112話 次代の紹介:曇りなき未来
リリア王妃専用のプライベートな応接室には、しんと澄み渡った空気が満ちていた。
リーゼンバーグの一族を縛っていた長い夜は明け、互いの心を分かち合った家族の間に、穏やかな時間が流れている。
リリアはふと扉の向こうに気配を感じ、静かに立ち上がって扉を開けた。
そこには、大人たちの話が終わるのを健気に待っていた、小さな三人の姿があった。
「――お待たせしました。さあ、中へ」
リリアは子どもたちの目線に合わせて微笑み、その背にそっと手を添えて招き入れる。
部屋へと足を踏み入れたのは、カイルとアリアの愛の結晶――ルーカスとアイリスだった。
エルヴァンとロザリアは、晴れやかな眼差しでその命を見つめる。
二人の瞳に映るのは、リーゼンバーグの未来を担う、ただ愛おしい孫たちの姿だった。
ルーカスは、初めて会う祖父母を前ににっこりと微笑むと、父から教わった丁寧なお辞儀をし、元気な声を響かせた。
「はじめまして!おじいさま、おばあさま!ぼくはルーカス・ローゼンベルク、5歳です。
わあ!おじいさまとぼく、髪の色が同じだ!」
その母によく似た赤紫色の瞳には、一点の曇りもない。
アリアとカイルが、どれほど深い愛情でこの子を育んできたのか。
その答えは、ルーカスの無邪気な笑顔そのものだった。
エルヴァンは膝をつき、ルーカスの小さな手をそっと包み込む。
「よく来てくれたね、ルーカス。……ああ、本当だ。同じだね。
……本当に、いい子だ」
続いて、兄の横で好奇心いっぱいに黒曜石の瞳を輝かせていたのは、アイリスだった。
白銀のまっすぐな髪に、父譲りの黒曜石の瞳。
その姿は、まだ幼いながらも不思議な存在感を放っている。
アイリスは、涙を拭ったばかりのロザリアのもとへと迷いなく歩み寄り、そのまま小さな体で抱きついた。
「おばあたま、どこかいたい?
でももうだいじょぶ。アイリスいりゅから。ね?」
そう言って、小さな手でロザリアの頬にそっと触れる。
すでに聖女の力を宿すその娘が見せるのは、ただ無垢な親愛だった。
「……ええ。ありがとう、アイリス。本当に……元気になったわ」
ロザリアは、自分と同じ色に輝く孫の髪を愛おしそうに撫で、その温もりを静かに抱き締める。
揺り籠で眠っていたエドワード王子が、ぱちりと目を開け、弾けるような笑顔を見せた。
漆黒、白銀、シャイニーブロンド。
赤紫、黒曜石、氷蒼色。
異なる色彩を持つ次世代の子どもたちは、大人たちが背負ってきた歴史を軽々と越え、無邪気に笑い合う。
エルヴァンは、その小さな体温を腕に感じながら、
リーゼンバーグ家がようやく手に入れた――曇りなき未来を噛み締め、穏やかに微笑んだ。




