第三十二話 転生者達の戦闘
俺たちが依頼のためにやって来たのは森。『魔の森』よりも魔力反応は小さいが木が生い茂っている。障害物だらけで大剣や槍は使いづらく、今手に持っているのはなんの変哲も無い短剣だ。
ミヤビは身の丈ほどの長さの杖、カナタは鎧と同じく真っ黒の大盾と槍を担いでいた。それぞれランクはCランクだった。
これから討伐するのはEランクのレッドブルという魔物だ。カナタの話ではその名の通り赤い牛だそうだ。前々から思っていたんだが、魔物のネーミングセンスはどうなってんだ。絶対神が適当に名付けただろ。
「なぁ、ソースケ」
「ん?なんだ?」
突然カナタに声を掛けられる。転生者ということもあってか平然と話せるようになった。
「お前はどうやって戦うんだ?ステータスを見ても魔法や武器術系スキルが色々あって想像つかなくてな」
俺の戦闘スタイルか…。特に決まってるわけじゃないんだよな。とりあえずそのまま伝えるか。
「特別決めてはないな。魔法も使うし、いろんな武器も使う。そのときに応じて変えていくスタイルだ。まぁ、基本は前衛で遊撃だな」
「そうか。俺は見ての通り前衛タンク役、ミヤビは後衛魔法使いだ。といってもミヤビは攻撃ぐらいしかできねぇがな」
「失礼っすね!魔法支援と防御くらいならできるっす!回復魔法は無理っすけど…」
「まぁ、レッドブルは俺たちにゃ傷一つ付けられねぇし、負けることは無いだろ」
俺たちはそんな会話をしながら森の中を散策していた。そんななか俺の【魔力感知】が反応を示す。ミヤビとカナタも気付いたようで戦闘の準備を整えた。
「さて…こっちか?」
カナタを先頭にゆっくりと進む。カナタが止まったかと思うと目の前に数匹の赤い牛が現れる。アレがレッドブルか。レッドブルは仕留めたらしい小さな魔物を貪っていた。牛が死体に群がる光景はなかなかショッキングだった。
俺はレッドブルの一体に【鑑定】を発動させる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
名前:なし
種族:レッドブル
職業:なし
ランク:E
Lv:11
HP:215/215
MP:124/124
攻撃:176
耐久:168
敏捷:249
持久:234
器用:52
幸運:42
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
安定のゴミステータス。さて、とりあえず…ぶった斬るか。するとカナタが指示を出した。
「俺が攻撃を受ける。ミヤビとソースケは止まった隙に一斉に攻撃しろ」
「了解」
「ほーい」
俺とミヤビが了解を示し、俺は音を出さないように離れ俺自身に【偽装】を掛ける。それを確認するとカナタは大盾をわざと大きな音を出しながら地面に下ろす。
「『付与・光』」
カナタは大盾を【付与魔法】で強化する。レッドブルはそれに気付くとすべてが大盾に向かって突進する。八体いたレッドブルの突進を受けてもカナタが後退することはなかった。
「“烈震脚”!」
カナタは攻撃をすべて受け切ると、一つ大きな踏み込みをした。その瞬間地面が揺れる。“烈震脚”は強烈な踏み込みによる振動で相手を少しの間行動不能にする技らしい。
その隙に俺とミヤビがレッドブルに攻撃をする。俺は短剣を二本持ちにしてレッドブルを横から切り裂く。動きはウォルフを参考にした。
[条件を達成しました。【双剣術Lv1】を獲得しました]
よし、スキル獲得。俺は一瞬の接近で三体のレッドブルを戦闘不能に追い込んだ。
「よーし、いくっすよ!『死者の手』!」
ミヤビが厨ニ感たっぷりな魔法を発動させると、地面から滲み出た手の形をした闇が二体のレッドブルを掴み、握り潰した。肉片が飛び散りとてつもなくグロい。
「まだまだっす!『冥王の牙』!」
またもや厨ニ臭い魔法を使うミヤビ。地面が大きな口に変化し、二体のレッドブルを貪り喰う。闇属性魔法はグロいのしかないのか。
「モオォォォォォ!」
残っていた一体のレッドブルが恐れをなしたのか、全速力で逃亡する。俺の魔法じゃ決定力に欠けるし、ミヤビに頼もうとしたそのとき、
「ソースケ君、アイツ頼んだっす!アタシとカナタじゃ無理っす!」
とミヤビが言う。おいおいマジかよ。理由を聞くのは後回しにして俺は逃げ出したレッドブルのほうを向く。ポーチから鉄の鎖を取り出し、短剣と鎖に【創造改変】を使う。
眩い光とともに鎖の先端に短剣が融合する。短剣には釣り針のような返しをつけ、レッドブルめがけて投擲する。
「モオ゛ォ!?」
短剣は見事にレッドブルに突き刺さり、レッドブルが悲鳴にも似た鳴き声を上げる。俺は鎖を引きレッドブルを力づくで引き寄せ、鎖で首を締める。ゴキッという鈍い音を最後にレッドブルは動かなくなった。
「ソースケ君、やることがエグいっすねぇ…」
「アンタもかなりエグい魔法使ってただろ」
引きつった笑みを浮かべて言うミヤビに俺はツッコミを返す。むしろ俺のほうがマシなレベルだったぞ。
「つーか、なんで俺がコイツを倒さなきゃいけなかったんだよ」
俺が気になったのはそこだ。魔法を使えばこの程度簡単に倒せただろうに。
「あー、実は闇属性魔法ってかなり遅いんすよ。近くの魔物に発動させるのが一番効果的なんす。おまけにカナタはろくに魔法使えないし、アタシ達は敏捷低いしでどうしようもなかったんすよ」
ミヤビは俺の質問にそう返した。魔法由来の弱点か。もしかして他の魔法にもそんな特徴があるのか?
「話してるとこ悪いがちょっといいか?」
俺とミヤビが話してるとカナタが割り込んだ。
「何なんすか?こっちは男女の蜜月を楽しんでたんすけど」
「別にそんなことはない。なんだ?」
「レッドブル、逃げる前に一際デカい鳴き声出したの覚えてるか?」
カナタにそう言われ、俺は記憶を辿る。あぁ、確かに出してたな。
「覚えてるが…アレがどうしたんだ?」
「実はアレは冒険者界隈では有名でな。レッドブルは死に瀕するとデカい鳴き声で周りの仲間を呼び寄せるんだ。どういうことかわかるか?」
どういうこともなにも、そのままの意味だろう。つまり、アイツは今仲間を呼んだわけで…って、あれ?もしかして…かなりヤバい?
「そういうことだ」
俺の心を読んだようにカナタは肯定する。ミヤビもわかったようで見るからに嫌そうな顔をしていた。
ふと【魔力感知】に意識を向けるとそこにはおびただしい数の魔力反応があった。それらはここに向かっている。どうやら地獄の第二ラウンドが始まるようだ。




