弱者の弱肉強食の世界で・・
錬太郎はなんとかボロボロの体で次の街へたどり着いた。
前の街より栄えている街であった。名前をハーメルと言う街である。
錬太郎はその街の街道の片隅でゴザを敷いて倒れている。心身共に限界を迎えていた錬太郎は倒れながら沿道の人々に呼び掛ける。
「誰か・・助けて下さい・・どうか、どうか・・お恵みを・・」
錬太郎に呼び掛けられた人々、その存在に気付いた人々は錬太郎の傷付いてボロボロな姿を見て、「気持ち悪い」「臭い」とばかりにハンカチを口や鼻にやり、通り過ぎる人がほとんどである。
中には、小銭の銅貨を親切に置く人もいたが、放りなげたり、酷い連中は投げ付ける始末である。
施しの食べ物も食べ掛けを投げつけられたりする始末である。
それを沿道の人々は見世物のように楽しんで笑う輩もいる。実に不快な光景である。
「ほらっ、拾え!!犬のように食らえ!!」
沿道の心無い施しをする輩に腹が立ちながらも抵抗する力もない錬太郎は笑顔で「ありがとうございます」と言いながら、小銭を拾い、投げつけられた施しの食べ掛けの食べ物を食べていると、沿道の人々はそんな錬太郎に不快さを覚えて消えて行った。辺りは夕暮れになり、夜が近付いている。それに伴い人気もなくなっていく。
(馬鹿にするなら好きなだけ馬鹿にしやがれ!あとで見てやがれよ!!・・くそが・・)
錬太郎はそんな自分に少し情けなさを覚えながらも、「絶対に生き残ってやる。そして、あの物乞い・・サムソンに復讐してやる!」と誓い、体力を回復させようと食べ物を食らい続けていると、突然数人の物乞い達が現れ、錬太郎に与えられた施しのお金や食べ物を漁り始めた。
「おい!てめぇら!ふざけんな!それは俺のだ!!」
文句を言う錬太郎に対して、物乞いの一人が容赦なく殴り掛かって来た。体が満足に回復していなかった錬太郎だったが、なんとか攻撃を受け止めて、そのまま巴投げで壁に投げ付けた。すると、他の物乞い連中が容赦なく襲って来た。錬太郎は殴り返したが、人数と体重に押し潰されて身動きが取れなくなってしまった。のし掛かる物乞いの一人が言った。
「はっはぁ~!!あんちゃんよ。ちょっとはやるみたいだがよ。その体で、この人数に喧嘩売るとか、頭悪すぎだろ・・今すぐに謝って持ってる物全部出すなら許してやらない事もないぜ・・」
そんな物乞いの顔と錬太郎の小学生の当時、貧乏と言う理由だけで差別され、馬鹿にもされ、対抗しても人数やグループに押し潰されて終わった苦い時代の記憶が頭を過った。
(くそっ・・前の街でもヤられて、ここでもヤられるのか・・ふざけんなよ・・俺はこんな奴らにやられてたまるもんか・)
ふと脇を見ると、先程沿道の施しで投げ付けられた食べ掛けの串焼きが見える。錬太郎はそれを掴み取った。それを見た物乞いは挑発するように言った。
「おい!お前!お前それをどうするんだ?早く決めないと死んじゃうかもよ?・・あっはははは~・・えっ!?なんだこれ?」
物乞いの首には、先程錬太郎が掴み取った串焼きが刺さっている。錬太郎は容赦なくその串焼きの串で何度も首もとを攻撃した。それを見た。他の物乞いは一斉に錬太郎から離れた。
「ひぃ~い~~~!!なんなんだ!コイツ!いきなり刺しやがったぞ?」
返り血を浴びた錬太郎は遺体となった物乞いを退けるとむくりと立ち上がった。
「どうした?掛かって来いよ!!・・ほらっ!!来いよ!!」
錬太郎の恫喝に似た挑発に、完全にビビって物乞い達はどこかに退散して行った。
(ふんっ!雑魚が!群れなきゃ、何も出来ない雑魚どもがよ!!)
錬太郎は、辺りに散らばった小銭を拾い集めると早々にその場を後にしようとする。すると、物乞い連中が警備隊らしき連中を連れて戻って来るのが見えた。
「アイツです!!アイツが仲間を・・殺したんです。ほらっ!あそこに遺体が!!」
「!?確かに遺体があるな。おい!!貴様動くな!!」
錬太郎は小銭を拾うのを諦めて逃げる事にした。
「おい!!貴様!!待てぇー!!」
錬太郎は全力疾走でその場から走って逃げ出そうとしたが、簡単に警備隊に捕まり、取り押さえられてしまった。
「おい、貴様!!待てと言っただろうが!!」
「待てと言われて素直に待つ奴がどこにいるんだ?しかもいきなり大人数で追い掛けて来てよ?」
錬太郎が減らず口を言うと、警備隊員は錬太郎をボコボコにした。そして、取り調べをすると言い、錬太郎はされて行く事になった。
連行されて行く中で、物乞い達が先程錬太郎が拾うのを諦めた小銭を拾っているのが見える。
(くそがっ・・確かに殺したのは俺だが・・悪いのは俺か?本当に悪いのはアイツらじゃないのか?これが本当の自己防衛の為にやった事だろうがよ!・・これじゃ小学生の頃の多勢に無勢の正義なきイジメの時と変わらない。こっちが悪くなくても、嘘の証拠やでっち上げで悪者。悪者にやり返してもこっちが悪者・・結局どの世の中も腐ってやがる・・)
「おい!早く歩け!!」
立ち止まり想いに耽る錬太郎に対し、警備隊員は尻を蹴り飛ばして歩くように促す。仕方なしに連行されて行くと牢屋にぶちこまれた。
「今日はここで寝ろ!!取り調べは明日の朝だ・・あぁなんで物乞い達のいざこざの面倒なんて見なくちゃいけないんだよ・・あぁ面倒くせぇ!!」
看守らしき男は面倒臭そうに牢屋を蹴り飛ばすと、粗末な粥のような食事を乱暴に提供した。
乱暴に提供した為にその食事は床に大半がぶちまけられた。
「あぁ~・・お前がちゃんと受け取らないから、そんな事になっちゃんだからな?ちゃんと残さず食えよ!!この薄汚れたブタが!!」
看守はそう言い残すと去って行った。
錬太郎は器に残った食事を見つめると一気に飲み干した。
「あ゛ぁ~くそ不味い!!・・何が「薄汚れたブタ」だ!!てめぇの方がブタ野郎じゃねぇかよ!!」
錬太郎はそう言い放つと牢屋内のベッドに寝そべった。
体の事もあり、すぐに寝ようと思ったが、お腹が減って寝られない。床にぶちまけられた食事に目が行ってしまう。床の汚なさも手伝い、白い薄めの粥がグレー掛かり、水溜まり状態に残ってしまっている。
(体力回復させる為にはブタにでもなってやるか・・いや、それだけはダメだ!!・・でも腹が減った・・いや!ここは自分を騙すんだ!!俺は腹なんて空いてない!お腹一杯だ!!そして、むしろケガなんかもしてない!!健康そのもの!!それが今の俺なんだ!!)
そう自分に暗示を掛けるように目を閉じて眠りに付く錬太郎。
その体を灰色の煙が包み込んでいた・・
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