第三十八話 VSロックリザード
俺たちは鉱山の洞窟を進んでいた。鉱山の中は申し訳程度の灯りしかなく薄暗い。カナタが『光魔珠』であたりを照らしてやっと普段通りに見えている状態だ。
おまけにかなり入り組んだ構造をしている。まるで蟻の巣だ。常に【魔力感知】を発動させていたから気付けたが、初見じゃわかるわけが無い。
対策として道に目印を付けようにもこの暗さじゃ役に立ちそうにないな。とりあえず俺たちは俺が創り出した剣を鉱山の壁に突き刺しておくことにした。
「やっぱり便利っすよね、その能力」
「あぁ。できるなら俺のと交換してほしいくらいだ」
「二人のユニークスキルも十分強力だと思うぞ」
ミヤビとカナタには俺のユニークスキルは一度見た武器をコピーして生み出す能力だと伝えた。ユニーク魔法の存在を簡単に伝えるわけにはいかない。レイナとウォルフにもそれは伝えてある。
しばらく探索を続けると【魔力感知】が反応を示す。ミヤビとカナタも気付いたようだ。それは前方から飛び出して…違う!これは魔法だ!
「カナタ!」
「全員下がれ!『付与・光』!」
飛んできた魔法をカナタが【付与魔法】で強化させた大盾で受けきる。一体どいつが魔法を?【魔力感知】に反応は無かった。どうやって…
「キシャァァァァア!」
そう考えていると目の前から奇声が上がる。俺はほぼ反射的に【鑑定】を発動させていた。
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名前:なし
種族:ロックリザード
職業:なし
ランク:D
Lv:25
HP:527/527
MP:269/269
攻撃:397
耐久:673
敏捷:318
持久:424
器用:215
魔法:281
幸運:38
‹スキル›
【地属性魔法Lv4】【魔力感知Lv5】【魔力操作Lv5】【擬態Lv6】
‹耐性スキル›
【打撃耐性Lv2】【斬撃耐性Lv6】【刺突耐性Lv6】
【火属性耐性Lv2】【風属性耐性Lv5】
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ロックリザード…!コイツか。近くにいるはずだが、【魔力感知】では見つからない。【擬態】…このスキルのせいか?
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名称:【擬態】
能力:あたりの光景を対象に投影する。物理的または魔
法的な衝撃で解ける。レベルによって隠蔽力が
上がる。
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つまりこれは…姿の隠蔽。【魔力感知】で見つからないのはまた別の理由か。というか魔法的な衝撃ってなんだよ。
「『光魔珠・並列』!」
カナタが大量の光の珠を展開させる。『並列』は少ない魔力で数を増すことができる技術だ。あたり一帯が煌々と照らされ、まるで昼間のように明るくなる。
そして━━━見つけた。アイツだ。体長はニメートルほど。全身を覆うゴツゴツした岩のような鱗に真っ赤な双眸と舌を覗かせている。コモドドラゴンかよ。
姿を現したロックリザードは再び魔力を溜め、『地弾』を放つ。しかしそれらはカナタの大盾に遮られる。その間に俺とウォルフはロックリザードに接近する。
「『付与・火』!」
俺はポーチから大剣を取り出し、ウォルフは【付与魔法】を掛けた双剣を抜く。レイナとミヤビからの魔法支援も受け、ロックリザードに剣を振るう。
しかしその攻撃はロックリザードの鱗を多少削ぎ落とす程度だった。俺たちはロックリザードから離れる。
【鑑定】を使ったが、ロックリザードのHPは百も減っていない。
「なんやアイツ!硬すぎやろ!」
「これは大変だな…」
だが、ダメージを与える目処は立ってる。アイツは物理攻撃には強いが、打撃耐性が低い。ならば、打撃で攻撃するまでだ。
「【物質創造】」
俺は魔力をかき集め【万物創造】を発動させる。打撃武器ならバットでもいいが、せっかくなら良い武器がある。光とともに俺の手に現れたのは━━━ハンマー。それも柄だけで俺の身長と変わらない長さの大槌である。
握ったり振ったりしてみても特に問題はない。少々重いくらいだ。能力は攻撃上昇。とにかくロックリザードの鱗をぶち破るために創り上げた武器だ。
「俺が鱗を砕くからロックリザードを止めてくれ!」
四人にそう伝え、俺はロックリザードへ向かって走り出す。
「いきなりすぎんだろ…仕方ねぇ、“烈震脚”!」
カナタが強い踏み込みで地面を揺らし、ロックリザードの動きを止める。俺が殴るには短いが、レイナとミヤビには十分だ。
「『水魔縛』!」
「『冥府の鎖』!」
二人の魔法による拘束でロックリザードの動きは完全に停止する。仕上げにウォルフが尻尾の先を剣で突き刺し縫い止める。ここまでくればあとはもう殴るだけだ。
「うおぉぉぉおお!」
【身体強化】や『魔力強化』などできるステータス上昇をすべて発動し、遠心力まで加えた全力の一撃がロックリザードの頭を直撃する。
岩石のような鱗が砕け散り、飛散する。ロックリザードは声にもならない悲鳴を上げたあと、動かなくなった。
[条件を達成しました。ソースケ・ナグモがLv26からLv27へレベルアップしました。各種ステータスが上昇します]
[条件を達成しました。【大槌術Lv1】を獲得しました]
おっ、久しぶりのレベルアップ。今度またステータスも見てみるかな。とりあえず、ロックリザードは倒したってことだな。
「よし、そんじゃ剥ぎ取りすんぞー」
カナタが全員に号令を掛ける。剥ぎ取りとは魔物の解体をするときに使う言葉だそうだ。カナタ曰く「モ○ハンぽくて良い」とのこと。
俺が剥ぎ取りのために切れ味重視のナイフを取り出そうとすると、【魔力感知】が反応する。さっきと同じ反応が複数。
皆も気付いたようで、ウォルフはカナタの近くに駆け寄り、全員が自身の周囲を囲うように障壁魔法を展開する。
「【虚像創成】、【虚実反転】、『闇弾・並列』!」
音が鳴り止むと、いち早くミヤビが数を増やしまくった魔法をあたり一帯に放つ。そしてとある魔物が現れる。ロックリザードだ。
だが、問題はそこではない。
「…え?」
「うそやろ…」
そこには━━━十を超える数のロックリザードがいた。それもすべてが俺たちに殺意むき出しで。
「これは…ヤバいっすね…」
「冗談じゃねぇぞ…」
全員が動揺を口にする。だが、これは既に起きてしまった現実だ。いくら喚こうが嘆こうが変わりゃしねぇ。
俺たちは全員武器を構え直し、目に闘志を宿らせる。覚悟を決めた五人の冒険者とロックリザードの群れとの戦いが始まった。




