~偏見服屋~
看守に案内され、錬太郎は監房の外へ出た。
「あぁ~日の光と新鮮な空気が気持ち良いぜ!!」
錬太郎は背伸びをすると恐縮状態の看守に肩を掛けた。そのいきなりの行動に看守は更にびくびくしてした。
(なんだ?・・もしかして、俺殺されるのか?コイツに、要らなく牢屋で飯をぶちまけたりしちまったしよ・・なんで俺はあんな事を・・)
「おい!!」
「はいっ!!」
「これ、取っておきな!ここまで送ってくれた駄賃だ!」
錬太郎が肩を掛けた腕から差し出された手には、金貨1枚が握られて差し出されている。
「えっ!?」
「えっ?じゃねぇよ!!黙って貰ってとけ!!なぁ!」
錬太郎は強引に金貨を看守の男の手に握らせた。
「ありがとうございます!!流石、勇者様のお知り合いは豪快で気前も良いですな!」
「だろ?てか、お前よ。俺にしたみたいな対応を毎回他の奴にしてるのか?」
「それは・・」
「それは弱い者虐めになるからな!やっちゃいけねぇ事だぞ!俺みたいな奴がいたら一発アウトなんだからな!!」
「はい!すいません!!肝に銘じます!!」
「分かったなら良いや。ところでよ。ここら辺で上等な服が売ってる店はどこだ?」
「えぇと・・」
「あぁ、面倒くせぇ!お前付いて来て案内しろや!!」
「えぇ~私はまだ仕事の方が残っておりまして・・」
「良いから、良いから!行くぞ!・・じゃないと、このお前に渡した金は返して貰うぞ!」
「えぇ!?そんなぁ~・・ちょっと待ってて下さいね!!」
看守は急いで中に戻ると、頭に被っている簡易的な兜と看守服の制服を着替えて、普段着姿で戻って来た。
「はぁ~、はぁ~・・お待たせしました!」
「おぉ!着替えて来たのか?早かったな!じゃ案内よろしくな!」
「はい!お任せ下さい!!」
看守の男は汗だくの顔を拭きながら、先導して意気揚々と街を案内してくれた。程なくして目的の服屋に到着した。今まで案内された店の外観とは違い明らかに豪華な外観から高級店なのが伺える。店の前に着くと、看守の男はその場に立ち止まって言った。
「では、私はここで待ってますので、貴方はどうぞ中へ・・」
看守男の明らかに先程までの明るい様子とは違っているのが、見て取れた。錬太郎は理由を問い質すと、この世界では身分制度があり、この店は貴族御用達の御店であり、自分みたいな平民の一看守たる自分が安易に立ち寄って良い場所ではないと言う説明を受けた。
錬太郎は思った。
(なんだ。そんな事かよ・・下らねぇ・・)
そして、強引に看守の手を掴むと抵抗する看守を諸ともせずに錬太郎は店に入って行く。店の中には小綺麗に身なりを整えた店員数名と、派手な服装に身を包んだオカマ男がいる。男は服をトルソー人形で立体裁断で真剣な眼差しで作っている。
錬太郎達がドアを開けると、店員達は一斉に出迎えた。
「いらっしゃいませ!!」
その声を聞き、派手な服装に身を包んだオカマ男も製作した手を止めて、錬太郎達を出迎えようとして入り口まで出て来た。だが、錬太郎達を見るなり、ハンカチを取り出し、鼻に当てた。
「・・なんだい?お前らは!!ここはお前らの来るような所じゃないよ!!早々に出て行きなさいよ!!」
その言葉を聞き、看守の男は大人しく店を去ろうとしたが、錬太郎はその手を再び掴んで止める。
「あ゛ん?てめえは俺が誰か分かってねぇようだな?」
「はい??あんたが一体なんだってのさ??」
「俺は、勇者のダチで、倭の国の貴族なんだよ!!どうだ!!恐れいったか!!」
錬太郎のその発言を聞き、派手な服装に身を包んだオカマ男は一瞬黙り込むと、店員と目を合わせて始めた。
(どうだ!!くそオカマ野郎が!俺が勇者のダチって聞いてビビり出したか?この野郎・)
次の瞬間、派手な服装のオカマ男と店員は大爆笑し始めた。
予想とは違う反応に動揺した錬太郎はオカマ男を問い質す。
