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ただ、あなたと共に  作者: 鈴森 夢乃
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共生 6






 美女は何を言っているんだろう、という顔をした。


「誰って、その二人に決まってるでしょう?伴侶以外の何者でもないじゃない」


 師匠は余計わけが分からなくなったようでフリーズしてしまった。彼女はちびを抱いて、ずいっと私のほうに顔をよせてくる。


「初めまして、私はベロニカ。あの子の従姉なの。ところでお嬢さん、あの子とのなれそめは?最初の印象は?どんなところが好き?」


「え、印象……ふわふわ?」


完全に恋バナに興味津々な女性の顔をしている。勢いに押されてたじたじになっていると、リオが間に入ってくれた。


「ベロニカ、レオが困ってるから、そういうのは後にして」


「まあ、お嬢さんはレオっていうのね!それで、さっき呼ばれてたけど、あなたはリオになったの?」


 しかし、ベロニカさんの勢いに押され、あまり意味がなかった。不利だと思ったのか、リオは無理やり話題を変える。


「それで、こんなところに何をしに来たのさ」


 ベロニカさんはにっこり微笑む。


「家族でこの辺りを飛んでたら、息子がどっかに行っちゃったから探してたのよ。あなたたちのところにいたのね」


 ベロニカさんはちびと目を合わせ、「勝手にいなくなっちゃダメでしょ」と叱っている。まさか、ちびのお母さんなの?


 混乱していたら、リオが教えてくれた。


「ベロニカはドラゴンなんだ。今は人化しているけど、本当はすごく大きいんだよ」


 なるほど……?つまり、ベロニカさんはドラゴンで、ちびもドラゴン、なるほどね。ファンタジーだね。 昔どこかで読んだ本を思い返して納得する。うん、そんな話あるよね。


「こいつら、どう見ても双子だろ?え、伴侶?人間?ドラゴン?」


 師匠がやっと復活した。とはいえ、声が震えているし変なことを口走っているので、落ち着いたわけではなさそう。私たちがドラゴンって、どこを見たら思うのだろう。あ、従姉がドラゴンだからか。


 不思議そうな顔をしたベロニカさんは、おとなしくなったちびを抱えたまま案外律義に質問に答える。


「双子?ああ、二人一緒に生まれるやつね。あの子、リオがレオちゃんとそっくりなのは、伴侶の契約で互いを近づけたからでしょう?レオちゃんは…人間かしら」


「私は人間だよ、ベロニカさん。それより、伴侶って……あ、そういうことか」


 思い出した。雪白鳥は、違う種族の異性と結婚するために契約を結んで相手を仲間にするんだったよね。ってことは、伴侶って私のことか。……ん?


「私とリオは、伴侶……?」


 言葉の意味を理解してくると同時に、顔が熱くなっていく。


「え、リオ言ってないの?まさか合意じゃない?」


 ベロニカさんが面食らってリオを問い詰める。リオは何でもないことのように答える。


「レオが自分から契約してくれたんだよ。それに、相思相愛だから問題ない」


「レオちゃんよくわかってないじゃない!問題ありまくりよ!お姉さんさすがにこれは応援できないなぁ!」


 ベロニカさんが騒ぎ出したので、怒られておとなしくなっていたちびが彼女の腕の中から飛び降りた。私の足元に避難してきたので、軽く頭をなでてやる。リオはというと、ベロニカさんと言い合っていてこちらを気にしていない。すると、黙っていた師匠が口を開いた。


「レオは人間ってことは、リオは人間じゃないのか?」


「うん、リオは雪白鳥で、おっきくて真っ白でふわふわなんだよ!言ってなかったっけ?」


 師匠は大きなため息をついた。


「言われてないな。たしかにお前たちを拾ったとき、訳ありな気はしてたんだよ。でも、さすがにそこまでとは思ってなかったわ」


せいぜいどこかの貴族の庶子か非合法な奴隷あたりだろうと思ってたんだが、と頭を抱えている師匠に、私ははっとした。


 あ、これ秘密なんだった。雪白鳥は、羽にすごい力があって狙ってる人も多いから言っちゃダメってリオに言われてたのに。


 撫でていた手も止まる。ちびが抗議しているがそれどころではない。ごめんね。


 ちらっと師匠をうかがう。ばっちり目が合った。気まずい、よりも警戒しなくちゃいけないんだった。私たちの羽を狙うやつじゃないかわかんないもん。


 師匠は再びため息をつくと、私を手招きした。


「まあ、なんとなくそんな感じはしてたし、知ったところで何も変わんねぇよ。お前たちの歌は人間離れしてたからな。ある程度耳が肥えてれば、技術や声質以上の魅力に気づくんだよ」


恐る恐る寄っていくと、また頭をくしゃくしゃにされる。見上げると師匠はにやりと笑い、


「それに、憧れのドラゴンの鱗も手に入れるチャンスがやってきたしな」


と言って、自分のルーンを準備しに行ってしまった。


「だから、説明責任というものがあるでしょ!」


 ベロニカさんはまだ怒っているみたいだ。私は気にしてないのに。


「ベロニカさん、そんなに怒らないで。私気にしてないよ?」


 止めようとしてそう言ったら私まで怒られた。


「レオちゃんもレオちゃんよ!知らずに契約しちゃったんだとしても、どういう契約でどういう影響があるのか、きちんとリオと確認を取らないと!あなたその内騙されて身ぐるみはがされるわよ!」


「そんなに怒らないでよベロニカ。レオは魔法なんてないところから来たんだから」


 リオがかばってくれる。いつも通りだけど、伴侶という言葉がちらついてなんだか照れてしまう。


 気になるワードに、ベロニカさんの顔がますますこわくなった。


「魔法がないところって、リオ、あんたまさか、何もわかってない異世界人の女の子をだまして契約したんじゃないでしょうね…?」


 騙されてなんかない、とはっきり言えなかったのは、ベロニカさんの顔がこわすぎたからに違いない。

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