第二十二話 騒動の真相
ホブゴブリンのセリフが片仮名なので読みづらいかもしれません。あらかじめご了承ください。
「え…!?」
「なんや、コイツ…!」
レイナとウォルフも動揺する。その隙を突かれないかと思ったが、ゴブリンたちが襲ってくる様子はない。事を荒だてる気はないということか…?
「…何なんだ、お前は…」
ホブゴブリンは俺の問いに首を傾げながらも、返答する。
「フム…ドウイウ問イカハワカラヌガ…ワレハホブゴブリンダ。名ハ無イ。コノ集落ノ取リマトメヲシテイル。人間デ言ウトコロノ村長トイッタ地位ダロウカ」
普通に返事しやがった…。良くは知らないがレイナとウォルフの反応から普通のホブゴブリンではないのは確かだ。
「なぜホブゴブリンが人間の言葉を話せる?俺たちやゴブリンたちを止めたのはなぜだ?」
「…ソレハ話スト長クナルナ…。ソウダ、良ケレバワレノ家ニ来ヌカ?ロクナモテナシハデキンガ、歓迎ハスルゾ」
ホブゴブリンは俺たちを家に招き、歓迎すると言う。…話せば話すほどコイツがわからなくなってくる。
どうすべきか…。話し合いで解決するならそっちがいいに決まってる。だが、嘘だった場合、敵のど真ん中で孤立することになる。
ゴブリンなら何体いようが関係ないが、アイツは別だ。一体で俺たち三人を相手に出来るステータスだ。勝てないことはないが…
「ソースケ、ここはしたがってええと思うで」
ウォルフが俺だけに聞こえる声で耳打ちする。
「なんでだ?」
「カンや」
「カンか」
普通ならば何言ってんだと言うところだが…ウォルフのカンはよく当たる。ここはウォルフを信じるとしよう。
「わかった。案内してくれ」
「ソウカ、ナラツイテキテクレ」
ホブゴブリンは安堵したような表情で、俺たちを先導する。何が目的だ…?俺たちは案内されながらも、警戒を解くことはなかった。
◇ ◇ ◇
「ツイタゾ。ココダ」
ホブゴブリンが指した場所には立派な建物があった。昨日泊めてもらった村長の家と遜色ない大きさとしっかりした造り。とてもゴブリンが作ったとは思えない。
俺たちが中に入ると、数体のゴブリンがいた。ホブゴブリンはそいつらを外に出し、俺たちに座るよう促す。
「スマンナ。ココハワレノ家ダガ、集会所デモアル。子ドモタチガ遊ビニ来ルコトモ茶飯事デナ」
ホブゴブリンは俺たちにそう告げるが、問題はそこではない。今ホブゴブリンがゴブリンたちと話したのはゴブリンの言葉(?)だった。
コイツは元々はゴブリンで、何らかの理由で人間の言葉を習得したと考えるのが自然だが…ゴブリンに言葉を教えるようなやつはいないし、自然に覚えたとは考えづらい。いったいなんで…
「ウーム、貴殿ノ質問ハナンダッタカ…アァ、ワレガ話セル理由ト、戦イヲ止メタ理由ダッタナ。デハ、一ツズツ話シテイクトシヨウ」
ホブゴブリンはそう言って、俺が投げかけた質問に答えていった。
「マズ、ワレガ話セル理由ダガ…コレハワレモワカラン。確カナノハ、産マレタトキカラコノヨウナ知識ガアッタトイウコトダケダ」
一つ目の質問の答えは答えとも言えないものだった。
「言葉以外の知識はあるのか?」
「アァ、言葉以外ニモ、人間ノ一般常識程度ノ知識ナラ持ッテイル」
試しにレイナやウォルフとホブゴブリンの常識を擦り合わせた結果、ほとんどが正しかった。どうやら本当のようだ。
「二ツ目ノ戦イヲ止メタ理由ハ、ワレニハ人間ト敵対スル気ハ無イカラダ」
ん?どういうことだ?
