依頼:ビックベアーを討伐せよ?
俺はリジェルの街の武器屋で武器を漁っていた。武器を変える手段を手に入れたのだ。やらないなんて嘘だというもの。冒険者アックスと冒険者ランスという斧と槍を武器屋で買った。
練習用にはもってこいだろう。なかなか安く済んだ。まさか病み上がりの人間に武器を作って貰うわけにもいかない。無から作れるマスターに頼んでも良かったのだが、マトモなのを作るなら仕事があるから遅くなると言われたために諦めた。
あまり仕事の邪魔する訳にもいかない。
リジェルの街の武器屋はなかなか品揃えが良かった。今度また来てもいいかもしれない。
「さて、討伐依頼でも受けてみるか……使わないとスキルが開放されないようだし」
ギルドに戻り依頼を受ける。今日の依頼は討伐。前は討伐なのに連れ帰ってしまったが。今回の討伐対象は近くの村……ここは確か最初に着いたあの村か。名前はライタ村というようだ。そこに現れたビックベアーの討伐だそうだ。アレか、あの毛玉か。
「一人で受けられるし行くか……」
「ガウ!」
行こうとすると突然頭にあの時のケルベロスが飛び乗ってきた。川崎さんも続いて追いかけて来た。なんで頭に乗るんだよ、重たいだろ。
「ごめんなさい!こらココア降りなさい先輩が困ってるでしょ!」
ココア……?いつの間に名前を付けたんだろうか。知らなかった。ココアは頭から一向に離れる気配がない。連れていけと言わんばかりに引っ付いている。後川崎さんが引っ張ると頭に爪をたてるからめちゃくちゃ痛い!仕方ない、連れていく事にするか。一応犬だし散歩は必要だろう。よく見ると首輪がギルドの証になっていた。ちゃっかりギルド登録まで済ましてあったのか、ケルベロスがギルドメンバーってこりゃまた変な話だ。
「行くぞココア!」
「ガウガウ!」
ココアを頭から下ろして、ジョギングしながらライタ村へと向かった。
しばらく走り、森についてからはココアを抱えスピードブーストを使って時間短縮し、あっという間にライタ村に着いた。パッと見た感じでは大して荒らされていないように見えたが、よく見ると畑が掘り返されてしまっている。野菜などは乱雑に散らばり、歯型がついていた。
「こりゃ酷いな……食い荒らされてる」
作物をやられていると言う事は……森に食べ物が無くなったという事か。討伐はやるが、山の調査もしなくてはならないだろう。ライタ村の村長に会いに行き話を聞いたところ、2日前に突然ビックベアーが群れで現れて作物を食い荒らし始めた。山には不審な赤い服の人間が数名目撃されているそうだ。
「赤い……まさかな……」
火鼠盗賊団、奴らが食べ物を山から根こそぎ奪って行き、食べ物が無くなったビックベアー達は仕方なく食べ物を村に来て食べるしかなくなってしまったのだとしたら食べ物が山からなくなる。もしかしたらと思ったが、確信がないためその事を村長には言わなかった。しかし少々厄介なため村長に頼んで依頼内容を、ビックベアーの討伐もしくは原因の調査及び解決に変えてくれた。
ココアの嗅覚を頼りに山へ向かう。不審な匂いを嗅ぎつけたら教えるように伝え、走らせた。ケルベロスは賢い魔物で人の言葉を解する。しかし喋る事は出来ない……と、思う。
「さて……俺も探すか。冒険者アックス!」
ザ・ボックスから冒険者アックスを取り出し装備。魔銀の剣は収納。ピンチになったら変える事にして、現れる魔物を退治しながら山の奥へと歩いていく。
「なになに……?クレイモアント?」
山の中腹に現れたのはクレイモアントという人サイズの巨大な蟻。足が剣になっていて凶悪な見た目の顎がガチガチと音を鳴らしている。レベルが18。来た時に出会わなくて良かったと思えるレベルだ。こんなのと戦っていたら多分死んでいただろう。
「とりあえずコイツを練習台にするか。ハァッ!」
冒険者アックスを振り下ろす。硬いクレイモアントの皮膚を一撃では破壊出来ないが、なかなかの手応え。ボーリングの玉程の頭をガツンと仰け反らせる程のパワー。一発一発の破壊力が剣とは少し違っている。攻撃速度は剣より遅いが戦斧という武器は叩き斬る事が目的だ。投げ斧なんて物もあるが冒険者アックスは両手斧。離れた重心から放つ攻撃には遠心力が追加され強力な打撃と化す。刃こぼれする可能性を考えると防御力の高い相手を倒す分にはこちらの方が向いているだろう。俺はクレイモアントの噛み付き攻撃をかわして飛び上がった。
「もう一丁ッ!」
上から全力で振り下ろすとミチッという変な音がして刃がクレイモアントの眉間にめり込み、そのままクレイモアントは事切れた。
クレイモアントの足を引きちぎり、俺はインセクレイモアという武器を手に入れた。うーん……剣か。まぁ手に入れられるなら取った方がいいのはゲームと同じだな。振ってみたが使いやすい片手剣といった印象だ。
「まぁ収納しとくか。ココアはまだ見つけて無いようだし、探しながら俺はドロップ品でも集めるとするか……」
