第四十五話 格闘訓練
他の作品に熱中してたらいつの間にか三ヶ月近く経ってました。本当に申し訳ありません。
全員分の武器を創り終えた翌日、俺はギルドの訓練所へ向かって歩いていた。今日の目的は俺、ウォルフ、カナタの三人での格闘訓練である。
なぜかというと、最近レイナがミヤビに護身のために【杖術】というスキルを習っており、それのレベル上げのために二人で行動することが増えていた。
そのため、残った野郎三人で依頼を受けたり、訓練をしたりと俺たちなりにレベル上げを行っている。最近はもっぱら格闘訓練をしている。
さて、ぼんやりと歩いていると、訓練所手前でたむろっている二人の冒険者が見えた。言うまでもなく、ウォルフとカナタである。
「おーう、来たか」
「ソースケ!遅いわドアホォ!」
「いや、別に遅れてはねぇだろ?」
というか、待ち合わせの時間なんて決めてないだろ。まあ、ウォルフはできるだけ長く戦いたいだけか。コイツも戦闘狂の疑いがあるんだよな。
そんなことを考えながら、三人でギルドの訓練所へと足を踏み入れた。
◇ ◇ ◇
ギルドの訓練所は真ん中に武舞台のような石の台があり、その周りに様々な訓練器具が置いてある。
サンドバッグやダンベルもどきに加え、中国のカンフー映画に出てくるようなカカシ、何本も棒が付いている回る木、挙げ句の果てにはゲーセンのパンチングマシンみたいなのも置いてあったりする。
なんでも数百年前に異世界から来た勇者が伝えたらしいが、間違いなくソイツの悪ふざけか変な誤解が混ざっている。最早悪意があるだろと思うくらいだ。
別に不便だったりやりづらいことがあったりするわけではないが、それが質の悪さに拍車をかけている。なんか若干ムカついてきた。
それはさておき、現在武舞台ではウォルフとカナタが向かい合っている。三人での格闘訓練だが、基本的に戦っているのはこの二人だ。理由は単純、俺が弱いからだ。
戦績はカナタ>ウォルフ>俺といった感じだ。割合はカナタが五、ウォルフが三・五、俺が一・五という具合だろうか。身体能力自体は二人にも負けないが、技術が無いため純粋な格闘ではどうしても劣る。
俺は…というか転生者全体に言えることらしいが、身体能力やスキルが秀でているため、それらによるゴリ押しが非常に多くなってしまう。俺も武術は高校体育レベルしかしていない。
しかし、それでは技術が身につかず、やがて限界が来る。身体能力は無限に鍛えられない。でも、技術はいつまでも残り続ける。最終的に物を言うのは努力なのだ。
だから、戦わない時でも二人の戦闘を見ている。様々な武術で言うところの『見取り稽古』というやつだ。身体能力の系統は違うが、参考にはなる。
どうやらちょうど始まったところのようだ。開幕早々ウォルフはカナタに急接近し、数発殴っては離れるを繰り返している。
ウォルフのスタイルは高い機動力を活かしたヒットアンドアウェイ戦法だ。単純だが、回避に専念したウォルフを捉えるのは非常に難しい。一度相手にしたが、俺の攻撃はかすりもしなかった。
その後の攻撃も速く、ウォルフは一発も当たってないのにこっちは数十発食らってるなんてこともざらにあったりする。
それに対してカナタは高い耐久力で攻撃を耐え、重い一撃を確実に撃ち込むというカウンタースタイル。こちらも単純だが、かなり強力だ。
防御に徹したカナタを崩すのは俺一人じゃ間違いなく不可能だ。ウォルフと二人で挑んだことがあるが、それでようやくクリーンヒットできたって感じだった。
この試合はその経験を活かしてか、ウォルフは殴り倒すってよりはどうにかバランスを崩そうと試みている。
カナタの攻撃を回避しながら、ウォルフの攻撃は全てカナタに命中する。なかにはそこそこ威力のあるやつも入ったようで、後退ることもあった。
しかし、本来二人の相性は圧倒的にカナタが有利だ。ウォルフの攻撃は通じないのに、カナタの攻撃はウォルフに当たればかなりのダメージを与えられる。
ウォルフの体力が底をついたところを、カナタが狙い澄ました一撃を撃ち込んでゲームセット、というのがよくあるパターンだ。
この試合もその通り、最終的にはカナタの勝利で終わった。ウォルフはかなり強いと思うが、やはり相性差は戦闘では大きな要因になりうるということか。
「だー、クソ!また負けかい!」
「前よりは重い攻撃も増えたぞ。それだけ成長してるってこったろ」
「それやったらええんやけどなぁ……」
試合を終えた二人が言葉を交わす。ウォルフは試合の反省点を、カナタはそれに対してアドバイスをしている。将棋で言う感想戦みたいなものだろう。俺も俺なりに二人の戦いを振り返ることにした。
二人とも高いステータスを全面に押し出しているが、それはステータス頼みというわけではなく、自分に適した戦い方を探った結果それに行き着いたんだと思う。
才能や適性とも呼べるものは存在するし、それによって左右されるのが大きいのも事実だ。二人はそれに従って伸ばした結果が今のスタイルなんだろう。
なら俺は?俺のステータスの長所はなんだ?二人のようにわかりやすいものはないが、あるとするなら……全ステータスの平均値の高さか?
ウォルフもカナタも二人のステータスは、一つ秀でたものがある代わりに、劣っている部分もある。だが、俺は全てが高くはないが低くもない。
中途半端、器用貧乏なんて言われ方もするが、それは確かに長所として相応しいものだ。けど、それを戦い……この場合は格闘に落とし込むにはどうすれば……
「ソースケ!次お前の番やぞ!」
おっと、少々考え込みすぎだようだ。
「おう、今行く。相手はどっちだ?」
「俺だ」
「カナタかぁ……お手柔らかに頼むぜ」
「やなこった。遠慮なくぶっ飛ばすぜ」
こうして俺たちは一日中戦い続けた。ちなみに今回の戦績は三十四戦中、俺が三勝、ウォルフが十三勝、カナタが十八勝だった。案の定俺はボコボコにされた。




