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職世界冒険録  作者: ハスキーひやま
フォレストの章
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闇の魔力と新たな魔法

俺はギルドに着いてから、マスターを質問責めした。あの黒い魔力の事、魔王の使者の事。

リジェルの事を【魔王軍の裏切り者】確かにアロンはそう言った。

あまり異世界から来た俺達がこの世界の過去の事に関わりすぎるというのも良くないかもしれない。だけど仲間がやられているという事実に関して俺は黙っていられない。

俺の中でラークさんが言った『魔王が蘇ったのでは』という話が信憑性を増していた。やつは魔王様が〜と、何度も言っていた。この世界の昔話の魔王は確実に封印から蘇っているのだ。


「黒い魔力については明日詳しく話すわ……今日は……ゴメン」


そう言ってリジェルはマスタールームへ戻っていった。彼女が話したのはバーサーカーの少年アロンについてのみ。彼女も、嘗ての仲間であったアロンについて思う事は多々あるだろう。俺も自室に戻り眠りについた。



次の日、目が覚め、マスターに会いに行く前に修理する為に持ち出したショートソードの折れた部分を見るとあの時の俺の黒い魔力が付着していた。


「何なんだ……?本当に」


正直あまり触りたいものでは無い。しかしこれが折れて欠けた部分を埋めてさらにバーサークスラッシュ……あのスキルを覚えるきっかけにもなった。しかし今の俺にはバーサークスラッシュは撃てない。

文字化けしたもう一つのステータスを使用時のみ発動できるスキルだからだ。ソレを見る。変更しますか?というメッセージが現れ「はい」か「いいえ」と、選択肢は出てくるがはいを選んでも「現在つかえません」とメッセージが返ってくる。


「コレが使えれば……アロンってやつには負けねえんだよな」

「それには頼らない方がいいわ」


リジェルが部屋まで来ていた。リジェルにもそれは見えている。そして、歪んだステータスを選択できる。黒い魔力の正体は魔王になれる素質を持つ者のみが使える闇の魔力。世界の敵になる可能性を孕んだ危険な力。

リジェルが隼輝の魔力を抑えた力は、闇の魔力を使用した黒魔術。それでなくては闇の魔力を止める事が難しいのだ。放置すればアロンのように狙われ、現存している魔王の意思に飲まれてしまう可能性も否定出来ない。


「今使えるようにはした。でも出来る限り、使用は控えて」

「……分かりました。それと魔銀の剣、しばらくお借りします」

「あげるわ。いくらでも作れるから」


いくらでも!?

初耳だ。しかし思い返せばあの時マスターは最初何も持っていなかった。まさか無から作れるというのか!?どんなチートだよ。

ギルドフォレストにはチートが居すぎじゃないか……川崎さんといいマスターといい……


俺とマスターは一緒に朝食を食べに食堂へ向かった。俺も何かこう、ずば抜けていればと悩みながら朝食のモーブーのベーコン定食を食べていた。モーブーとは牛と豚を掛け合わせたような魔物である。よく家畜として飼われている。味はなかなかのものだ。甘い肉の油が口の中に広がりつつ、肉そのものは油に負けない旨みを持っており互いが絶妙にマッチしている。


「うめぇな〜……これステーキサイズで食いてぇなぁ」

「ところでもっと強くなりたいなら別の武器を使うこともオススメするわ。戦士は何も剣士じゃないのよ?」


そう。戦士職とは剣だけでなく、斧も槍も使用出来る。多彩な武器を使用する事が出来るのが戦士職の強みでもある。

しかし俺は戦闘中に武器をすぐに変えられないため、強みだとは思えなかったのだ。

例えばあのアロンと戦闘中、武器を収めて違う武器を取り出す暇など果たしてあるだろうか、いや確実と言っていいほどない。武器を収めた瞬間攻撃が飛んでくるに決まっている。そもそもゴテゴテと武器を持ち歩けば重量も増えてスピードが落ちる。それも危険だ。


「武器を瞬時に入れ替え出来るならやりたいんですけどね」

「あら、それなら交換魔法を覚えれば良いわよ。武器を自分の魔力で違う武器と取り替える魔法よ。本来の用途とは違うけど物体置換魔法って言うのが本来の名前」


方法は簡単に見つかった。マスターが言った魔法を覚えればいいのだ。とはいえ魔法だ。誰かに習うしかないだろうし、物を入れ替える魔法だ。簡単に出来るなら苦労はしないんだろう。