冒険者アックスを背中に背負い、俺は盗賊団と新たな魔物を探しに向かった。
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あらかた探索し終えると俺とココアは合流した。怪しい奴らを見つけること無くその日の探索は終了。
今回手に入った素材はデーモンアプルというリンゴに凶悪な顔がついた魔物の種。中に浮きながら噛み付いてくる攻撃はかなり面倒だった。一撃で倒せはするが、的が小さく何度も外した。ちなみにこの魔物の種がハイライフポーションの素材の種である。あとはハニービーという蜂の魔物も居たが、危害を加えてこなかったのでハニービーの巣から蜂蜜を少し貰って後は放置した。ココアが狩ってきたのはゲロゲロックというカエルだった。死体を引きずって持ってきた時は驚いたが、毒を持たない食用の魔物らしい。解体して袋に入れた。
素材を回収してライタ村に戻ると、あの時の銀髪の人ともう一人見知らぬ赤髪の人がいた。武器は剣。盾も装備している。
「ん?あ、こないだ会ったね」
「どうも、こんにちは」
「あー!ケルベロスだ!可愛い!」
赤髪の方も女の人だった。背が高く、180はあるだろう。可愛いものには目がないようでココアを撫で回している。ちなみにすごい力で撫で回しているから頭に乗っけてる俺の首は当然ぐりんぐりん回されるわけだが。
後ココアがしっかり頭にしがみつくもんだから爪が痛い。
「やめろセルティア。彼が大変な事になってるぞ」
「あっ、ごめんなさい大丈夫?」
「ええ、なんとか」
こちらが名乗ると向こうも名乗ってくれた。
赤髪の方はセルティア・ダイウォールという名前だそうだ。そして銀髪の方はフローラ・シルバリオンと名乗った。二人ともこの国『マジェスティオ』の軍人だそうだ。今初めて聞いたなこの国の名前。
「今日は仕事で視察に来てるのよ」
「そういえば、ハルキ君はなんでここに?」
「俺も依頼で」
「今ビックベアーに荒らされてるもんね。ソレ?」
「はい。山に入って探しましたが今日はビックベアーは見なかったです」
「見なかった?おかしいなあ。まあ私達も気にかけておくよ」
そう言って、彼女達は宿へ向って行った。そういやそうだ。こんだけ荒らしたはずのビックベアーが山に入って一匹も見ないのはおかしい。町長に話すとやはり同じ答えが帰ってきた。
「見なかった?そんなはずはありません。ビックベアーはかなりの数この辺りに分布する魔物ですよ?」
ビックベアーはどこにでもいるありふれた魔物。山に生息しており数は100を超えるのが当たり前らしい。つまり、1匹も見ないわけが無いのだ。
と言われたが、事実見ていないのだから仕方が無い。赤い服の連中を見たって言っていたから火鼠盗賊団が襲って食料にしているのではとこちらから言っておいた。
もし本当ならビックベアーが数を急激に減らしていたとしてもも頷けるし、アジトがそこにあるなら食料が山から無くなるのもわかる。
(アイツらってのも違う気がするんだがな……)
まだ本当にアイツらがそんな事をしているのか確認をした訳じゃない。
今日は暗くなり始めたため、1度ギルドに戻った。
変わった事といえば退院したサラが帰って来ていた。治療代位は最初に売った回復薬の分と、ギルドの援助で払えたが、そろそろ懐が寂しいな。
今受けている依頼は15000S。
所持金がないのは不味いからやはり依頼完了すべきだろう。
「ハルキあんたショートソード折れたんでしょ?直してあげるから貸しなさい」
「いや、いいよ。あれは俺の未熟が招いたんだ。戒めのためにそのままにする」
「……あっそ。じゃあ新しい剣貸しなさい。後、折れた刃の部分。面白い項目見つけたから試したいんだ」
それなら、と言われた通りにショートソードの刃と魔銀の剣を渡した。二つを床に置き、サラはスキルを発動させた。魔法陣が床に浮かび上がり、魔銀の剣とショートソードの刃が一つになった。
武器合成完了!
魔銀の剣+5になりました!
武器スキル開放!
白銀の一閃(攻撃補助スキル)
対魔法防御+10
対魔族特攻D+→B-
武器がこれ程一気に強化されるとは……サラのスキルは本当に凄い。仲間で本当に良かった。
どうやら今のスキルは武器合成。二つの武器を混ぜ合わせる事で新たなスキルを開放したり、精錬値を移せるらしい。
早速試しに魔銀の剣+5を装備して修行部屋に行き、例の如くギガプラントを相手に剣を振った。
すると、パワースラッシュ一発でアレだけ苦労して勝ったあのギガプラントをあっさりと倒せた。
「GYAAAA……」
「すげぇ……軽くて振りやすいのにこんなに切れ味があるとは……」
感心しているとマスターから呼び出しがあった。なんと、今丁度村にビックベアーの群れが来て荒らしているというのだ。
俺は剣をボックスにしまってからすぐさま用意してライタ村に向かうのだった。




