第四十一話 黒鬼躍動
もう開き直って二週間から三週間ごとの更新にしたいと思います。
できるかぎり頑張りますので、よろしくお願いします。
レイナが『水魔結盾』を展開してからは、もはや作業と化した。俺がロックリザードを追い詰めて死ぬまで殴るの繰り返し。
もちろんロックリザードは抵抗するが、たった六体ではレイナの『水魔結盾』を突破できず一体、また一体と数を減らしいくこととなった。
最終的には約十分ほどでロックリザードの殲滅を完了した。相手の攻撃を無視できるというだけでここまで楽になるとは…。
とりあえずレイナのとこに戻ろう。
「レイナ、無事か?」
「無事…ですけど動けません…」
「大丈夫だ、抱えていくから」
その言葉を聞き、レイナはなんとも複雑そうな表情をした。何かしら言いたいのか知らないが、言う気が無いなら、俺が聞くことはない。
「ていうか、レイナあんな魔法使えたのか?」
俺が何より聞きたいのはそれだ。あるなら最初から使って欲しかった。というか、最初から使っているはずだろう。何か事情があったのか?
「あれは…今作ったんです。無理し過ぎたせいか、今は動けませんけど…」
は?作った?今?
「どういうことだ?」
と、思わずレイナへ問い掛ける俺。
「え?そのままの意味ですけど…」
と、きょとんとした表情で反応するレイナ。レイナの表情からしても、嘘をついている様子は無い。つうことは…マジで作り出したのか!?
マジか…作り出せるのは俺の特権だと思ってたのに…。いや、前向きに考えろ。他にも俺と同じことができるやつがいるかもしれないってことだ。
そんなやつと戦うときに、知っていれば慌てなくて済む。いや、得したな。…うん、悔しいものは悔しい。絶対に魔法創れるようになってやると決意する。
まぁ、それは今はどうでもいい。まだミヤビやカナタやウォルフが向こうで戦ってる。俺たちだけ倒したって終わりじゃないんだ。
「とりあえず、ウォルフたちと合流するぞ。立てるか?」
「…無理です」
「よし、抱えるぞ」
やはりなんとも言えないような表情をするレイナを黙殺し、脇に抱えて来た道を戻る。あまり離れてないし、すぐに戻れるはずだ。
と、その時、何かがぶつかったような轟音が響く。方向は…ミヤビたちがいる方向。俺は抱えているレイナにギリ影響が無いくらいの速度まで加速する。
数秒後、ミヤビたちが居たはずの戦場にいるのは━━━凄惨な笑みを浮かべて暴れ回るカナタの姿。
武器である大盾や槍を投げ捨て、身につけていた黒い鎧も破壊されていた。暴れ回る姿はまるで暴力の化身。ロックリザードを素手で殴り、蹴り、引き千切る。
「ソースケくん!レイナちゃん!こっちっす!急いで!」
予想外の状況に呆然としていた俺たちにミヤビが声を掛ける。その周囲には障壁が展開されており、ウォルフもいる。
俺はレイナを抱えたまま、その障壁内に潜り込む。そして、ミヤビを問い詰める。
「なんだよ、アレ!?いや、カナタってのはわかるけど、なんであんなことになってんだ!?」
「やっぱりカナタさんですよね!?アレは一体…!?」
「オレも説明されとらんわ!どうなっとんのかはよ言えや!」
「あー、うるさい!後で説明するから少し黙ってろっす!」
ミヤビにそう言われて全員がおとなしく座った。カナタらしき黒い人影は、依然としてロックリザードを殺し回っている。
今まで見てきたカナタとは似ても似つかない表情に、絶対にしない━━━いや、できないはずの暴力的な戦闘。
カナタの放った拳がロックリザードに命中し、頭が砕けそのまま動かなくなる。この時点でおかしい。本来のカナタのステータスでは鱗を少し削るのが精々。
だというのに、鱗が特に厚い頭をいとも簡単にぶち抜いてる。どうなってんだ?ユニークスキルでもないし…どうやって強化している?
そう考え込む俺とは違い、レイナとウォルフは少し恐怖に近い感情を抱いているように見えた。まぁ、あの暴れっぷりからしたら、レイナたちが正常だ。
その後、五分足らずでロックリザードを殴り潰したカナタが高笑いをする。その声はいつものカナタの声より甲高く、酷く耳障りな声だった。擬音をつけるなら、キョキョキョキョ、といった感じか?若干キモい。
そのまま、カナタが纏っていた黒いオーラのようなものは消え失せ、膝から崩れ落ちた。すぐさまミヤビがカナタに駆け寄り、ポーションを飲ませる。
今は眠っているかのように身動き一つ無い。まぁ、生きているだろうし、今重要なのはそれじゃない。
「おい、ミヤビ。いい加減話してもらうぞ」
「わかってるっすよ。とりあえず、今カナタ寝てる…ていうか、気絶してるんで声は抑えてっす」
ミヤビはさも当然のようにカナタに膝枕をする。俺たちも疲れが限界に達し、倒れ込むように座った。アレを突っ込む気力は無い。
「まずはソースケくんとレイナちゃんが向こう行ってからの話からっすね」
ミヤビはそう前置きし、話し始めた。相変わらず妙に話が長いので、頭の中で要約しながら聞いている。
ミヤビ曰く、俺たちが向こうで戦ってるときは、こちらも三人で少しずつダメージを与え続けるという戦法で戦っていたらしい。あまりこっちと違いはなかったようだ。
そして、音から俺たちの戦闘が終わったのを確認し、ミヤビがカナタに魔法を発動させたのだという。
「魔法?あの黒いオーラみたいなやつか?」
「そうっす。名前は『黒鬼纒身』。理性をなくすかわりに異常なまでにステータスを上昇させる魔法っす」
「なんでそれ最初から使わんかったんや?そしたらすぐ終わったやろうに」
すかさずウォルフがミヤビに問い掛ける。確かにそれは俺も気になった。すぐに強力な魔法や能力を使わない理由として考えられるのは…条件があるとかリスクがデカいとかか?
「アレは…諸刃の剣なんすよ。使うほどに寿命が縮むんす。今回は五分くらいだったから…二週間くらいっすかねぇ」
ミヤビは目を伏せ少し悲しげにそう言った。予想以上にデメリットがデカすぎる。そりゃ、そう簡単には使えるはずもない。
「んあ…あ゛ー…」
「あ、カナタ起きたっすね。気分はどうっすか?」
「アレしたあとで、気分良いわけねぇだろ…」
少し重い空気が流れたが、カナタが目を覚ましたことで注意が逸れ、そんな空気は霧散した。色々話したがまだ動けそうにないらしい。しばらくそのままにするとしよう。
こうして、俺たち五人のロックリザード討伐は完了した。もう少し楽な仕事だと思ってたんだがな…人生なかなか上手くはいかないものだ。




