第九話 冒険者登録試験
窓から降り注ぐ光で俺は目覚めた。未だに目覚めきっていない頭と重い体を無理矢理動かしながらベッドから降りる。ベッドで寝たおかげか昨日は久々に熟睡出来た。日本にいたときよりも品質は落ちるが、野宿よりはマシだな。
俺は荷物を持って宿屋の食堂に向かう。荷物を持っていく理由は盗難防止だ。宿屋のおばさんに聞いた話だとそのままにしておくと、置き引きに合う可能性があるそうだ。だから、常に持ち歩くようにしている。
俺は空いていたテーブルに座り、レイナが来るのを待つ。レイナは先に食べてていいと言うが、そうはいかない。俺はレイナに金を『貸してもらう』立場なのだから。
ボーッとして待っているのももったいないので【魔力操作】の練習をしながら待っていると、
「すみません、待たせてしまいましたか?」
いつもの修道服を着たレイナが現れた。朝は苦手なのか、水色の髪はところどころ跳ねている。
「いや、今来たばかりだ」
「なら、よかったです。朝ごはん食べましょうか」
「そうだな」
そう言ってレイナは朝食を二人前注文する。ここの注文はメニューなどは無く、食べる量を言って注文する。理由は決まったメニューを出せる保証がないからだ。
この世界では魔物が出没する。そのため、魔物に畑が荒らされたり、魔物に行商人が襲われたりして、いつも仕入れていたものが突然手に入らなくなることがある。だから、メニューを決めずにそのとき手に入ったもので調理するのである。
今日の朝食はパンに芋のスープ、それとサラダというラインナップだった。
「今日は冒険者登録試験ですね。自信あります?」
「試験内容がわからないからなんとも言えないな。まぁ、なんとしてでも合格しなければな。レイナに金を返さなければならない」
「いいですって言ってるじゃないですか。恩返しなんですから」
「いや、これは俺のプライドの問題だ」
なんて、他愛のない会話をしながら俺たちは朝食を食べ進めた。
「「ごちそうさまでした」」
昨日の夕飯のときに気づいたが、どうやらこっちにも食前と食後の挨拶の文化はあるらしい。レイナに聞いてみたところ、だいぶ昔に『転生者』がしていたのが広まったのだそうだ。
「試験は朝と言っていましたし、早速向かいましょうか」
「あぁ、そうしよう。もう一日待つのはゴメンだからな」
◇ ◇ ◇
冒険者ギルドに入ると、昨日と同じ女性が受付にいた。
「こんにちは…って昨日会った方たちですね。登録試験ですか?」
「えぇ、受けられますよね?」
「はい。もうじき、試験監督の方がいらっしゃるので、そちらでお待ちください」
受付の女性が指したほうを見ると、試験希望者だと思われる者が数人がいた。俺たちを含めて九人か。思っていたより多いな。
「えーっと、九人かな?じゃあ、時間なので試験を開始します」
どんな試験なのかと俺が想像していると、受付の奥から柔和な笑みを浮かべた一人の男が出てきた。
「まずは自己紹介から。今回試験監督を務めさせていただきますミュール・コラプスと申します。ここのギルマスもしているので、以後お見知りおきを」
見かけはただの優男に見えるが、服の下には隠しきれない鍛え抜かれた肉体が見えている。重心のとり方や歩き方からも熟練の戦士であることがわかる。
「それでは、試験内容の説明に移ります。課題は単純明快、『ゴブリン十体の討伐』です。制限時間は日没まで。しかし、これから組む『三人一組』で行ってもらいます。今から十分差し上げますので分かれてください」
三人一組での試験。これは予想外だったな。一人はレイナと組むとして、あと一人はどうするか…。
「レイナ、あと一人どうする?」
「うーん、誰と組むべきとかわかりませんし…最後に残っていた方と組んだらどうですか?」
レイナの言うとおりだな。ステータスが高いやつと組んだとしてもそいつとちゃんと連携できるかはわからんしな。とりあえず待ってみるとしよう。
「なぁ、そこのお二人さん、オレと組んでくれへん?」
そう思っていると、一人の男が俺たちに声をかけてきた。少し日焼けした肌に黄色の瞳、逆立った短い銀髪、軽鎧を身に着け、腰には二本の剣を携えている。ていうか、関西弁?…ひょっとして転生者か!?
すぐさま俺は【鑑定】を発動させる。
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名前:ウォルフ
種族:半獣人
職業:剣士
Lv:12
HP:178/178
MP:96/96
攻撃:139
耐久:82
敏捷:262
持久:187
器用:93
魔法:71
幸運:59
‹スキル›
【火属性魔法Lv1】【付与魔法Lv1】【魔力感知Lv2】
【魔力操作Lv2】【双剣術Lv4】【身体強化Lv2】
‹耐性スキル›
【打撃耐性Lv3】【斬撃耐性Lv2】【刺突耐性Lv2】
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…転生者の可能性はなさそうだな。レベルのわりにステータスは高いが、職業は異世界転生者じゃないし、【鑑定】も持ってない。【偽装】を持ってるかもしれないが…まぁ、そのときはそのときだ。
「余ったのか?」
「いや、そうやない。オレはカンが鋭いほうでな、困ったらカンに従うって決めとるんや。そんなオレのカンが言うとるんや…『こいつは強い』ってな」
…へぇ、よく【鑑定】も無いのにわかるもんだな。こいつの言ってる通り、俺のステータスを超えるやつはこの中にはいない。
「せやから、お前たちと組みたいて思うたんや。どうや?組んでくれへんか?」
「俺はいいが…レイナは?」
「私も構いませんよ」
「よし、なら決まりやな!俺はウォルフいうんや。よろしゅう」
そう言って男は━━━ウォルフは手を差し出してきた。俺はその手を掴む。
「俺はソースケだ。よろしく」
「私はレイナと言います。こちらこそよろしくお願いします」
名乗り合ったところで試験監督のミュールが声を張り上げた。
「はい、十分経ちました。どうやら全員無事分かれたようですね。それでは、この街の南門から『魔の森』に向かいます。そこでゴブリンの討伐を行ってもらいますが、注意点を一つだけ。━━━必ず『三人一組』で行動してください。一人でも欠けていた場合は不合格となります」
最後にミュールが注意点を説明した。やけに『三人一組』での行動を念押ししてくるが、特別な意図でもあるのだろうか。
俺たちは新しくウォルフという仲間を加え、登録試験に臨むのだった。
ウォルフの関西弁は適当です。何かありましたら指摘してください。確認次第訂正していきます。




