第二十八話 新たな街メイナード
ノーダ村から出発して五日、俺たちは目的地へと辿り着いた。ここがメイナードか…。エルガーにあった壁よりは小さいものの、しっかりした外壁があった。この世界の街には外壁が標準装備のようだ。同じような門もある。
俺たちは門の前にいた衛兵に冒険者カードを見せ、通行許可証を貰う。ここの衛兵は淡々と仕事をこなしている。エルガーの衛兵のおっさんことラグルスとは大違いだ。
中に入ると街はにぎやかな活気で包まれていた。日本のザワザワした喧騒とは違うほのぼのとした雰囲気だ。祭りの空気感を彷彿とさせる。
「騒がしいとこやなぁ…なかなか楽しそうや」
「ウォルフ、遊ぶのは宿とギルド行ってからだ。とりあえずレイナ、この街の説明を頼む」
「はい。えーっと、メイナードは商業で発展した街です。人の行き来が多く、国境に近いことからそうなったそうです。お店の種類や品揃えも豊富で、特に中央通りは通称『露店通り』とも呼ばれ、有名だそうです」
『露店通り』か…何があるか気になるし、そのうち行ってみるかな。だが、まずは宿と冒険者ギルドだ。
「まずは…宿屋からだな。さて、どうするか…」
「あたりの人に聞いてみましょうか。行って来ますね」
「悪ぃ、任せた」
宿屋をとるため、あたりの人に聞き込みをすることになった。もちろん、俺以外の二人がだ。コミュ障にそんなことはできない。
「ソースケに必要なんはコミュ力やったとはなぁ…」
「うるせぇ。人には得意不得意ってもんがあんだよ」
ぼやくウォルフを送り出し、俺はその場で待機する。…街なかで一人で待機するのも肩身が狭いな。あぁ、レイナ、ウォルフ、早く戻ってきてくれ。じゃないと俺の精神が持たない。
その後俺たちは評判の良い宿屋をとることに成功した。一人一泊で銀貨二枚とこの世界の宿にしては少々割高だが部屋は悪くない。寝るだけだから特に不自由はしないだろう。
そして、俺たちは冒険者ギルドへと向かった。冒険者ギルドはエルガーのギルドより一回りほど大きい。だが、酒場の割合が多く、酒の匂いはエルガーのギルドより酷かった。鼻栓買おうかな…。
受付の女性に頼んでカードの表記をメイナード支部に変更してもらう。これでこの街でしなければならないことは終わらせた。
これから何をするか…街を見て回るのもいいし、まだ日も高いからギルドの依頼を受けるのもいい。レイナとウォルフに聞くか。
「これでもうすることは無いが…これからどうしたい?」
「そうですね…特にしたいこととかは無いですかね…うーん…」
「オレは暇やし依頼受けるわ。どんな魔物がおるか見てみたいしな」
「そうか…じゃあ自由行動にするか。日が暮れたら宿屋に集合ってことで」
「わかりました」
「そんじゃオレは先行くでー」
こうしてウォルフは依頼の貼ってあるスペースへと向かい、俺とレイナは外に出て違う道を歩き出し、それぞれの自由時間を過ごすことになった。
◇ ◇ ◇
俺は冒険者ギルドを出てから街をフラフラと歩いていた。自由行動を提案したものの、行くあても無く街を散策していた。このまま時間を潰すのは非常にもったいない。
何をしようかと考えた末に二つの候補が上がった。『本屋』と『鍛冶屋』だ。理由はどちらも【万物創造】の参考にするため。
本屋では魔法について調べたい。というのも俺は魔法についてあまり詳しくない。レイナに聞いたのはあくまで基礎だ。具体的なイメージが無いため【魔法創造】が使えない。
イメージしやすくするためには可視化すればいい。例えば設計図などがあれば一気にわかりやすくなる。では、魔法の設計図とは何か。それは魔法陣だ。
レイナに聞いた話では魔法陣には魔法の要素が組み込まれており、それに魔力を流すことで魔法として完成するのだという。つまり、魔法陣が創れれば魔法が創れるということだ。
レイナも魔法陣はよくは知らないらしく、書くことはできないそうだ。だから本屋とか図書館にそういう本があればと思ったが…考えてみたらこの世界まず紙が少ないんだよな。じゃあ本も無いだろう。これは後回しだ。
鍛冶屋では金属について見たい。俺の武器はほとんどが総鉄製だ。なぜなら俺の脳内でしっかりイメージできるのが鉄しかないから。だが、世界には鉄より硬い金属はたくさんある。
前に創ったホブゴブリンの疾風の槍とかがそうだ。アレは鉄より軽いのに鉄より硬い。何か別の金属を使っているのだろう。金属の詳細がわかれば再現できる。だから鍛冶屋に行きたいのだ。
そういう訳で鍛冶屋を探しながら歩いているが、どの店が鍛冶屋かもわからない。半ば諦めていたそのときとある一つの店が目に入った。
一見すると他の店と変わらないように見えるが【魔力感知】を発動させていたため、人以外の魔力が所狭しと並んでいたのがわかった。アレは武器の魔力だろう。上質な武器には魔力が込められている。
それにムワッとする熱気を感じる。鍛冶屋は火を使う。もしかしたらと思い、店に入ろうとしたそのとき、
「ふざけんなテメェ!」
店から怒号が響き、店の入口から人が飛んできた。俺は状況が理解できずフリーズする。そんな俺に気付かず、吹っ飛んできた男はそそくさと逃げ、もう一人の男が現れる。
「チッ…逃げ足の早い連中だ…って、テメェは誰だ?もしかしてあのバカの仲間かなんかか?」
現れた男は身長ニメートルはありそうな筋骨隆々な大男で、おまけに全身傷だらけという任侠映画に出てきそうな見た目をしている。さらになぜか機嫌が最悪。
「なんとか言えや…おぉ?」
何も言わない、いや、言えない俺にさらに大男は迫る。なんか…なんか物凄い現場に居合わせてしまった。




