第二十一話 未知との遭遇
俺たちは村人に先導され、村長の家に向かっていた。案内されている途中に村の様子を見ていたが、荒らされたりした様子は無い。村での出来事ではないのか?
「こちらです」
村人の声で到着したことに気付く。レイナは案内した村人にお礼を言っていた。言う必要あるか?こっちが頼まれた側なんだぞ?
少しの間待っていると、家の中から一人の男が出てきた。年齢は恐らく四十代後半といったところだろうか。村長にしては思ったより若いな。
「皆様、来ていただき誠にありがとうございます。どうぞ、中へお入りください」
俺たちは村長と思われる男に招かれ、家の中へ入った。家は木造で屋根は藁のような植物で作っているようで、エルガーの建物とは比較にならないほどボロかった。小さな村ではこれが普通なのだろう。
座るよう言われたが椅子も無いので、俺たちは床に座わる。村長らしき男は俺たちの前に座り、人数分の茶を出した。そして、男は話を始めた。
「申し遅れました。私はこのノーダ村で村長をしておりますハルク・ノーダと申します。皆様にお願いしたいことがあり、来ていただいた次第でございます」
やはりこの男は村長のようだ。そして、俺たちに頼み事があると。これも予想通りだ。面倒なことになるのは確定したな。
俺はあまり口が上手い方ではないので、交渉はレイナに任せている。レイナは男に問いかける。
「確かに私達は冒険者です。しかし、緊急ではない限り、独断で依頼を受けるのは禁止されています。それを踏まえてどのようなご用件でしょうか?」
これは事実だ。俺たちは勝手に魔物を狩ることは許されていない。魔物とはいえ、そこで生態系を築いている生物だ。あまり狩りすぎると生態系を破壊する可能性があるため、ギルドの依頼以外での討伐は許可されていない。
例外はある。緊急の依頼や正当防衛などの場合だ。さっきのホーンシープ討伐は後者に当たる。ホーンシープから攻撃してきたため問題無い。
村長はそれを聞いても顔色一つ変えず、話を進めた。
「それは承知しております。しかし、ことは一刻を争うのです」
村長の顔に焦りのような表情がにじむ。どうやら本当のようだ。
「我々の村では木こりや狩猟で生計を立てる者が多いのですが、それを行っている者が次々と魔物に襲われているのです。それにその魔物はこのあたりには生息しない魔物でして…」
「その魔物とは?」
「ゴブリンです。ゴブリンはどこにでも住み着くようですが、私達が行く森には一体もいませんでした。私はこの村の村長を十年ほどしていますが、こんなことは初めてです」
ゴブリンか。またアイツか。もうアイツの顔は見飽きたんだよ。だが、この辺にはいなかった魔物がいるか…。それは問題だ。特にこの村ではかなり深刻な問題だろう。
「幸いまだ死者は出ておりませんが、それも時間の問題です。一刻も早い討伐をお願いしたいのです。もちろん、お礼はさせていただきます」
「わかりました。ゴブリン討伐お引き受けいたします」
おいおいおいおい、レイナさんや。有無も言わさず即決かい?せめて俺たちにも相談しよう?そんな俺を差し置いてレイナとウォルフは気合に満ち溢れている。そんな気はしてたけどよ…。
まぁ、そこは置いといてこの条件ならギルドの規定には反さない。受けても問題無いだろう。ゴブリンは繁殖力や攻撃性が高く、人間に害しか与えないため、『見つけたら即殺せ』というのはギルドでは良く言われている。
「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」
村長はレイナの言葉に感極まったようで、若干涙目だ。おっさんの泣き顔は需要ねぇぞ。
その後、俺たちは村長の家に泊めてもらった。代金のかわりに道中で狩ったホーンシープを渡したら、かなり喜んでいた。ゴブリンの影響でまともに狩猟ができなかったらしく、久しぶりの獲物だそうだ。
まぁ、喜んでくれるなら俺も悪い気はしない。ゴブリンは経験値にはならないが、討伐にいそしむとしよう。
◇ ◇ ◇
次の日の朝早くに俺たちはゴブリン狩りに出掛けた。倒すならば早いほうがいい。相手はゴブリンだし、時間は掛からない。さっさと終わらせよう。
近くの森は歩いて数分のところにあった。確かにここでは、いつゴブリンが村を襲撃に来てもおかしくない。早いほうがいいという考えは正しかったな。
「探索方法は登録試験のときと同じでいいな?」
「それが一番早いやろ。ちゅうわけで、探索任せた」
「任された」
俺は常時発動している【魔力感知】の範囲を最大まで広げ、集中する。ゴブリンの反応を見つけようとしたが…
「ん…?」
「なんや?どないした?」
ウォルフが尋ねるが、俺には届かない。俺は今困惑している。なぜなら━━━ありえない数のゴブリンの反応があったからだ。
軽く二百はいる。下手したら三百を超えるかもしれない。それを二人に伝えると、
「ええ…」
「ウゲぇ…」
明らかに顔をしかめていた。気持ちはわかる。非常に良くわかる。だが、それの討伐が俺たちの役目だ。二人もそれをわかっている。俺は場所を伝え、三人でゴブリンの集落へ向かった。
◇ ◇ ◇
ゴブリンの集落は登録試験のときに見たやつより、三倍はデカかった。おまけに家の造りがしっかりしていて、ノーダ村の家と遜色ないレベルだ。
何かがおかしい。声には出さないものの、レイナとウォルフもそれはわかっていた。普段発生しない場所にいることも合わせて、何かしらの異変が起きているのは間違い無い。
ひとまず、俺たちはゴブリンたちへ奇襲を仕掛ける。強さは『魔の森』のゴブリンとあまり変わらないため、順調に進んでいた。
このままいける。そう思った瞬間、奥から明らかにゴブリンではない魔物が現れる。体長は百八十センチほど。人間に近い体つきと顔立ちではあるが、緑色の肌から魔物であることがわかる。
なんだコイツは。レイナやウォルフも気付いたようで、警戒している。俺は早速【鑑定】を発動させる。
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名前:なし
種族:ホブゴブリン
職業:戦士
ランク:D
Lv:31
HP:537/537
MP:258/258
攻撃:384
耐久:342
敏捷:462
持久:371
器用:519
魔法:349
幸運:73
‹スキル›
【風属性魔法Lv4】【付与魔法Lv4】【魔力感知Lv4】
【魔力操作Lv5】【身体強化Lv5】【槍術Lv6】
【格闘術Lv5】
‹耐性スキル›
【打撃耐性Lv5】【斬撃耐性Lv4】【刺突耐性Lv4】
【風属性耐性Lv4】
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ゴブリンとは比べ物にならないどころか、俺に匹敵するクラスのステータス。ホブゴブリン…ゴブリンの進化種族か何かか?そんなことを考えていると…
「━━━モウ止メテクレヌカ、強キ者ヨ」
「!?」
そう言われた。今のは片言ではあるが、明らかに人間の言葉だった。




