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第十五話 終息

――リリア視点――


視界の端で、赤く点滅するタイマーが暴れていた。


「……っ、よし」

山の斜面に爆弾箱を叩き置く。


離れようと、身体を反転させた――その瞬間。


閃光。


次の瞬間、世界が砕けた。

「――――ッ!!」

轟音が、空気ごと叩き潰す。


爆風が全身を打ち抜き、身体が宙に浮いた。 骨の芯まで振動が走る。


地面に叩きつけられながら、リリアは歯を食いしばった。


「うおおおお……っ、流石に……いってぇ……」

視界が揺れる。


身体が粒子のように崩れ始める。


そして――

赤い文字が浮かび上がった。



プレイヤー死亡

GAME OVER




「……だよなぁ」


苦笑が浮かぶ。

視界が暗転した。



淳は、ベッドの上で目を覚ました。


ヘッドセットを外す。 現実の空気が肺に流れ込む。


「……はぁ」

心臓が、まだ速い。


「エルヴィス……大丈夫だったかな……」

ぽつりと呟く。


スマホを掴み、掲示板を開いた。 速報が、凄まじい速度で流れている。


淳の指は、無意識に画面をスクロールしていた。




――エルヴィス視点――


爆煙が夜空を覆っていた。


エルヴィスは、その方向を見つめ続けていた。

だが――


ゆっくりと、剣を握り直す。


「……あいつの選択を、無駄にはしない」

低く呟いた。



「第二騎士団――教会へ急ぐぞ」


騎士団は統制された動きで前進し――

教会前広場へ到達した。


教会周辺は、すでに戦場だった。


騎士団と冒険者ギルドが激突している。



「団長が来たぞ!!」

士気が跳ね上がった。


拮抗を崩し、騎士団側が優勢になりかけたその時

「……へぇ」

敵側の一人が笑った。


懐から取り出されたのは――上級ポーション。

瓶が砕かれ、緑の光が身体を包む。


斬られていたはずの傷が、瞬く間に閉じる。

「もう一回遊ぼうぜ?」

敵が突撃してくる。


さらに、そのプレイヤーが叫ぶ。

「全員使え!!」

次々と光が弾ける。


倒していた敵が――立ち上がる。


「くそっ……!」

一瞬の油断をつかれて、3人の騎士が取り囲まれる。

盾が砕け、腕は震える。


震える剣を振り下ろして決死の抵抗をするが、刃は敵に届かない。


「おいおい、NPCのくせにこいつらの震えてるぜっ」


「マジかよ」


プレイヤーが騎士たちを嘲笑う。

今すぐに首を切り落としに行ってやりたいが、敵が多く、たどり着けない。


「こちらは任せてください!」

聞き覚えのある声。


振り向くと、1人のシスターが短剣を振るって敵を掻い潜って前にでていく。


「ふふふ…戦場で囲まれるなんて、まだまだ可愛い子羊ちゃん達ね」


白い修道服の裾が翻る。

セレナだった。


回し蹴りが一人の顎を砕く。 肘打ちで二人目を吹き飛ばす。

三人目の首筋に短剣を突き付け、微笑み斬りつけた。


白い修道服は真っ赤に染まっている。


「……何をしている」


「お困りのようでしたので…」

セレナは涼しい顔で敵を蹴り飛ばした。


「実は私、本来の職業がマフィアのボスでして」


「……は?」


「このような乱戦、血が騒いで…今のはなし、今のはなし。リリアには内緒にしてくださいね」

にこやかに敵に短剣を刺しながら、お許しくださいと神に祈りを捧げていた。


「意味が分からん」


だが。

――異様に強かった。



シスターの活躍もあって、敵の数が徐々に減りバランスが崩れてきた。


戦況が、再び傾いた。


だが――


「なかなか、手強いねぇ」


嘲笑が響く。その瞬間


敵側のプレイヤー達が、同時にマジックアイテムを起動した。


地面から炎柱が噴き上がる。

氷槍が降り注ぐ。

雷が盾列を貫く。


「うああああ!!」


騎士が吹き飛ばされる。



セレナが咄嗟にマジックアイテムを使い結界を展開する。

だが――多すぎる。



「団長……押されてます……!」


戦線が、ゆっくりと後退していく。


「こちらもマジックアイテムを使用し、身を守りながら前へ出ろ。アイテム切れにさせるんだ。」

手持ちのマジックアイテムは少ないが、ギリギリの状態て対応していく。


守るばかりで、前に進めない。

打開策が浮かばい…考える暇もない…


指示を待つ部下たちに何も言えずにいると


戦場のど真ん中に装飾でゴテゴテ馬車が、マジックアイテムを物ともせずに、飛び込んできた。

「なんだ、なんだ?王に呼ばれてきてみれば、楽しそうなことやってるなぁ。」


40代くらいの獣人のイケオジが顔をだす。


「はっ…えっ…、ちっ…父上…?」

驚きと、安堵で声がでる。


「あっ…あの人伝説プレイヤーのレックス様だ!!」


「えっ…いま団長、父上って言わなかったか?」


「確かに、公爵家の馬車から降りてきたぞ」


戦闘そっちのけで、ざわざわとしだす。

「あらまぁ、本当に何だか騒がしいわね」

美しいドレスを身にまとった淑女も馬車から出てくる。


「母上…まで…」

まだエルヴィスは呆然としていた。


「団長の母上ってことは、レックスの右腕とされた公爵家のオリビア様だ!!」


「すっすげー」


騎士団が盛り上がり、一瞬敵がたじろいだ。


「伝説プレイヤーがなんだって言うんだ。さっさとマジックアイテム投げまくれ。」


