・・なんだよ!この仕組み分かってたなら、昨日も即寝て回復してたのによ!!」


錬太郎が一人でこの世界での仕組みを解いたと思い、一人で感心し、独り言を喋っていると看守が戻ってきた。


「おい!!うるさいぞ!!貴様!!」


「あ゛?・・あっ悪かったな!一人で、デカイ独り言を喋ってたみたいでよ。気持ち悪いよな?悪い、悪い。」


すると、看守は牢屋の鍵を開けて、強引に錬太郎を抑え込んだ。


「て、てめえ!何をしやがる!!」


「何をするじゃねぇんだよ!こっちに来い!!」


看守は錬太郎の手に手枷を取り付けると強引に引っ張り出した。そして、とある一室に連れて来られた。その一室には、鼻下に三日月のような髭を蓄えている明らかに看守とも、昨日見た警備隊とも身分の違う雰囲気を醸している人物が座っていた。

その人物は錬太郎が室内に入ると無言で目の前のテーブルの対面の椅子に座るように促す。


(なんだこいつ?・・もしかして、ここが取調室か?・・って事は下手にこいつの機嫌損ねるのは得策じゃねぇな・・)


錬太郎は大人しく指示に従い座った。

すると、その人物は矢継ぎ早に錬太郎へ、質問をした。


「ごほん!・・昨日、君が物乞い一人を串焼きの串にて、殺傷した事に間違いはないかな?」


「はい・・でも、これには理由があって・」


「相分かった・・コイツは有罪だ。裁判に掛けるまでも無く、死刑が妥当だろう。即刻連れて行け!!」


「えっ!?」


有無を言わせずに錬太郎は看守に再び連れて行かれそうになるのを抵抗する。


「何をしている?早く連れてゆけ!私は今夜会食に参加しなければいけないんだ。早くここの仕事を終わらせて、ここを出なくては間に合わなくなるかも知れんのだ!ぐずぐずするな!!」


取調官の苛立つような様子を見せながら、看守を怒鳴り付ける。


「すいません!!今連れて行きますので!・・おい!貴様!!早く出ろよ・・」


(ふざけるな・・こっちの言い分も聞かないでいきなり死刑だと?しかも裁判すらない?しかも裁判自体あるみたいな口振りじゃねぇかよ!!・・この髭野郎ふざけるな!!てめえの良く分からねぇ勝手な都合の会食だか、食事会だかで、勝手に殺されて堪るかよ!!)


その時、ローレンスに錬太郎の横柄な態度が貴族と勘違いされた事を錬太郎は思い出した。突然錬太郎は笑い出した。それを見た取調官は錬太郎に問い質す。


「くっくくく・・あっはははは~!!」

「おい!貴様!!何がおかしい!!」

「これが取調べ?笑わせるのも大概にしろや!!」

「はぁ?物乞い風情が偉そうに・・人生やり直してから出直して来い。」

「はい?てめえは、まだ俺が!物乞いだと思ってるのか?」

「うん??」

「だ!か!ら!俺が!!まだ!物乞い風情だと!本気で思ってるのか!!てめえは!!」


錬太郎のあまりに強気な言動に取調官は気圧され始めた。そして、錬太郎のその眼はどんどんグレー掛り始めた。


「じ、じゃあ、なん、なんだね、君は?物乞いじゃないとするなら・・」

「貴族だよ?」

「!?・・貴族ってどこのですか??」

(やべっ・・考えて無かったな・・ここは常套句で行くか・・)

「倭の国だよ!!」

「!?倭の国ですと!!」


その言葉を聞き、取調室にいた取調官、看守共に血相を変えて、その場にひれ伏した。

その反応を見て、逆に錬太郎の方がびっくりした。


(なんだ!?コイツら・・さっきとは違って、明らかにビビりまくってるぞ)


すると、取調官が口を開いた。


「何も知らずに数々のご無礼を失礼しました!!倭の国と言えば、まだ拝謁した事は御座いませんが、現在の勇者様を輩出した幻の国と伺っております・・まさか、その国の方がこんな田舎に現れるとは・・」


(ふ~ん・・勇者ね・・こいつぁ良いや!!)


その事を知り、錬太郎はニヤリと笑った。そして、服する取調官の肩を掴むと言った。


「なんだよ。そんなにアイツメジャーになっちゃってたのかよ。」


「えっ!?」


「えっ!?じゃねぇよ!アイツと俺は幼なじみでダチだ。あぁ~あ・・アイツ曲がった事大嫌いだからな・・こういう不正だったり、悪い意味で適当仕事は許さねぇだろうな・・」


「えっ!?まさか!?」

「そのまさかだよ・・」

「そんなぁ~!!勘弁して下さいよ!!」


すると、錬太郎は自分の手枷を目の前に見せるように突き出した。それを見た取調官は看守に錬太郎の手枷を外すように促した。外された錬太郎はダルそうに体をストレッチする。

そんな錬太郎に許しを乞うように取調官がすり寄って来た。


「あの~これでなんとか今回の事は不問に・」

「あ゛゛ん?これで不問だと??ふざけるなよ?看守には不味い食事出される、更にはそれをぶちまけられる。更に取調べで審査するてめえは、てめえの都合で人の言い分を聞かずに殺そうとしやがった!・・てめえは人の命をなんだと思ってやがるんだ?うん?」

「すいません・・返す言葉がありません・・」

「返す言葉?そんな物は良いんだよ!!誠意って物を見せろよ!誠意って物をよ!!」

「えっ!?誠意ですか?・・どうやって?」

「はぁ・・てめえはそんな偉そうな髭まで蓄えてるのに、そういう知識は蓄えてないんですか??」

「と言いますと?」

「あるだろ?てめえみたいな奴は誰か都合悪い輩の罪見逃す代わりに金受け取ってたりよ。」

「・・いや、それは・・」

「あるだろ!!正直に言わねぇと俺のダチ・・勇者の野郎に・」

「分かりましたよ!!ちょっと待ってて下さいね!!」


取調官は取調室の中に置いてあった自分のバックから、お金の入った皮袋を取り出した。その中から数枚金貨を取り出して差し出そうとしている。錬太郎は差し出された金貨ではなく、強引に皮袋の方を踏んだ食った。


「あっ!?ちょっとそれは!!」


皮袋の中は金貨や銀貨で溢れている。


「なんだよ・・めちゃくちゃあるじゃねぇか・・これはダチに会った時に寄付金として渡して置いてやるからよ!!」

「でも!それは!!」

「なに、ケチケチすんなって!!お前の名前も伝えて置いてやるからよ!!名前は?」

「ハインツです・・」

「ハインツか!分かったぜ!!・・おい!!そこの看守!!」

「はい!!」

「俺を外まで案内してくれよ!」

「えっ!?・・ハインツ様良いんですか?」

「・・良い・・外までお連れしろ!!」

「はい!!こちらになります!!」

「おぅ!!」


錬太郎は看守の案内で部屋を意気揚々と出て行く。それを見送ると、ハインツは腰が砕けるように、その場所に座り込んだ。


「危なかった・・まさかあの物乞いが、勇者様と同郷の貴族だったとは・・いきなり現れた勇者様の出身の幻の国・・一部の国の貴族しか知らぬ特秘の情報・・ただの物乞いが知ってるはずもないしな・・とりあえず、今日から心を入れ替えて仕事に取り組むか!おい!次の者を呼べ!!」

「はい!!」


ハインツは取調室の乱れた椅子やテーブルを整えると、座り直して次の取調べ対象者を静かに待つのであった。



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