共生 7
もふもふが足りない……。よし、次の章はもふもふだ……。
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怒ったベロニカさんはめちゃくちゃこわかった。その迫力に、今まで飄々としていたリオもたじろぐ。
ベロニカさんは戸惑うリオの腕をがっしりつかんで宣言した。
「詳しく聞かせてもらうわ!場合によっては強硬手段に出るからね!」
「えっ、ちょっと……!」
「ティラビ、帰るよ!」
私のほうを見てベロニカさんが呼ぶと、ちびが反応してさっと彼女に駆け寄り、肩に飛び乗った。わけがわからないまま、光があふれて。
「え……?」
おさまったときには、リオもベロニカさんも、ちびすらいなくなっていた。
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それからのことはあまり記憶にない。
師匠の話によると、私は師匠が寝袋に押し込むまでふらふらとリオを探し回っていたそうだ。やっと眠ってもうなされて飛び起きるし、また探しに行こうとするしで相当苦労したらしい。私が落ち着くまでの数日間、王都までの道のりで師匠はげっそりとやつれていた。
一方私はというと、急に主張してきた記憶に翻弄されていた。鎌倉への家族旅行、友達と食べた巨大パフェ、生徒がどんどん眠っていく魔法使いの数学の先生……。
それらははっきりしているのにあいまいで、会話の内容はちゃんと覚えているのに名前や顔はもやがかかったように思い出せない。おかしい。お母さんのから揚げが大好きだったはずなのに、味が思い出せない。酔っぱらってお説教してくる面倒なお父さんは思い出せるのに、優しいお父さんは思い出せない。小学校からの友達の顔も、妹の名前も、自分の家名すら思い出せない。リオ、リオがいればつらくなくなるのに……。
そこまで思ってはっとした。
なんでここでリオが出てくるの?なんでリオがいたらつらくなくなるの?
私は窓の外を見た。日はすでにてっぺん近くまで昇っている。師匠を起こしても問題ないはずだ。
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「あ?リオがやってたこと?そんなこと知って何になるんだよ」
たたき起こされていきなり質問された師匠は面倒くさい、と隠しもせずに顔に出した。私はリオがいなくなってから気づいたことを説明する。リオが何かしていたのかもしれない、と推測を言うと師匠は目をつぶって考え出した。そのまま頭がゆっくりと下がり……。
「って師匠!?寝ないでください!今大事な話ですよ!」
「んあ?寝てねぇよ。っつーかレオ、お前、リオと契約してんだろ?共有契約の亜種みたいなやつ。だったら契約のつながりで連絡取れたりしねぇの?」
思いっきり目をそらしていて、ごまかそうとしている感じがにじみ出ているが、それよりも。
「あ」
「……さてはお前、忘れてたな?」
しょ、しょうがないよね。いつも一緒にいたからつながりとか意識しないでよかったし、そもそも私から使ったことないし。だってリオはテレパシーより声に出して言ったほうが喜ぶんだもん。
私が目をそらすと師匠はじっと見つめてきたが、やがてあきらめたように言った。
「まあ、試してみればいいんじゃないか?ただ、高度な魔法を使いこなすドラゴンに連れ去られたんだから、対策されている可能性もあるかもな」
師匠に後押しされて私は、ダメもとで目を閉じて、契約のつながりに意識を集中した。胸のあたりから、暖かな何かと自分の中の何かが混ざり合うような不思議な感覚がする。これがつながりだろうか。さらにそれをたどっていくと、南のほうへのびたつながりはもやのようなものにのまれて行方知れずになってしまった。
「南にいってる気はするんだけど、もやがかかってわかんない」
正直に言うと師匠はそうだろうな、と相槌を打った。そして、あっと声をあげる。
「そういえばリオのやつ、お前が眠った後に妙な歌を歌ってた時があったな。聴いてるとほかのことがどうでもよくなるような、どこかおそろしい歌」
確かこんなの、と師匠は口ずさむ。
「レパートリーが増やせるかと思って覚えたが、そんな麻薬みたいな歌、人前で歌えねぇと思いなおして没になった」
契約で得た知識を探ると、該当する曲が一つあった。忘却と求愛の歌。伴侶にしたい相手に聴かせて自分の虜にしつつ、他の執着するものの記憶を薄れさせ、自分に意識を向けさせる歌だ。ただし、ドラゴンみたいな上位種族というか魔力とか膂力とか知能とか、とにかくそういうのが強いものたちには記憶に干渉する効果はほとんどなく、ただ自分を見てと求愛する歌として歌われているらしい。ちなみに雪白鳥の不思議な声で歌わなければ、ただの素敵な曲らしい。
無駄な豆知識は置いておいて、この歌は魔力などが強いものには悪影響がほとんどない。逆に言えば、人間みたいな弱小種族にはしっかり効果を及ぼすわけで。知識にもはっきりあったから、リオはちゃんと知ってたはず。ということは、リオは故意に私の記憶を消そうとしたの?
頭がぐらぐらする。信じていたことが根底から覆されたような、大地だと思って立っていた場所が実は一歩踏み出したら落ちてしまう小さな足場だったような、頼りない気持ちだ。
動揺する私の頭を撫でて、師匠は一度しっかり寝てから考えろ、と部屋に送ってくれた。




