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第三十六話 全員集合

レッドブルを討伐した俺たちはギルドに戻っていた。カナタに散々怒鳴られたミヤビは半分抜け殻と化している。自業自得だな。俺も死にかけたし庇う気は無い。


受付の女性にレッドブルの討伐証明部位の角を渡し、依頼を達成した。報酬は一人当たり銀貨十八枚だった。とりあえずポーチに入れておく。


レイナとウォルフの試験はまだ終わっていないようなので暫し待つことになった。カナタにせがまれたのでゲームについて知っているだけ伝えた。あまり詳しくないがカナタは十分に満足したようだった。


体感では二十分は話したと思うが、二人はまだ帰ってこない。そこで未だ抜け殻状態のミヤビに、ユニークスキルについて聞いてみることにした。


「なぁミヤビ」


「んあ?なんすかソースケ君」


「ミヤビのユニークスキルはどんな能力なんだ?俺の推測じゃ虚像を生み出す能力としかわからなかったんだが…」


ミヤビはまだ意識が覚醒していないのか、頭を振ったり瞬きをしたりしてなんとか目を覚ます。そして、俺のほうを向き話し始める。


「アタシのユニークスキル【虚実混交】はお察しの通り虚像を生み出す能力っす。対象はアタシが使った魔法とアタシが触れた人物。生み出した虚像は実体は無くて一定時間で消えるっす」


「だが、ユニークスキルだろ?それくらいなら普通の魔法で出来るんじゃねぇか?」


「そこまでならそうっすね」


ミヤビは笑顔とドヤ顔が混ざったような表情で俺を見る。殴りたいこの笑顔。


「アタシのユニークスキルの真の能力は【虚実反転】。アタシが生み出した虚像を実体化させる能力っす。もっとも、かなり魔力使うし人の虚像には使えないしであんまり使い勝手はよくないっすけど」


ミヤビはそう言うが強力な能力だ。レッドブル討伐で使った『黒天流星』を増やしたら森が半壊した。魔法の手数を簡単に増やせるというのは相当強い。


「そういえばカナタもユニークスキル持ってたよな?」


その言葉にカナタが反応する。確か…【狷介孤高】だったか?ミヤビが増やした『黒天流星』を耐えるために使っていた。あの状況から察するにステータス上昇とかか?


カナタが少々嫌そうな顔をしてこちらを向く。少し妙だとは思ったが口には出さなかった。


「あぁ、持ってるよ。名前は【狷介孤高】。能力は自分と仲間への耐久ステータスの上昇。対象が少ないほど効果は上がる。そんだけだ」


やはりステータス上昇系か。しかし、耐久限定でその能力だけ…なんか…


「地味…だな」


「ブフッ」


俺がそう言うとカナタは顔を赤くしてミヤビは思いっきり噴き出した。どうやら気にしていたらしい。


「あぁ、そうだよ!『強化系』のユニークスキルは大体そんなもんなんだよ!」


ん?『強化系』?カナタは何気なく言ったつもりのようだが、俺には聞き覚えの無い言葉だ。


「『強化系』ってなんだ?ユニークスキルには種類があるのか?」


「あれ?ソースケ君知らないんすか?仕方ないっすねぇ…ここはアタシが教えましょう!」


俺が尋ねるとミヤビはどこからともなく黒縁のメガネを取り出して掛ける。なんか腹立つが教えてくれるならありがたい。あと、この世界にもメガネってあるのか。


「『強化系』ってのはソースケ君の言う通りユニークスキルの種類の一つっす。ユニークスキルには大きく分けて五つの種類があるんす」


ミヤビは手を突き出して指折り数え、説明する。ミヤビは異様に話が長いらしく、余計な説明も多いため俺は頭の中で整理しながら話を聞いた。


ユニークスキルは『強化系』『技能系』『魔法系』『特異系』『ユニーク魔法』の五つに分類されるそうだ。


『強化系』はステータス強化の能力を持つもの。カナタの【狷介孤高】も『強化系』に分類される。カナタ曰く「使い勝手は良いがいかんせん地味」とのこと。派手さは関係無いと思うが…。


『技能系』は技能に影響を与えるもの。スキル効果の増強や分岐、スキルの進化などが主だそうだ。他にはスキル以外の技術の補正などもあるらしい。


『魔法系』は魔法に影響を与えるもの。ミヤビの【虚実混交】もこれに属する。魔法と同時に使用することで真価を発揮するものが多く、例外として使える魔法が増えたりするそうだ。


