第八話 初めての異世界街
「着きましたよ」
レイナと会ってから二時間ほど歩くと━━━立派な門が目の前に現れた。扉は鉄柵で作られており、石でできた外壁に繋がっている。
「なぁ、レイナ」
「なんですか?」
「ここは戦争でもしているのか?普通の街にこんな外壁はいらないと思うんだが…」
俺はレイナにそう問い掛けた。この外壁は見た限りかなり頑丈に作られているようだ。こんな外壁を造るのには相当な額の金がいるはずだが…そこまでして外壁を造る理由がわからない。
「え?あぁ、この外壁ですか?この街は『魔の森』が近いので、魔物がよく発生するんですよ。なので、魔物の侵入を防ぐために普通の町より外壁が分厚く作られているんです」
なるほど、その心配があったな。確かに戦えない者からしたら、ゴブリン一体でも大変だろう。『魔の森』にはゴブリンがウジャウジャいたし、防衛施設も必要だな。そんなところに住んでたやつもいるが。
ちなみに、そこを通ろうとしていたレイナのステータスはこんな感じ。
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名前:レイナ・アルトリア
種族:人間
職業:修道女
Lv:1
HP:28/28
MP:36/36
攻撃:19
耐久:11
敏捷:16
持久:21
器用:42
魔法:56
幸運:94
‹スキル›
【水属性魔法Lv2】【魔力感知Lv1】【魔力操作Lv1】
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そこまで高くはない。ゴブリン一体ならなんとかなるかもしれないが、複数相手や連戦だときついだろう。このステータスで『魔の森』を進むのは自殺行為でしかない。
…そこを通らなければならない理由があった?名字を名乗っていないということは家庭の事情だろうか。だとしても、俺にそれを詮索する権利はない。
ちなみに、ちゃんと許可を得てから鑑定させてもらった。しかし、そのときレイナは「ステータスは個人情報とはいえ見る方法はたくさんあるので、一々許可を取る必要はない」と言っていた。
だが、ベルフェルには怒られたんだよなぁ…。人間と魔族の価値観の違いだろうか?まぁ、許可を取らなくていいならこれからはガンガン使っていこう。
とりあえず町に入るとしよう。俺とレイナは門のそばに立っていた衛兵に声を掛ける。
「すみません、街に入りたいんですが…」
「おっ、そうか。身分証は持ってるか?」
衛兵は人の良さそうな笑みで俺たちに問い掛ける。レイナがこちらを見るので、首を横に振り、否定を示す。
「すみません、どっちも持ってないです…」
「そうか…。なら、仮の許可証を渡しておく。明日までに身分証を持ってくれば正式な許可証を出してやる」
衛兵はそう言って、懐から二枚の木の板を取り出す。あれが仮の許可証か。というか、入れないわけではないのか。セキュリティとして大丈夫なのか、それは。
「嬢ちゃん、名前は?」
「レイナです」
「レイナね…。そっちの兄ちゃんは?」
「ソースケ・ナグモだ」
「ソースケ・ナグモ…っと。これでいいぜ。何か困ったことがあったら、なんでも言ってくれ。そこら辺のチンピラならぶっ飛ばしてやるよ」
「ありがとうございます」
「いいってことよ。これも仕事なんでな」
衛兵は木の板に俺たちの名前を書き込み、渡してくれた。そして、鉄柵の扉を開ける。
「一応決まり文句なんで言っとくぜ。ようこそ、俺たちの街━━━エルガーへ」
衛兵はそう言った。エルガーか…。さて、なにがあるのやら…。
俺たちは衛兵に別れを告げ、街の雑踏へと足を運ぶ。まず、この街に何があるのかを把握しないとな。レイナに聞くとしよう。
「レイナ、この街には何があるんだ?」
「え!?え、えーっと、この街はこれと言った特徴は無いですかね…。特産品とかも無いですし…。あっ、『魔の森』の近くなので冒険者は多く集まりますね。だから、宿泊所や食事処は多いです」
ならば、寝床には困らなさそうだ…って俺、金持ってねぇじゃん。つまり、いま必要なのは…『身分証』、『泊まる場所』、『金を稼ぐ手段』の三つだな。この事をレイナに相談すると、
「それなら、冒険者ギルドで冒険者登録をするべきですね。冒険者カードは身分証になりますし、冒険者になれば依頼も受けられます。それに冒険者ギルドには宿泊所や酒場が併設されていることも多いのでそこに泊まることもできます」
と、百点満点の答えを返された。確かにそれならいま抱えている問題のすべてが解決する。そうと決まれば即実行だ。
「よし、冒険者ギルドに行こう。案内は頼む」
「わかりました!」
俺たちは冒険者ギルドへと向かった。
◇ ◇ ◇
「ここか…」
歩いて数分で俺たちは冒険者ギルドに辿り着いた。外見はラノベとかでよくある冒険者ギルドそのまんまだ。ドラ○エとかモン○ンとかをやったことがあるなら想像出来るだろう。
俺たちは木製の扉を開け、冒険者ギルドに足を踏み入れる。中を充満する強烈な酒の匂いに俺は思わず顔をしかめる。レイナのほうを見ると、鼻をつまんでいる。さっさと、登録を済ませよう。
どうやら、俺たちが入った扉は酒場よりの入口だったようで、こちらは酒の匂いが幾分かマシだ。俺たちは新規登録と書いてあるカウンターへ向かう。
「こんにちは!こちらは新規登録の受付になります。登録をご希望でしょうか?」
「あぁ、今すぐ登録出来るか?」
あまりここに長居したくないので早く登録を済ませたい。そう受付の女性に聞くが、
「申し訳ありません。本日の新規登録試験は終了してしまいました。次の試験は明日の朝になります」
なん…だと…!?じゃあ俺たちはどこに泊まればいいんだ?俺は野宿でも大丈夫だがレイナはわからない。なんとかならないか…?そう思っていたが、
「わかりました。では、明日の試験でお願いします」
「かしこまりました」
俺が答える前にレイナが答えてしまった。待て、俺は一文無しだぞ?どうしろと言うんだ?そう思いながら、俺は冒険者ギルドを出た。
「どうするんだ?俺は金持ってないぞ?」
「大丈夫です。今日の食費と宿泊費は私が出します。多少のお金はありますから」
「いや、それは悪い。俺は携帯食糧もあるし、野宿でも大丈夫だ」
俺は断ろうとしたが、
「いいんですよ。あのとき助けてもらえなかったら私は生きていないんですから、恩返しだと思ってください」
レイナは頑として譲らなかったが、俺も譲れないところはある。交渉の結果、俺がレイナに『貸してもらう』という形になった。レイナは不満げだったが、俺は必ず返すつもりだ。借りを作るのはあまり好きではない。
俺たちはここらで評判のいい宿屋に泊まることにした。当然、部屋は別だ。宿屋のおばさんに「恋人かい?」と聞かれて、顔を真っ赤にして否定するレイナが可愛かった。
その後、宿屋で出される夕飯を食べ、それぞれの部屋に入った。しかし、森では川で体を流していたが、風呂に入れないのは辛いな…。【創造魔法】で作ってみるか?いや、ここで作ったら宿屋に迷惑だな。やめておこう。
…明日は登録試験か…。どんな試験かは知らないが、なんとしてでも合格しないとな。このままレイナのヒモになるわけにはいかない。俺は明日の試験に向けて覚悟を決めたのだった。
言い忘れてましたが、今投稿している話はちょくちょく編集するつもりです。暇で暇で何もやることがない人は暇つぶし程度に読んで頂けると泣きながら狂喜乱舞します。




