110話 赦免の宣誓、暴かれた真実の開示
白亜の王城、玉座の間。国王アーサーは、居並ぶ貴族たちの前で一通の古びた羊皮紙と、魔力を帯びた記憶の結晶「回想石」を掲げた。
「エルヴァン・リーゼンバーグ、およびロザリア。貴殿らに対する『前国王への積極的加担』の罪状は、本日をもってすべて抹消される。調査の結果、真実が明らかとなったからである」
この赦免を勝ち取ったのは、数年にわたるカイルとゼノ、そして弟たちの執念の調査であった。
エルヴァンとロザリアへの赦免は、カイルたちが進めていた前国王による王家汚職の断罪という大きなうねりの中から、必然的に導き出された結果であった。
まず動いたのは、長男ゼノである。
彼は、あらゆる魔術的防壁を強制的に無効化する独自の特異能力「影の浸食」を以て、前国王が施した禁忌の隠し結界を強引に突破した。この能力こそが、王家が不正を隠蔽するために築いた「闇」をこじ開けるための唯一の手段であった。
断罪のためにその扉を抉り開けた先で彼が発見したのは、王家の罪証だけではない。母ロザリアが魔力を搾取されるだけの消耗品として拘束されていた凄惨な日誌――一族の尊厳を蹂躙する、目を背けたくなるような真実であった。
同時に、カイルもまた王家の不正な金銭の流れを追う中で、北の隠し倉庫から裏帳簿を掘り起こしていた。
王家の私利私欲を裏付けるその帳簿には、父エルヴァンが侯爵家の全財産、自らの魔力、そして貴族としての誇りさえも供物として差し出し続けていた異常な取引記録が混じっていた。
王家を追い詰めるための物証は、いつしか、父が家族を死守しようとした献身の証明書へと姿を変えていた。
さらに、アリアとカイルが精霊の導きによって特定した王家の元協力者たちを、四男ガイアスが追い詰めた。王家の罪を問い詰める冷徹な捜査の中で、彼らの口から溢れ出したのは、報復に怯えながらも見届けていたエルヴァン夫妻の壮絶な自己犠牲の記憶であった。
王家を断罪するために研ぎ澄ませた刃は、いつしか両親を縛る鎖を断ち切るための鍵となっていたのである。
積み上げられた逃げ場のない事実を前に、現国王アーサーはついに重い口を開いた。
「……これをもって、リーゼンバーグの名誉を完全に回復する。エルヴァン、ロザリア。これまで、すまなかった」
その宣言とともに、玉座の前で跪く夫婦を長年縛り続けていた透明な鎖が、音もなく解け落ちた。