「物体置換魔法?それ私が買った魔道書に載ってますよ?」


目の前に魔法の天才が居たのを忘れていた。

食べ終わってからその魔道書を借りて読んでみた。

……全く読めない。読めるのは最後のおまけの論文くらいだ。文字は魔力を通して変換させて読んでいたが、魔術式に限っては出来そうもないのだ。読めないままではまずいので川崎さんを自室に招いて読み方を聞いた。


「え?普通に読めませんか?」


ダメだった。無意識に読んでるのか。サラは治療院に居るしおそらく読めない。読み聞かせて貰うのは気恥しいがこの際背に腹は変えられない。すぐにでも習得して強くなりたいのだ。

しかし読んでもらったが聞いても分からなかった。意味不明な言語に変換されているようなのだ。申し訳無さそうな顔をしながら川崎さんが言った。


「これは最初から読まないとダメなんですよ。最初の魔法が使えるようになったら順々に開放されるんです。だから変な声に変換されるんじゃないですか?」


魔道書ってそうなのか。俺のただの早とちりだったようだ。そういえばさっきから川崎さんがソワソワしているな。なんだろうか。


「あ、えっとその……それのやり方を教えましょうか?もしかしたら見たら出来るかも」


というわけで、ゴミ箱と魔道書を入れ替える瞬間を魔力を通して見てみた。魔力の流れはゴミ箱と魔道書を繋いでおり、瞬時に場所が入れ替わる。

見たまま真似をしてみる。しかし二つの物はびくともしない。場所を入れ替えるというのはやはり難しいようだ。そういえば漫画とかラノベ小説とかでは魔法を使って別の空間を作り出してそこに物を放り込んでいるというのを見たことがあるのを思い出した。感覚としては分かり易い。試してみる価値がありそうだ。やろうとすると今まで見たことがない新たな詠唱が浮かんだ。


「今ここに新たなる空間を作り、物を納めよ『ボックス』」


ゴミ箱と魔道書が……穴に吸い込まれて消えた。簡単に出来てしまった。川崎さんが慌てている。失敗して消し飛ばした訳ではない。ステータス画面にボックスという項目が増えていた。そこにはゴミ箱と魔道書の文字。

取り出す方法はまた同じ魔法。少し違う詠唱を唱えると取り出せるようだ。


「今ここに作られし空間より、物を取り出せ『ボックス』」


またゴミ箱と魔道書が現れた。説明を見ると一度使えば無詠唱で出し入れが可能らしい。

しばらくして知ったがどうやら俺は思いつきでとんでもない魔法を覚えたようだ。

ボックスに入れられる物は俺を除くほぼ全ての物。おそらく俺より強い者には効かないが、閉じ込める事も可能だろう。

試しにマスターを許可を貰ってボックスに入れてみたが、普通に出てきてしまった。しかしこのお陰で武器を瞬時に入れ替えるという事が可能になった。出し入れは瞬時に行われるし尚且同時も出来る。なかなか便利な魔法である。


「魔法はイメージが強ければ新しいのができる事があるらしいし、イメージさえ理解出来るなら愛とかがすぐに使えるようになると思うよ」


なるほど、魔法は作れるのか。しかし、借りた魔道書の最後に載っていた文を思い出した。


スキル主体の戦いをする戦士職は基本戦闘中に魔法を使う事を嫌う。何故か?魔力を温存する方が強みである多彩なスキルを発動出来るからである。しかし世の中には魔法剣士など、魔法とスキルを併用して戦う者も少なからず居る。このような者は基本、魔力が他者よりも長けている事が多い。

しかし魔力が少ないにも関わらず魔法剣士などをしている者も稀に居る。実に愚かな行為である。自身の力を良く理解し、自身の力に合った魔法を覚える事が一番だと言う事を忘れてはいけない。

────冒険家ウィリアム・ウォーカーの論文より


……あまり魔法を作りすぎたら戦えなくなりそうだ。ちゃんと考えなくてはならないな。

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