エルヴィスの独白
こんなことに、なるならば協力しなければ良かった…。
オレが消えれば良かったんだ。
目の前で、目を真っ赤にして大泣きしているリリアを抱き締めながら、エルヴィスは後悔していた。
―数カ月前
爆破テロ事件の直後、
体調が戻り次第、王宮へと招かれた。
第一騎士団が王の周りを取り囲んでいる。
リリアの友人、サラもいた。
王へ今回の事件について、改めて報告をする。
王からは厳しい言葉を投げかけられた。
「制作会社側からクレームが入っている。
エルヴィス、お前がやりすぎたせいだぞ。プレイヤーのゴールドは、裁判を起こすつもりらしい。しばらく、現場へは出るな、謹慎せよ。」
随分とお怒りのようだった。
「大変申し訳ございません。謹んでお受け致します。」
オレは頭を下げる。
しばらく、説教が続いたが、
「もう良い。行け。」
と王から告げられた。
顔を上げると、騎士団の中でサラだけが苦々しい顔をしていた。
オレを哀れんでくれたのかもしれない。
しかし、プレイヤーを失神にまで追い込んだのだ。処罰があるのは当然のこと。軽いほうだろう。
それでも、後悔はしていない。
オレは…、間違っていない。
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王宮から出ようとすると、
「すいません、第二団長様、少しお待ちください。」
と使用人から声をかけられる。
「こちらへ」
通されたのは、第二王子のいる庭園。
机と椅子が用意されている。
そこには、既にヴァルディスが座っていた。
第二王子アステリオが立ち上がり、オレを迎え入れる。
「やぁ、いらっしゃい。エルヴィス、待っていたよ。」
「オレは大分待たされた。」
と机に片腕をつくヴァルディス。
一応目上の公爵であるオレと、第二王子の目の前で、この態度とは。傲慢という噂は本当のようだ。
「まぁまぁ。」
と第二王子がヴァルディスを諌めている。
「エルヴィスも座って座って!」
そう声をかけられ、席につく。
「それで第二王子、どのようなご要件で?」
「ヴァルディスには先に話したんだけど…父上から王座を奪い取ろうと思って…。」
「ぶっ…」
と吹き出す。
「も…申し訳ございません。」
と声をかけると
「あ…いいよ、いいよ!びっくりしたでしょ?」
と肩をたたかれた。
「何故、私にそのような話しを?」
「ん?やぁ、君は同士だと思ってさ。オレは人をみる目はあるんだよね〜」
つまり、第二王子の言うことを要約すると
王座を勝ち取り、システムに干渉して
制作会社からの支配のない、プレイヤーの居ない世界をつくる。
そのためには
貴族社会の中心にいる
ヴァルディスが貴族を纏め上げて、第一王子を蹴落とす。
それだけでは、王座をとるには足りないので
第二騎士団を取り込み、武力行使も行うということだ。
ちなみに、第三騎士団は既に第二王子の軍門に下っているそうだ。いつの間に。
「オレが、何故あなたに付くと?」
「今回の件、王はかなりご立腹だよ。プレイヤーファーストの人だからね。エルヴィス、貴方はやりすぎたんだ。」
「承知しております。謹慎の処分も受けました。」
「いや、それは借りの処分だよ。今は英雄としてプレイヤーやNPCからの支持があるため、手を出してこないだけさ。いくら、元プレイヤーレックスの子供だろうと、そのうち消されてしまうかも。記憶の抹消が先かな〜」
世間話のように恐ろしいことを言う。
「だから、協力しろと…?」
プレイヤーの居ない世界…
プレイヤーに辟易していた頃の俺なら賛同したかもしれない。
でも…今は……
リリアの顔が浮かぶ。
「第二王子、申し訳…」
と断ろうとすると
「ストップ…!!」
と第二王子からとめられる。
「エルヴィスの言いたいことは、分かってる。気掛かりは、リリアだろ?」
その言葉に、顔を上げる。
「い、いえ…そういう理由では…」
「隠さなくても良い。ヴァルディスも同じ理由で、渋っている。」
「レイカは俺のモノだ。会えなくなるのは、御免だな。」
と腕を組んでいる。
「オレだって、サラと離れるのはイヤだ。だから、オレが王座に就いたあかつきには、彼女達にオレたちと同じ存在となってもらおうと思う。」
第二王子から凄い発言が飛び出た。
「それはつまり…、私の父のように?」
「レイカを完全にコピーすると言うことか?それならば、協力はしない。レイカのコピーはレイカ自身ではない。」
「ふふふ…」
第二王子は不気味に笑う。
「ヴァルディス、それは違うよ。彼女らのコピーは彼女らの本体の意識へと移行させてもらう。僕らと同じ存在となる、彼女らは本物さ。」
「そんなことが可能なのですか?」
「レックスのNPCを作った際に、起きたトラブルがあったそうだ。意識の移行先、間違えれば…どうなるか…」
「そ…そんな、まさか。」
エルヴィスが衝撃を受けていると
ヴァルディスは
「良いだろう。話は分かった。交渉成立だ。」と立ち上がる。
では、オレはやることがあるのでな、と話が終わる前に立ち去ってしまった。
第二王子は
「彼は優秀だから、これで心配いらないな。」
とつぶやいている。
オレは少し恐ろしさを感じた。第二王子が放蕩息子というのは完全にデマだったようだ。
「さて、エルヴィス?あなたはどうする?
貴方がいなくても、オレは計画を実行し、成功させるよ?
そして貴方は
このまま存在を消される?
プレイヤーが全員追い出されてリリアに会えなくなる?」
どうする?
存在ごと消される…
それはまだ、仕方のないことかと思う。
リリアに会えなくなる?
それだけは、考えたくない。
生き地獄のようだ。
オレはその時選択した。
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それが、こんな後悔に繋がるとは思わず。
こんな状況になって初めて、リリアの気持ちを考えた。
オレは何度か、王の元へ足を運びリリアを帰せないかと相談する。
既に、現実世界とは遮断され、本体にも意識が入っている。不可能とのことだった。
さらに、どんなに罪悪感があろうとも、オレは王との盟約により真実をリリアには話せない。
オレは一生をかけてリリアに償わなくてはならない。
でも、償い方が分からない。
庭のユリの花を眺めて、リリアを思う日々。イオリには、何か言われたような気がしたが、全く頭に入ってこない。
今日も、オレは庭で花を眺めて思い詰めていた。
そこに「エルヴィス!」と声をかけられる。
オレは遂に幻覚までみるようになってしまったのだろうか
「リリア?」
そこには、確かに立っていた。
オレの"希望"となる存在が。
オレの胸にあるペンダントと同じものを胸に輝かせながら。
1日1話 更新となります。