『特異系』は今までの三つとはまったく違う能力を持つもの。その能力はそれぞれ違うが、その代わりに効果が少し他のユニークスキルより小さいことが多いらしい。


『ユニーク魔法』は特有の魔法を持つもの。俺の【万物創造】が該当する。本来ユニークスキルはあくまで補助であるが、『ユニーク魔法』は完全に独立しており、能力の幅も広く強力。おまけに希少性も高く『究極のユニークスキル』と称されることもあるらしい。


ベルフェルから隠したほうがいいと言われても半信半疑だったが、思ったよりもヤバいようだ。


他にも複数の能力を併せ持つ『複合系』や『大罪系』、『美徳系』と呼ばれるユニークスキルもあるそうだ。もっとも『大罪系』と『美徳系』は半分伝説みたいなものらしい。


だが、俺の【万物創造】も『ユニーク魔法』っていう伝説みたいなものだからなぁ…。実在してもおかしくない。


ミヤビに俺のユニークスキルの種類を聞かれたが、「よくわからない」とごまかした。二人には悪いがまだ明かせるほど信じたわけではない。


その後もミヤビとカナタに聞かれたことに答えたり日本での話題を話したりしていると、レイナとウォルフが受付の奥から出てきた。俺はすぐに二人のほうへ向かう。


「レイナ、ウォルフ、お疲れ。どうだった?」


答えのわかりきった質問を投げ掛ける俺に二人は笑って答える。


「なんとか合格しましたよ」


「合格したに決まっとるやろ」


良かった。合格するとは思っていたが、やはり合格したと伝えられると安心する。


「あの…ソースケさん。その二人はどなたですか?」


しばらく二人と試験の話をしていたが、レイナがミヤビとカナタに気付いたようで俺に尋ねる。伝えるのを忘れてたな。


「あぁ、この二人は…」


そこまで言って俺は言葉に詰まる。なんて言えばいいかな…。おおっぴらに転生者って言うわけにはいかないし、知り合いって言っても数時間前に出会ったわけだし…どうするかな…。


俺がそう考えているとミヤビが俺に近付く。━━━その顔に邪悪なまでの悪い笑みを浮かべながら。


「アタシはソースケ君の許嫁っすよ!ねぇ、ダーリン?」


ミヤビが俺に抱きついてそう言った。…はぁ?コイツなんつった?イイナズケ?…許嫁?そう理解した瞬間、俺の思考は停止する。何言ってんだコイツ!?


「はぁ!?」


「え、あ、う、ふぇ?」


「…あぁ、そういうことか」


俺は動揺と困惑のあまり絶叫、レイナは何がなんだか理解できておらず、ウォルフは何がわかったのかは知らないが納得したように頷いた。


俺は全力で思考を展開させる。まず第一にするべきはレイナとウォルフの誤解を解くこと。そのためにはミヤビを引き剥がす必要がある。そうするには…カナタ!


助け舟を求めてカナタに視線を向けると、そこにはぷるぷるしながら笑いを堪えるカナタがいた。あの野郎笑ってやがる。大事なときに役に立たねぇな!


そんななかウォルフがミヤビを引き剥がした。ウォルフ!よくやった!そして俺は気付いた。ウォルフの顔に笑みが浮かんでいることに。


「何言うとんねや!ソースケの婚約者はレイナやろうが!」


お前ぇえええ!何言ってんだぁあああ!?話をややこしくすんなぁあああ!レイナはようやく思考が追いついてきたのか顔を真っ赤にして口をパクパクさせている。


「何言ってんすか!ダーリンはアタシのっすよ!」


「お前こそ何言うとんねん!ソースケはレイナのや!」


「ブハッ!アッハッハッハッハ!」


ミヤビとウォルフは未だに訳のわからない言い合いを続けてるし、カナタは開き直って大爆笑している。何事かとギルドにいた冒険者たちも集まってきている。


「お前ら…いい加減にしろぉおおおお!!」


その後、ウォルフ、ミヤビ、カナタの三人をしばき回し、レイナの誤解を解いた頃には日が傾いていた。なんで今日一日だけでこんなに疲れなきゃいけねぇんだ…。

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