第四話 初仕事
次話20時20分公開予定
幼馴染たちと一時間ほど、カフェレストラン・ポルコで話したあと。
レイカは学校へ、
サラは訓練場へと向かった。
「さてと……オレも仕事に行きますかっ」
メニュー画面の『仕事に行く』をタップすると、視界に矢印が現れる。
歩きながら、さっき二人から聞いたアドバイスを思い返す。
――亜人種は、やっぱり多少の差別を受けることがある。
だから、無駄に不利になる行動は避けたほうがいい。
……不服だけど、あの性格の悪い騎士の言ってたことも、実は的を射ているらしい。
このゲームでは、経験値を積むだけじゃなく、
NPCからの「感謝」や「尊敬」も、地位や権力を上げる重要なポイントになる。
どこで、どう評価されるかは説明書にも書いてない。
だから二人とも、基本的にNPCには優しく接しているそうだ。
……さっきのこともあるし、人混みでは気を付けよう。
そう考えているうちに、目的地に着いた。
「おぉ……凄い」
RPGに出てきそうな、趣のある店構え。
深呼吸して、扉を押す。
「おはようございます! 今日からお世話になります!」
挨拶は大事。これは現実でもゲームでも同じだ。
中には三人ほど、人間タイプの人たちがいた。
たぶん全員NPCだと思う。
プレイヤーは、もう少し見た目に個性が出る。
「あら! 今日から来るプレイヤーさん、獣人だったの? 嬉しい〜!」
いきなり両手を掴まれ、ぶんぶん振られる。
「私はミカ! よろしくね!
手前の子がソフィ、奥で調剤してるのがケイトよ!」
全員がこちらを見て、にこやかに挨拶してくれる。
「オレはリリアです。これからよろしくお願いします!」
……良かった。
最初に会ったNPCが、あの騎士だったから少し不安だったけど。
友人たちの話では、性格の悪いNPCも普通にいるらしい。
このゲームでは、人間関係も立派な攻略要素だ。
ミカは、調剤室や資料室、休憩室、店内を一通り案内してくれた。
「薬師って楽そうに見えるでしょ? でも意外と体力仕事なのよ〜。
ポーションの箱は重いし、薬草取りにも行かなきゃいけないし」
なるほど。
「獣人の方って、冒険者や騎士に行っちゃう人が多くてね。
だから来てくれて本当に嬉しいの!」
「あれ……薬草取りって、冒険者の仕事じゃ……?」
そう聞くと、ミカは苦笑した。
「本当はね。でも効率が悪くて人気がないの。
だから市場だと高かったり、足りなくなったりするのよ」
確かに。
獣人なら鼻も効くし、体力もある。
薬師と相性がいい理由、よく分かる。
「それに、薬師が薬草を取りに行くと、ちゃんと薬師の経験値になるの。
だから一緒に頑張りましょ〜!」
……いい人だ。
獣人だからと差別されるどころか、大歓迎だった。
それからオレは、薬草取り、調剤、販売を少しずつ任され、
ログインするたびに仕事をこなした。
このゲームでは、時間内なら好きな時に働いて、好きな時に帰れる。
休むのもタップ一つ。
でも、その分、経験値や信頼は溜まりにくくなる。
だから、なるべく真面目に働いた。
そして――
ゲーム内時間で、一ヶ月が経った。
ログインしてベッドから起き上がると、メッセージが届いていた。
『今日は初給料日だよー! いつもありがとう\(^o^)/
たまにはお休みして、遊んできたら?』
金貨二十枚。
日本円換算で、二十万円分。
「……すげぇ」
現実では学生のオレ。
アルバイトでも、なかなか貰えない額だ。
ゲームなのに、ちゃんと感動がある。
……そういえば、まだ買い物もしたことないな。
せっかくだし、
今日は遊びに行こう。
オレは、サラとレイカにメッセージを送った。




