ヴァルディスの独白
オレは、自分の判断が間違っていたとしても、選んだ道を貫く。
それが、例え誰かを犠牲にする道であったとしても…
物心ついたときから、オレに逆らえるものなど誰も居なかった。例え、自分の両親でさえも。
しかし、そんなオレでも貴族として学園には通わなくてはならなかった。
くだらない授業に、くだらない人間関係、出席する意味もない。
オレはテストや重要な課題だけには参加し、それ以外は適当にサボるように過ごしていた。
そうして、卒業までやり過ごそうとしていた、ある日。
オレが校舎裏で居眠りをしていたら、「起きろおおおおぉぉぉ!!」と地鳴りのような声が聞こえた。
まさか…このオレに言っているのか?
とゆっくり目を開けると、そこには、顔を真っ赤にして怒っている生徒がいた。
何を怒っているのか、まったく耳には入ってこなかったが、オレは久しぶりに怒鳴られた。
このようにオレに意見するものは、もうこの世に居ないと思っていた。
「なかなか…面白い。」
そう言って去ると、目を丸くして立ち尽くす少女を見て
レイカ…か
可愛いじゃないか…とふと思った。
可愛いなどという感情が自分に残っていたのかと、困惑する。
それから数日、レイカについて調べると、なかなか面白い経歴をしていた。
元宰相とはな…、さらに今は生徒達から冷遇されているのか…。
まったく、よくそれで授業を受けようという気になるものだな。
と感心する。
オレだったら絶対に、平伏させてやる。
それから、邪魔者を排除し、レイカの後をついて回る日々を過ごした。
それは思いのほか楽しい毎日になった。
レイカはすぐに落ち込むくせに、前を向こうと足掻く。何度打ちのめされようとも、必ず立ち上がる、そんな奴だった。
だが…、レイカはある日夢をオレに語った。
外交官になりたいのだという。
しかし、オレはそれがレイカの本心だとは思わない。
それは偽りの夢…だろう?
お前は宰相時代にやりたかったことを、やりきれなかったはずだ。
そう…、現宰相のせいでな…。
「貴様が本当やりたいことならば、このオレが支援してやろう。」
オレは、そう断言する。
そう…、レイカの本当にやりたいことならば…。
だから、オレは貴族達に手を回し第二王子を"王"にしてやった。誰にも文句は言わせない。
そして、元王の宰相だったやつも排除してやった。レイカを傷つけた当然の報いだ。
あとは、落ち着いた頃にレイカを宰相へと推薦するだけだ。オレの計画は完璧だった。
それなのに、レイカの顔が暗い。友人のリリアと連絡が取れないんだとか…。
まったく、エルヴィスの奴は何をしているんだ?オレより年上のくせに。
もしも、奴が盟約を破り、リリアに真実が伝わってしまったら、こちらにまで被害が及ぶ。
仕方がないので、公爵邸へと馬車を走らせているとリリアを見かけた。
丁度良い。
どちらの尻を叩いたところで変わらんだろう。
オレはリリアを無理やり馬車へと連れ込んだ。
少し話しをすれば、すぐに公爵邸に行きたいと言う。まったく何でオレがこんな役目を負わねばならないんだ。
しかし、これでレイカの笑顔が戻る。それならば、良しとしよう。
そう…考えて納得していたのだが…
後日
「ヴァルディス、その…ありがとな。リリアのこと、心配して励ましてくれたんだろう?」
とレイカが話しを切り出す。
鳥肌が立った。決して、決して奴らの心配をしたわけではない。
しかし
「気にするな。」
とレイカに言えば、笑顔を見せてくれる。
さらにレイカは
「それにしても、うまくいき過ぎて、婚約までしてしまうなんて…まったく、心配して損した。」
などと続ける。
「な…なんだと?!」
「いや、だから…婚約…。」
婚約だと…、ふざけるなよ。
オレはレイカにプロポーズすら出来ていないというのにオレたちを差し置いて婚約しただと…?!
オレは慌ててレイカの方へ向き直って手を握った。
「レイカ、こうしては居られない。オレたちも結婚しよう!」
そういうと、レイカは顔を真っ赤にして目をグルグルさせている。
「はっ…?!何言ってんだよ!」
そう言いながらも、手を振りほどこうとはしない。オレは知っている。
レイカは押しに弱い。
こうして、毎日アプローチすること数週間、彼女は遂に承諾したのだった。
しかし…、その数年後、今度は子どもを先に越されるとは思わなかった。
レイカにオレたちも…
と伝えると顔を真っ赤にして怒っている。けれど、悪くない反応だ。
オレたちもすぐに子どもを持つことになるだろう。
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オレの行動は、レイカをこの世界に閉じ込めるものだったかもしれない。
だが、構わない。
この世界で、オレの隣で笑っている。
それが、レイカの運命だ。