「人間を襲うつもりは無いということか?」
「ソノ通リダ」
おかしい。俺たちは村の住人が襲われていると言われたから、討伐に来た。なのに、人間と敵対する気は無い?意見と行動が合ってない。
「俺たちは近くの村の住人が襲われているというから来たんだが?」
「近クノ村ノ住人…?アァ、ノーダ村ノ住人ノコトカ?ゴブリンタチノ話デハ、木ヲ切リニ行ッタラ、ワレワレヲ見タ瞬間、逃ゲ出シタト聞イテイルガ?」
「…はぁ?お前たちからは手を出してはいないのか?」
「ウム、ワレガ『人間ヲ襲ウナ』トヨク言イ聞カセテイル」
確かに村長は死者は出ていないと言っていたが…そんなオチかよ…!俺たちの時間を返せ!レイナとウォルフも驚愕して…というか、半分呆れている。
だがまぁ、しょうがないところもある。ゴブリンが友好的な生き物とは思えないからな。それをホブゴブリンに伝えると
「フム、ナラバコレカラワレワレハ、人間タチトハ反対側の木ヲ切ルトシヨウ。ゴブリンタチニハ、ソチラニハ向カワセナイヨウニスル。ソレナラバヨイダロウ?」
「お前たちはそれでいいのか?」
「構ワヌ。コノ問題ノ原因ノ一端ハワレワレニアルノデナ。ソレニ、恐ロシイ存在ガ近クニイタラ、追イ払イタクナル気持チモワカル」
確かにゴブリンは魔物の中では弱小種族だ。命を狙われたりする経験やその恐ろしさはよく理解出来るのだろう。
その後も話し合いを続け、ゴブリンたちは森の奥をメインに生活することと、俺たちはゴブリンを殲滅したと報告することになった。
レイナ曰く正直に話しても信じられないだろうし、そっちのほうが村の住人を安心させられるとのこと。ならばそっちのほうがいいだろう。
「よし、これでいいだろう。それじゃあ、あとは俺たちが村に戻ってこれを伝えれば…」
「アァ、イヤ、少シ待ッテクレヌカ」
出発しようとした俺たちをホブゴブリンが引き止める。
「なんだ?まだ何かあったか?」
「イヤ、ソウイウワケデハナイノダガ…」
ホブゴブリンは何か言おうとしているようだが、言いづらいのか、口をモゴモゴさせている。
「なんだ?何かあるならはっきり言ってくれ」
「…ナラバ、言ワセテモラオウ。貴殿ハ強イカ?」
なんだ、その質問。よくわからないが、とりあえず返答する。
「まぁ…この三人の中では一番強いが…」
その言葉を聞くとホブゴブリンは目を輝かせた。なんだろう、嫌な予感がする。最近…っていうか、昨日もこんなことあった気がする。
「ソウカ…ナラバ手合ワセヲシテモラエナイカ?」
「はぁ?」
何言ってんだコイツ。俺がそう言う前にホブゴブリンは話を始めた。
「知ッテイルカモシレンガ、ゴブリンハ狩猟種族ダ。故ニ戦イヲ好厶者モ多イ。ワレモソレハ変ワラン。強イ者ヲ見ルト特ニナ」
ホブゴブリンの目は爛々と血走ったように輝いている。なるほど、コイツは戦闘狂なのか。又の名をバトルジャンキーだ。ってそんなことを考えている場合じゃねぇ。
わかりきっているが、コイツはかなり強い。俺たちが勝ち目があるのは、三対一の場合だ。一対一では負ける可能性すらある。出来ることなら戦いたくない。
俺は助けを求めて、レイナとウォルフを見る。しかし、レイナは一瞬で目を逸らし、ウォルフは我関せずと言わんばかりに立っているだけである。
俺に味方はいなかった。どうやら、道は決まっていたようである。腹をくくるとしよう。
「…わかった、戦うよ。あまり時間はかけられないぞ」
「ワカッタ。ナラバ早クシヨウ」
ホブゴブリンは少年のような笑みで喜んでいる。やるなら、全力でやる。それが俺の信条だ。
こうして俺はホブゴブリンとの戦いの覚悟を決め、戦いの後にレイナとウォルフをしばくことを決意した。いや、やっぱりレイナはやめよう。ウォルフを二人分しばこう。




