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間話 騎士の役目(エルヴィス視点)

次話更新:20時00分

俺はNPCだ。


それなのに――

今、俺を抱きしめる少女の腕の中が、ひどく温かく感じる。


その温もりのせいか。

普段なら整理されないほど古いログまで、ゆっくりと呼び起こされていく。


――夢を見た。


俺はNPCだ。

だから、これが本当の記憶なのか、それとも与えられた設定なのか……俺自身にも分からない。


小さい頃から、父と母に言い聞かされてきた。


この公爵家は、代々騎士の家系であること。

そして俺もまた、騎士として生きる運命にあることを。


俺は騎士として、人を――プレイヤーを守るために、幼い頃から厳しい訓練を受けてきた。

剣を振り、身体を鍛え、感情を殺し、ただ役割を果たすためだけに腕を磨き続けた。


その結果、若くして第二騎士団団長にまで上り詰めた。


第二騎士団は治安維持を担う部隊。

NPC同士の争いにも介入する。


だが――


プレイヤーから通報があれば、すべてを放置してでも駆けつけなければならない。


当然のことだ。


俺たちNPCは、プレイヤーのために存在しているのだから。


……そう、教えられてきた。


そう、信じてきた。


だが――

最近、胸の奥に消えない違和感が生まれている。


NPCを人とも思わず扱う、経験値効率だけを求めるプレイヤー。


大勢のNPCを犠牲にして、蘇生できるたった一人のプレイヤーを守る選択。


それが正しいと、何度も判断してきた。


……だが。


俺は騎士だ。


人を守るために存在している。


――俺は、本当に人を守れているのか。


――俺は、一体……誰を守っているのだろうか。


脳裏に浮かぶ。


真っ直ぐに俺を見つめていた、あの少女の瞳。


関わりのないNPCの死に、声を震わせ、涙を流した姿。


あの決意が――なぜか、眩しかった。


なぜあの少女は、NPCの死をあそこまで悲しめたのだろう。


なぜ俺は、それを否定できなかったのだろう。


この胸の違和感は――

このログ整理が終わり、目を覚ませば消えているのだろうか。


……いや。


消えていなければ困る。


俺は――NPCだ。


そうでなければ、

この世界は成り立たない。


そうでなければ、

俺の存在理由が揺らいでしまう。


それでも。


腕の中に残る、確かな体温に抗えず――


俺は、静かに深い眠りへと沈んでいった。

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