第三十四話 昇格試験
更新遅れてすみませんでした。
三人称視点も難しかったです。
誰か三人称視点を書くポイントとか知ってたら教えてください←(露骨なコメ稼ぎ)
レイナとウォルフは受付の女性の案内のもと、Eランク昇格試験の会場へと向かっていた。レイナの顔には緊張が見て取れる。片やウォルフは普段通りのお気楽な顔である。
ウォルフが特段緊張していないのは間違い無く合格できると思っているからである。慢心でも傲りでもなく確信にも似た自信。ソースケも二人の実力ならば合格できると信じて疑わなかった。
しかしレイナは違う。レイナは自分が強いとは欠片も思っていない。それどころか着々と実力をつけていくソースケとウォルフに対して小さな劣等感すら抱いていた。
Fランクに昇格したのもソースケの手柄のおこぼれを貰ったようなものだと感じている。そんななか挑む昇格試験は緊張するのも無理のない話だった。
少し歩くと開けた空間に出る。ゴブリンの集落にあったような武舞台に数人の昇格試験受験者と思われる冒険者。まるで中世ヨーロッパのコロシアムのようだった。
「まもなく試験監督がいらっしゃいますので、もうしばらくお待ちください」
案内していた受付の女性は二人にそう告げると来た道を戻っていった。その言葉通り、十分ほどで一人の男が現れる。その男はノロノロと歩き、冒険者たちの前に立った。
「どうも、試験監督のマルクスです…。ここのギルマスもしてるんで…よろしく…」
そう言ってマルクスと名乗った男はダラリと頭を下げる。髪はボサボサ、目は半開き、背中は本物の猫よりも曲がった猫背とまるで寝起きかと見紛うほどのけだるさである。
数人の冒険者はマルクスを怪訝な顔で見る。中には完全にマルクスを馬鹿にしたような目で見ている者もいた。マルクスはそれを気にする様子もなく、話を始めた。
「これからするのは受験者たちでのトーナメントです。僕が適当に組んだトーナメントで戦ってもらいます。それを見てEランク冒険者に見合った実力があるかを判断します。勝敗が合格に直結するわけじゃないので安心してください」
そこまで言ってマルクスはとあることに気が付いた。そして明らかに嫌そうな顔をする。
「あー…これトーナメント面倒だなぁ…どうしようかな…」
マルクスが面倒臭そうにした理由は冒険者の数である。今回の受験者は全部で十一人。トーナメントを組むにはシードなどの問題でかなり面倒なことになる。
マルクスは面倒臭いことを極端に嫌う人間でギルドでは有名だった。本来ならばギルドマスターや試験監督すらしないような性格で、なぜギルドマスターをしているのかよく話題になるほどである。
マルクスはどうするべきかと思案する。その脳内には不公平を無くすためではなく、いかに面倒事を回避するかしかない。そしてマルクスは一つの考えに行き着く。
「仕方ない、減らそう」
マルクスがそう呟くと冒険者たちに緊張が走る。そんな彼らをよそにマルクスは中央の武舞台に上がり、冒険者たちに向き直った。
「これからするのはふるいです。一人ずつ呼ぶので呼ばれたら上がってください。僕が召喚した魔物と戦ってもらいます。倒せなかった、または時間が掛かり過ぎた人はそこで不合格となります。それで三人落とします」
ふるいという言葉や落とす人数の宣言などに数人の冒険者が怖じ気づく。マルクスはそんなことはお構いなしに武舞台に魔物を召喚する。
武舞台に幾何学的な文字や模様が浮かび上がり、光が溢れ出す。光が収まるとそこには一頭の赤い牛がいた。
「この魔物はレッドブルというEランクの魔物です。Eランクの中では下位に分類される魔物ですから簡単に倒せます…というか、これくらい倒せなきゃ話になりません」
マルクスはそう言いながらレッドブルの頭を撫でる。マルクスは召喚士だった。希少な職業な上にマルクスはその中でも飛び抜けた才能を持っていた。
