エピローグ
吉田淳 二十歳。
大学生。兄弟なし。
将来の夢は父の事務所を継ぐこと。
「ぴぴぴぴ……」
朝のアラームで目を覚ます。
顔を洗い、階段を降りる。
「おはよう」
「おぉ、おはよう」
新聞を読んでいる父――吉田正則が顔を上げる。
「母さんは?」
「夜勤だからな。もうすぐ帰ってくるだろ」
「そっか」
それ以上は聞かない。
用意されている朝食を食べる。
「オレ、これから大学行くわ。帰りに翔太と連に会ってくる」
「相変わらず仲が良いな、友達は大切にしろよ。」
「うん」
父の読む新聞には――
《アナザーライフ》サービス中止
の文字。
オレは何も言わない。
ちゃんと笑う。
自然に見えるように。
家を出る。
空は晴れている。
ビルの間を風が吹き抜ける。
……それを、冷たいと認識する。
---
大学の授業は問題ない。
真面目に受ければ単位は取れる。
友人関係も良好。
人に道を聞かれたので、親切に答える。
「淳ー!」
翔太が遠くから走ってきた。
「なーに、日本語で答えてんだよ?英語で聞かれてるだろ?困ってるぞ。」
翔太は焦っているようだった。
しまった……自動翻訳機能が。
慌ててOFFに切り替える。
道案内を終えると、翔太に肩を組まれた。
「今日ファミレスな。いつものとこ」
「分かってる」
「連は?」
「今から図書館」
連は翔太の後ろから静かに現れる。
「淳は、時間通りに来いよ」
「分かってる」
三人で笑う。
周囲から見れば、普通の大学生。
少し仲の良い三人組。
---
放課後。
駅前のファミレス。
ドリンクバー。
奥の席。
翔太がスマホを机に置く。
「さて、今週の報告」
声色が少しだけ変わる。
連がメモ帳を開く。
「淳、そっちは?」
「特に異常なし。父親の事務所は安定。母親の勤務も通常通り」
「昼間の件は本当に気を付けろよ?」
「切り替えを忘れていた。淳は性質上、少し抜けている」
周囲は賑やかだ。
笑い声。
食器の音。
その中で、三人だけ少し静か。
翔太がぽつりと言う。
「……あっちは、どうなってんだろうな」
淳は水を一口飲む。
「分からない」
連が目を細める。
「でも、役割は果たしてる。それでいいだろ。それが王への忠誠だ」
淳は頷く。
「うん。それでいい」
その後は、この世界の会話を楽しむ。
翔太が冗談を言えば笑う。
連が愚痴を言えば頷く。
それでも生活は続く。
明日も大学に行く。
---
帰宅。
「ただいま」
「おかえり」
母が帰ってきていた。
「夕食は?」
「食べてきた」
テレビを付ける。
《アナザーライフ》別システムにて再構成決定。
ニュースが流れている。
「あら?そういえば、最近ゲームしてないわね?」
淳は少しだけ考え、肩をすくめる。
「大学が忙しいからね
それに――ゲームよりも現実のほうが楽しい」
母が笑う。
「そう?それは良いことね」
淳も笑う。
「そうだよ。現実最高!!」
少し大きな声になった。
「何バカなこと言ってんの?」
母が笑う。
淳も笑う。
窓の外、夜の街。
ゲームは終わった。
けれど――
現実は、続いている。
― 完結 ―
ここまで読んでくださり、有難うございました。
物語はいったん完結となりますが、まだ少しだけ続きます。よろしければ、もう少しだけお付き合いください。
1日1話 更新となります。




