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第十一話 友人

ポルコに到着すると――


サラとレイカは既に席についていた。

サラは少し気まずそうに、肩身を狭くしている。


その理由は…。


たぶん、この見知らぬ青年。

学園の制服。 背筋はまっすぐ伸び、 仕草の一つ一つに妙な気品がある。


ただ座っているだけなのに、 空気が少し張り詰めているような違和感があった。


NPC……?

いや、プレイヤーか?


判断に迷いながら声をかける。



「えっと……こんにちは」

とりあえず挨拶をしてみる。


青年の視線が、ゆっくりこちらへ向いた。

値踏みするような視線だった。



どちら様?そう思って

レイカをに視線を向けると――

レイカは盛大にため息をついた。


「ほら言っただろ。全員女だって。

まぁ、現実では全員男だがな」


その言葉を受け、青年はゆっくりと俺を見た。

上から下まで、失礼にならない程度に。



「……なるほど。確かに聞いていた通りだ」


「だから何度も言っただろうが」


「確認は必要だ」


「何の確認だよ」


「お前が“友人”の話ばかりするものでな…」


そう言って青年は一歩前に出る。


「俺はヴァルディス。伯爵家の長男だ。敬え」


うぉ……俺様系NPC様だ。

ここまで堂々とされると、逆に清々しい。


「は、はじめまして。レイカの友人で、リリアと申します。」


気付けば自然と敬語になっていた。

ヴァルディス様は、わずかに満足そうに顎を引いた。


その様子を見て、レイカが頭を抱える。


「お前なぁ……今は学生なんだから、そういう振る舞いはやめろって言ってるだろ。学園でも身分を持ち出すのは禁止だろう?」


「ここは学園内ではない」


「そういう問題じゃない!」


レイカが声を荒げるが、ヴァルディス様はまったく動じない。


「そもそもだな。俺が身分を隠す必要がどこにある」


「だから友達が出来ねぇんだよ!」


「違うな」


ヴァルディス様は即座に否定した。


「他の者が、俺の高貴さに恐れ多くて話しかけられないだけだ。貴族社会では、常に人に囲まれている」


「それは、取り巻きって言うんだよ……」


レイカは天井を仰いだ。

なかなかにキャラの濃いNPCのようだ。


「それで……ヴァルディス様は、どうしてこちらへ?」


俺が恐る恐る尋ねると、


「レイカがよく話している友人と会うと言うからな。興味があった」


「……勝手についてきたんだよ。店に入るまで全然気付かなかった」


レイカがぼそっと補足する。



ヴァルディス様は腕を組みながら、軽く呟く

「まぁ、二人とも――分はわきまえているようだ」


その言い方にレイカの眉がぴくっと動いた。


「……はいはい、用事が終わったなら帰れ」


「いや、折角だ。レイカ、俺と出かけよう」


完全に俺とサラを無視して誘い出す。


「ふざけるな!オレはこの二人と約束して来てるんだ!」


そこから始まったのは、もはや説教だった。


身分を振りかざすな、空気を読め、勝手に付いてくるな――


レイカが息を切らすほど言い続ける。


俺とサラは、貴族様にそんな口をきいて大丈夫なのかと、内心ヒヤヒヤしていたが――


当のヴァルディス様は。

なぜか、少し楽しそうにそれを聞き流していた。


やがてレイカが肩で息をし始めた頃、


「……ふむ」


ヴァルディス様は満足げに頷いた。


「レイカがそこまで頼み込むなら仕方がない。今回は引いてやる」


「頼み込んでねぇ!」


「その代わり、次は俺との時間を作れ。それが条件だ」


それを聞いた瞬間、レイカの肩が震えた。


「お前が勝手に付いてきたんだろーがぁぁあ!!さっさと帰れーーー!!」


レイカはヴァルディス様の背中を押しながら、店の外へと追い出した。



---


すでに、外には立派な馬車が待機していた。


護衛に囲まれながら乗り込む直前、

ヴァルディス様は振り返る。


「レイカ」


「……なんだよ」


「約束は忘れるな」


「はぁ…もう…分かったから、さっさと帰れ!!」


ヴァルディス様は満足そうに微笑み、馬車へ乗り込んだ。



---


「……はぁ……」


レイカは肩を落とす。


「本当に、ごめんな。悪い奴ではないんだけど……」


「うん、なんとなく分かる」


サラも苦笑した。


「友達が少ないせいか、オレにやたら絡んでくるんだよ」


「大変そうだな……」


「ほんとだよ」

レイカは頭を抱えた。


---


「さて!」


空気を変えるように、俺は声を上げた。


「今日は礼をするために呼んだんだからな」


「礼?」


「薬草採取、手伝ってもらっただろ」


俺は胸を張る。


「予算は金貨一枚ずつ!」


二人の目が丸くなる。


「何でも言ってくれ。遠慮はするなよ。お礼だから」



---


最初に向かったのは古書店だった。


レイカは真剣な顔で棚を眺める。


「これと……これにする」


手に取ったのは、

・建国神話

・歴史記録書


「勉強熱心だな」


「趣味だよ、結構面白いんだ」


レイカは満足そうに頷いた。



---


サラが選んだのは武具店だった。


「この研磨工具と整備オイルかな」


「武器は買わないのか?」


「武器は長く使うものだからね」


サラは丁寧に道具を確認している。


「手入れを怠ると、いざって時に裏切られるんだよ」


なんか……格好いいな。



---


会計を済ませたあと、

レイカがふと別の店に立ち寄った。


文具店だった。


「……これも買っておくか」


装飾の綺麗なペンを選ぶ。


「それ自分用?」


「いや……」


少しだけ視線を逸らす。


「ヴァルディスへの土産」


「おぉ……」


なんだかんだ、仲良いんじゃないか。

俺とサラは顔を見合わせ、小さく笑った。



---


その後は露店を回り、甘い菓子を食べながら街を歩いた。


現実の話。

ゲームの進捗。

学園の噂。


くだらない話ばかりだったけど――

とても楽しかった。



---


気付けば空は夕焼けに染まっていた。


「今日はありがとな」


レイカが少し照れながら言う。


「こちらこそ」


「また誘えよ」


「もちろん」


サラも静かに頷いた。



---




とても楽しい一日だった。


こんな日々が、ずっと続けばいい――

そう思いながら、俺は夜の街を歩いていた。



その時だった。


ピロン…

視界の端で、青白い光が一斉に瞬いた。


通りを歩くプレイヤー達が、ほぼ同時に立ち止まる。

誰もが、虚空を見つめていた。


ざわめきが、ゆっくり広がる。


−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

プレイヤーの皆様へ


マジックアイテム規制についてのお知らせ

〇月〇日より、

下記のアイテムを規制致します…………


フルネーム:ヴァルディス・レオナルト・フォン・アイゼンヴァルト

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