共生 8
だいぶレオが病んできたため、「病んでる」タグを追加しました。苦手な方はお気を付けください。
ベッドに入ってもどうしても眠れなくて、ゴロゴロと意味もなく寝返りを打つ。リオは、私をだましていたのかな。なんのために?
知識をあさって答えを探す。伴侶と契約を結ぶ作法、求婚の仕方、子供の種族に子育ての知識。どれも関係ない。私が知りたいのは、どうしてリオがそんなことをしたのかだ。でも、記憶や感情は共有されていないので見つからない。何かヒントだけでもないかとひっくり返してみるけど、全然わからない。泣きたい。
やっと眠れたのは、夜も更けてからだった。
翌朝、目覚めると頭はすっきりしていた。なんだ、まだ調べてないことがあるじゃん。私はこの世界の人間じゃなかったんだから、どこか特殊な点があってもおかしくない。
早速異世界人について脳内で検索すると、一件ヒットした。異世界人の寿命と死因について。
物騒なテーマにためらいながらも、思い切って内容を確認した。
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異世界人とは、その名の通り異世界からやってきた、人型の生き物のことである。現れる時期も場所も規則性はなく、ほとんどの国で数年に一人か二人程度のペースで現れる。
また、人型ではない意思疎通ができるものは界渡り、人型でもなく会話もできないものを流着という。
ほとんどのものが「気づいたら知らない場所にいた」と証言しており、原因は不明。一説によると、時空のゆがみに気づかずに踏み込んだのではないかと言われている。
異世界人、界渡りは知能が高いものが多い。そのためか、特に異世界人は急激に変化した環境に適応できず、一か月から数年ほどで衰弱死するものも多い。近年では「異世界キター!」などと言って適応するものも増えているが、興奮が落ち着いてくるとやはり現実が受け入れられず、衰弱していくものたちも一定数いる。
一方で順応したものは異世界の文化や技術を伝えてくれるために、基本的には歓迎されているが、一部の地域では過去に、戻れないことに絶望したり、物語や夢の中のようだと錯覚した異世界人に甚大な被害を受けていて、警戒されることもある。
本人たちの申告によると、彼らの寿命は百年程度のものがほとんどでこの世界の人間よりやや長いが、代わりに体力が非常に少ない。ただし、彼らの平均寿命は適応できずに死んだ者を抜いても五十年程度と、かなり短いため現地との時間の数え方が違うのではと言われていた。しかし、彼らが持っていた小型時計により、ずれは一日数秒程度であると判明した。そのため現在では、界を渡るという行為による精神的、肉体的な負荷によるものだとする説が主流である。
魔力に関しては、同じ国からやってきた人間でも全くない者やエルフ並みにある者、と個人差が大きい。原因は不明。
また、数が少なくそれぞれの国で保護されているためになかなか研究は進んでおらず、一般に言われている言い伝えなどはほとんどが迷信である。
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思っていた以上にひどい内容に、思わず息をのむ。異世界人のほとんどが長く生きられないなんて、全く知らなかった。彼らはおそらく、家族や友人といきなり引き離されて絶望したのだろう。食文化も随分違うし、口に合わなかったらきっと苦痛だ。それに、今思うとここは治安も結構悪いし、衛生状態も日本ほど良くない。私も日本をはっきり覚えていたらきっと耐えられなかっただろう。
もしかしたら、リオはそれを避けようとしたのかもしれない。きっとそう。だってリオはあんなにやさしいし、頼もしいし、私のことを大事にしてくれるもん。私が弱って死んじゃわないように、守ってくれようとしたんだ。
そうとわかったらベロニカさんの誤解を解いて、リオを返してもらわないと。それで、リオにまたあの求愛の歌を歌ってもらうんだ。
私は簡単に荷物をまとめて、部屋を出た。たしか、リオの気配は南のほうだったよね。この宿からは、大通りに出てまっすぐ進めばいいんだ。足取りは軽い。もうすぐリオに会える。
この時の私は、それしか考えていなかった。
大通りを進んで南門を出ると、目の前は開けた草原だ。大きな街道は東西の門を通るから、近隣の町や村とつながる道があるだけだ。私は意気揚々と歩きだした。
しばらく進むと、急に後ろから声をかけられる。
「レオちゃん」
振り返ると、ベロニカさんがそこに立っていた。私は思わず前のめりになって話しかける。
「あ、ベロニカさん!リオはどこですか?私、だまされてなんかいません!リオは私を守ってくれてたの!」
ベロニカさんは、悲しそうな顔をした。
「レオちゃん、よく聞いて。あなたにかけられた洗脳は解けていないわ。本当にそうなのか判断するためには、一度ちゃんと解かないといけないの」
そしてそのまま、驚く私をひょいと抱き上げて、どこかへ転移した。
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着いたのは、木造の民家だった。ベロニカさんにおろされた私が立っているのは玄関で、入ってすぐに見える部屋には、数人の男性が座っている。そのうちの一人、金色の鋭い目をした男の人が口を開いた。
「来たか。じゃあ始めるからあいつを連れてきてくれ」
彼の指示で、奥にいた灰色の髪の男性が一番奥のドアを開けると、そこにはリオが拘束されていた。
「リオ!」
思わず駆け寄ろうとするが、ベロニカさんに止められる。リオは泣きそうな顔でうつむいていた。
「レオ、ごめん…そんなつもりじゃなかったんだ……。」
「始めるぞ」
金眼の人が会話を遮るように言う。リオが頷くと、彼は私たちに手をかざした。途端、光があふれて、私たちの間にあった何かが消えるのを感じた。
喪失感に座り込む。リオのほうを確認しようとするが、それよりも先にベロニカさんに抱き上げられて、外に連れ出された。そこにあった椅子に座らされて、真剣な表情のベロニカさんに言い聞かせられる。
「あなたたちの契約は、あなたにかけられたものと一緒に封印させてもらったわ。完全になくなったわけじゃないけれど、何もしなければ一年くらいで消えるでしょう。一度考え直して、もし、まだ彼と契約したいと望むなら、私を呼びなさい。この鱗に話しかければ聞こえるから」
そう言って一枚の鱗を差し出される。私が黙って受け取ると、彼女は再び転移魔法を使って、師匠のいる宿に送り届けてくれた。
レオはどんな答えを出すのか。の前に、次回はレオと別れた後のリオになります。