次の瞬間、怒涛の攻撃がとんできた。


「まったく最近の若者は隠居したジジィに冷たいもんだ」

馬車を片手で持ち上げて、攻撃を相殺する。

馬車は大破したが、全員無事だった。


スゥ…大きく息を吸い込んだレックス

「――道を開けろォォォ!!!」

雷鳴のような怒号が響き。


敵陣の中央が――爆ぜた。


巨大な戦斧が振り抜かれ

人体が宙を舞う。


そして、レックスの隣で

静かに剣を構える女性。


その背後から敵が襲いかかる。

振り返りすらしない。


剣が、流れるように動いた。

刃が三度閃く。

敵が同時に崩れ落ちる。


「あなた、前を見て」


「任せろ」


レックスが笑う。


戦斧を地面に叩きつける。

衝撃波が敵を薙ぎ払う。


「行け、エルヴィス」


エルヴィスは頷き、教会へと駆け抜けた。


教会にはいると、内部は惨状だった。


蘇生をしようとするプレイヤーを妨害する、冒険者ギルドの者達。エルヴィスの方をみて、慌てて逃げようとしている。


それを見て

怒りが、臨界を超えた。


剣が閃く。

一人。 二人。 三人。



ただ――

床が赤く染まる。


そして静寂。


やっと、終わったか………

プレイヤーを助ける為の剣であったはずなのに……

リリアは今のオレを見たら、なんと言うだろう。


はぁ…



ため息をつき座り込もうとした、その瞬間

「いやぁ、楽しかったぜ」


拍手が響いた。


そこに立っていたのは――冒険者ギルド長。

細い。 不健康そうな笑み。


過去何度か会ったことがあるが、腰の低い優しい男性だった。


しかし今は、見る影もない。


「NPCのくせに、よく頑張るじゃないか」


「冒険者ギルド長……ゴールド」

「そう。君達の敵だ」


軽く頭を下げる。

芝居がかった仕草。


「いつぶりだっけ〜、エルヴィス。

ちょっと、お喋りする?」


オレは鋭い眼光で睨みつける。


「はは…なんだよ、ノリ悪いなぁ。実はさ、オレは規制を撤廃したいんじゃないんだよ」


「では、何故ギルドを巻き込んでこのようなことをした?」

エルヴィスは冷静さを心がける。


「壊したいんだよ。秩序も、倫理も、全部。このゲームってさ〜つまらないと思わない?平和過ぎるでしょ?」


「だから、オレ好みに作り変えようってわけ…」


「ふざけたことを…」


戦闘が始まる。

ヴァルディオの剣は速い。


軽い。 読めない。 蛇のように軌道が変わる。


エルヴィスの頬が裂ける。

「痛いか?ああ、NPCは痛覚設定あるんだっけ?」

笑う。


「でも死なない。便利だよな」


連撃。

防御が崩れる。


エルヴィスが反撃する。

肩を斬る。



だが――

ヴァルディオは笑いながらポーションを飲む。

傷が閉じる。


「ほら、無駄」


さらに瓶を取り出す。


「努力が報われない瞬間って、最高だと思わない?」

斬撃。


胸を深く裂かれる。

エルヴィスが膝をつく。


「君達NPCはさ」


ヴァルディオが囁く。

「プレイヤーを楽しませるための道具なんだよ」


剣が振り上げられる。


「壊れても、誰も悲しまない」


身体に見合わない、なかなか重い剣に体力が吸われていく。


それでもエルヴィスの方が強い、普通に戦っていれば絶対に負けたりしないだろ。


だが、ゴールドは上級ポーションを使用おり、まったく攻撃が効いてこない。


激しい戦闘が続く中、ついに

エルヴィスの体力ゲージが0になり、倒れ込んだ。

致命傷を負っているわけではない。


しかしシステム上、動けない

つまり、敗退だ。


「あれ…もう、終わり?つまらないなぁ。

そう言えば、外にレックス来てるんだっけ?」


「そうだ、伝説のプレイヤー倒して、皆を絶望の淵に追いやってやろう〜〜〜」


ゴールドはエルヴィスを踏みつけ、教会の外へ出ようとする。


すると、その瞬間。


ピロン…


電子音が鳴った。


----------------------

プレイヤー蘇生

リリア(獣人 薬師)

----------------------


「リ…リリア?」

エルヴィスは、つい声を出してしまった。


ゴールドが振り向く。

「なんだぁ?まだ、諦めの悪い奴がいたのか」


獣人を形どって青く光出した身体を構成し始めている。ゴールドは迷いなく青い光に剣を振り下ろそうとする。


が…


次の瞬間、ゴールドの頭に振動が響いた。

気づけば頭が床に打ち付けられていた。


ERROR

ERROR

ERROR


エルヴィスの視界が歪む。

エラーの文字で前もよく見えず、激しい耳鳴りがする。


しかし、エルヴィスの手はしっかりとゴールドの頭を掴みあげて、大理石へ何度も叩きつけていた。


死なないように、何度かポーションをかけてやって

何度も何度も叩きつけた。


すると、いつの間にかゴールドは動かなくなっていた。ゲームオーバーになったわけではない。


たぶん、あまりの頭への振動に失神したのだろう。


「お前は…NPCを道具だと言ったな。

だが、お前はその道具以下だ。」

最後に、近くにあった折れた剣を心臓に突き刺し、完全にゲームオーバーとさせた。


流石に限界を迎えて、倒れ込む。


視界の端に、蘇生されたリリアがこちらに走ってくるのが見えた。



良かった…。



エルヴィスは意識を手放した。


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