「てめえら!何がおかしい!!」
「だっておかしいでしょ?あんたが勇者様とお友達?どう見ても、そこら辺にいる物乞いの輩と変わらないじゃないのよ!!冗談はその酷い服装だけにしなさいよ!!」
「・・てめぇ~ら!!・・」
錬太郎は、自分の嘘が通じない事、そして、単純にオカマ男と店員に馬鹿にされている今の状態が我慢出来なくなり、オカマ男に殴り掛かろうとした。すると、錬太郎が殴り掛かる前に看守の男が殴り掛かった。オカマ男は殴り飛ばされて吹き飛んだ。
「何すんのよ!!あんた!!・・」
「何もするのもこうもねぇよ・・この方は正真正銘の勇者様の友人なんだよ!!こんな身なりのせいで、昨日は勘違いされて、牢屋に放り込まれた。俺は・・この御方の担当の看守だった。その時は俺も思っていたよ。(また面倒臭そうなズタボロの物乞いが来やがった)ってな・・だが、俺は視たんだ!連行されて来た時、あんなにズタボロ状態のこの御方が、次の日にはなぜか何事も無かったかのように、傷が完全に回復していた・・あれは奇跡としか言いようがない・」
(うん??何をこいつ言い出してやがるんだ?この世界じゃ寝て起きたら、完全回復するんじゃねぇのか?・・)
「俺はその時から思っていた「この人は只者じゃない」ってな!!そして、取り調べの時間が来て取調室で、取調官のハインツ殿が取り調べを早く終わらせようとした時にこの御方は、自分の身分を公にしてハインツ殿を諫めた。そして、この御方の身分はハインツ殿も認めているんだ!!」
「えっ!?あのハインツ様が!」
「そうだ!お前らは知らないだろうが、今この御方が言われた国、《倭の国》と言う国も、実はほとんどの人は知らないが、現在の勇者様の出身とされている国なんだよ!!」
すると、看守の男の話を理解したオカマ男と店員達は、錬太郎にしっかり頭を下げて謝罪した。
「何も知らずに不作法をしてしまい、誠に申し訳ございませんでした。どうか許して下さい!!」
錬太郎は、謝罪を受け取った。すると、オカマ男は錬太郎に対してちゃんと真摯に接客し始めた。
「それで本日は、どのようなご用向きでこちらにお越しでしたでしょうか?」
錬太郎は手持ちの金を見せ、金はちゃんとあることを示し、この店で自分に似合う上等な服を出せと要求した。オカマ男は自作の自慢の服を次から次に出して見せて来た・・だが、そのどれも錬太郎的にそれは全てしっくり来ない。
(なんだ?この店の服は全部野暮ったい。布地が悪い訳じゃねぇんだよな・・デザインやシルエットがなんとも・・)
「・・おい!オカマ野郎!!」
「はい!!なんでしょうか?・・」
「この服なんだけどよ。もう少しここをな・」
錬太郎は、オカマ男にデザインのリメイクを提案をした。すると、オカマ男は錬太郎のその斬新なアイデアが面白いと思い食い付いた。
「流石!勇者様のご友人ですね!服飾に関してもご造詣が深いなんて凄いですわね!!」
「よせやぃ!それで、出来るか?」
「出来ますとも!!是非やらせて下さい!!」
「よし!じゃ頼んだぜ!!」
「えっ!?どちらへ行かれるのですか?」
「どうせ時間掛かるだろ?その間に色々街回ってくるわ!こいつと!!体も汚ねぇしよ!!」
「分かりました!では行ってらっしゃいませ!!」
錬太郎と看守は送り出されて店を後にした。
「いやぁ・・なんかお前には、面倒掛けさせてしまったな。」
「いえいえいえ!!貴方のお力になれたようで何よりです。私自身、何も知らずに牢屋では酷い事してしまいましたし・・」
「・・そういやお前、名前なんていうんだ??」
「私の名前ですか?私の名前は「ハッサン」です。」
「ハッサンか良い名前じゃねぇか!まだ時間あんだろ?色々案内してくれよ?」
「はい!喜んで!!」
錬太郎とハッサンは街の人混みの中へと消えて行くのであった。