「それじゃあ、さっさといきましょう。まずは…そこの大剣使いから」
こうして昇格試験は始まった。Fランク冒険者にはEランクの魔物は荷が重いらしく、苦戦する者が続出し今まで受けた三人は全員が三分以上掛かるという結果となった。
「はい、じゃ次は…そこの双剣使いの少年」
「んあ?オレか。へいへい、今行くでー」
ウォルフは間の抜けた声を出しながら武舞台へと上がる。双剣を両手で弄びながらレッドブルの前へと立った。
「よし…よーい、始め」
マルクスが力無く開始の合図を出した次の瞬間にはもう戦闘は終了していた。レッドブルの首が落ち、ウォルフが双剣の血を払い鞘に納める。
「…え?」
「ヘぇ…」
大半の冒険者が驚愕の声を出すなか、マルクスだけは感嘆の溜め息をついていた。今ここで何が起こったのか理解できているのはレイナとウォルフ、そしてマルクスの三人のみであった。
今ウォルフはただ近付いて首を斬った。それだけではあるがその速度が異常で見えなかったのである。見えたのはマルクスただ一人。レッドブルですら死ぬまで気付くことはなかった。
ウォルフの敏捷のステータスはレベルとともに上がり続け今では四百を超えている。レッドブルの敏捷は精々二百ほどである。ステータスが十も違えば大きく変わるこの世界において二倍の差は大き過ぎた。
さらに【身体強化】と『魔力強化』で身体能力を上げ、ソースケに創ってもらった双剣についていた身体能力上昇でさらに上げる。最早ウォルフの速度は常人に見えるレベルではなくなっていた。
その後試験は問題無く進んだ。ウォルフに疑いの目を向ける者もいたが、根拠無き疑いでは責めることもできず、結局彼らが何かしてくることはなかった。
そしてレイナの番が回ってきた。レイナは緊張を隠し切れない表情で武舞台に上がる。マルクスは気付いてないのか気にしてないのかそのまま戦闘を開始させた。
「『水魔壁』!」
突進してくるレッドブルをレイナは防御魔法で受け止める。少し壁が軋んだもののレッドブルの勢いは消えた。
「『水魔槍』!」
レイナはその隙に『水魔壁』ごとレッドブルを貫く。レッドブルはそのまま動かなくなった。他の冒険者たちは唖然としていた。そんな彼らをレイナは少し不思議に思いながら武舞台を降りた。
冒険者が唖然とした理由はその威力である。本来ならば『水魔槍』には『水魔壁』ごとレッドブルを貫く威力は無い。上級者が多量の魔力を込めれば話は別だが、そうするくらいならば他の上級魔法を使ったほうがいい。
もちろんレイナも魔法のステータスこそ高いが、そんなことはできない。ならばなぜレッドブルを倒せたか。
レイナは『水魔槍』を使う際に『水魔壁』の魔力を利用したのだ。そうすることで『水魔槍』の威力を高めつつ、『水魔壁』の強度を弱めた。とはいえそう簡単にできることではない。
一度魔法で使用すると残るのは魔力ではなく、魔法の効果という扱いになる。しかし、一部の障壁魔法と呼ばれる魔法は魔力そのものが壁となっている。そのため魔力として扱うことが理論上可能であるが、とてつもなく高度な魔力操作能力が必要となる。
当の本人であるレイナはそれを無意識に行っていた。極めれば相手の魔力ですら扱える禁忌とも言える芸当を無意識ですることがレイナの異常性を物語っていた。
しかし、それに気付く者はおらずレイナはFランクでは上位に位置する魔法使いとして扱われた。それが吉と出るか凶と出るかは誰にもわからなかった。
全員の試験が終わると合格者が発表され、見事レイナとウォルフはトーナメントへと駒を進めることとなった。二人はより一層気合いを入れる。その隣で他の冒険者たちが二人とは当たりたくないと願っていたことに気付くことはなかった。
一応言っておくとレイナは現時点では飛び抜けて強いわけではないです。ただし才能がオバケです。




