サラの独白
オレはこれから、友人2人を裏切り続けなくてはならない。
しかし、オレは選択したのだ――王に忠誠を誓うことを。
違和感を覚えたのは、ログアウトできなくなり、王宮に呼ばれたときだった。
制作会社との連絡が取れる立場にある王に呼ばれるのは、確かに自然なことかもしれない。
しかし…、第二王子アステリオが王となって急に、このような不具合が起きたのだ。
疑うことは、仕方のないことだろう。
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王の間での話し合いの後、オレは思い切って問い詰めた。
「陛下…いや、アステリオ。今は、いちプレイヤーとして話そう。正直に話してくれ。」
オレは彼に掴みかかる。
「オレたちを、この世界に閉じ込めたのはお前だな?」
鋭い眼光で睨みつける。
アステリオはふっと笑った。
「あはっ、バレちゃった?」
少し手を緩めると、彼は「ちょっと苦しいから、離してよ…」とヘラヘラ言う。
「何故このようなことをした? プレイヤーとNPCの対等な関係を目指していたんじゃないのか?」
「目指してたよ。だから、兄上の意識から変えようと対話もした。けれど…」
「けれど…?」
「爆破テロ事件が起きてしまった。どれだけのNPCが犠牲になったと思う?」
「………」
「君の友達のリリア。あの子の上司だったミカ。あの人の子供も二人居なくなってるよ。」
「なっ…なんで? ログは残らないんだろ?」
「被害情報は上がってくる。NPCがプレイヤーを恨まないよう、記憶は消されているけど…」
「そ…そんな……」
オレは衝撃を受けた。
「それなのに、王じゃない…父上の反応を見たか? エルヴィスを処罰するとまで言うんだ。」
アステリオは視線を伏せる。
「オレはもう、こうするしかなかった…」
「それで…何故オレたちを閉じ込めた?」
「オレは…サラと離れたくなかった。それに、協力者が必要だった。リリアとレイカは良い交渉材料だった。」
重い空気が流れる。アステリオはまだこちらを見ようとしない。
オレは大きく息を吐いた。
「それで…オレたちの身体はどうなってる?」
「君たちのコピーを作って、意識を移してある。友人はおろか、家族も気付かないだろう!」
そう得意気に話しだした。
…まったく、気が抜ける。
オレは呆れた声で言った。
「しょうがない、王ですね。」
アステリオは目を丸くし、嬉しそうに微笑む。
「許してくれるのか…?」
「もう、やってしまったことは仕方ない。オレが焚き付けたようなものだし…」
オレは手を後ろに回し、敵意を向けるのをやめる。
「そうか! ありがとう。さすが、オレが認めた人だ!」
恐ろしい人だ。
オレが許すところまで、すべて計算済みだったのだろうか。
オレは眠れる獅子を起こしてしまったのかもしれない。
「これからは、このようなことが起こらないよう、しっかり監視させていただきます。貴方の騎士として!」
そう宣言すると、アステリオは満面の笑みを見せた。
本当に、王の間にいた人物と同一人物なのか? 疑わしいほど、無邪気に見えた。
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まさか数か月後、オレが王妃になるとは
――予想外だにしなかった。
だが、それも悪くない。
陛下が選んだこの道が正しかったことを、オレ自身の力で、証明してみせる――たとえ、どんな闇が待ち受けていようとも。
1日1話 更新となります。




