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 時々、こんな夢を見る。


 暗い森の中。

 月の光さえ届かない闇夜の底で、一人の男がうつ伏せに倒れている。


 体付きからして成人はしているだろうが、顔が見えないため、詳しい年齢はわからない。全身を血塗れにして、冷たい土の上に横たわるその姿は、明らかに死んでいた。


 そんな男の姿を、霧島(きりしま)御琴(みこと)は隣から静かに見下ろしていた。物言わぬ死体の傍らで、呆然と立ち尽くしている。


 男の正体はわからない。

 けれど、その男の有様を見て、悲しいという感情だけが霧島の胸を覆っていた。


 やがて、どこからか音が聞こえてきた。

 笛や太鼓などによる、和風の音楽を奏でる音だった。


 つられて霧島がそちらの方を見ると、視線の先には鳥居が一つ、ぽつんと立っていた。

 音はその向こう側から聞こえてくる。縁日でもやっているのだろうか。


 音は段々とこちらへ近づいてくるようだった。少しずつ大きくなっていくその音色に合わせて、霧島の悲しい感情もどんどん膨らんでいく。


 なぜ、こんなにも悲しいのか。


 その理由もわからないまま、霧島はただひとり、人知れず涙を流すだけだった。



       ◯



 そこでやっと、霧島は目を覚ました。


 薄らぼんやりとした意識の中、またあの変な夢だったな、と振り返る。

 初めて見たときはさすがに怖かったけれど、すでに何度も見た今となっては慣れたものだった。


 ベッドに横たわったまま視線だけを辺りに巡らせると、カーテンから漏れる朝の光とともに、部屋の壁に掛けられたカレンダーが目に入った。


 二〇一九年、五月。

 ゴールデンウィーク明けの今日は、久方ぶりの登校日だ。


(学校、行きたくないなぁ……)


 重い身体を無理やり起こし、大きく伸びをしてみると、まだ新しい家の匂いが鼻孔をくすぐった。

 その香りに当てられた瞬間、それまで夢見心地だった頭が急速に現実の世界を思い出していく。


 先月の初め、霧島は小学五年生になるのと同時に、親の仕事の都合でこの街へと引っ越してきた。


 以前住んでいた都心部から、車で約三十分。程よく緑で彩られたその場所は、都会に比べると人混みが少なく、空気も澄んでいる。

 のどかで良い所だな、というのが、霧島にとって最初の印象だった。


 けれど今となっては、この場所から逃げ出したくてたまらない。

 

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