第二十話 トラブルの予感
俺たちは次の目的地に向けて歩いていた。次の目的地はノーダ村という村だ。正確にはメイナードという街に向かっている。
どういうことかというと、エルガーから一番近い街がメイナードであるためそこに向かうつもりだった。しかし、エルガーは聖アルトリア王国の最果てであり、メイナードまでは一週間以上は掛かるという。
だから、いくつかの村を経由して行くことになり、一番近い村がノーダ村なのだそうだ。
何を話すでもなく、俺たちが歩いていると【魔力感知】に魔物の反応があった。【魔力感知】は索敵に長けた能力なので、奇襲防止とレベル上げのため常時発動させている。
「レイナ、ウォルフ、近くに魔物がいる」
俺はレイナとウォルフに注意を促す。二人とも気付いていたようで動揺することも無く、戦闘の準備を整えた。
少し歩くと前に三体の魔物の姿があった。見た目は羊のようだが、角が普通の羊よりも大きくかなり鋭くなっている。おまけに丸まっておらず、前に突き出しているため、迫力がある。もっとも地竜の後だからか特に恐怖は無い。
とりあえず、俺は羊(仮)に【鑑定】を発動させる。
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名前:なし
種族:ホーンシープ
職業:なし
ランク:F
Lv:12
HP:94/94
MP:56/56
攻撃:83
耐久:154
敏捷:162
持久:59
器用:67
幸運:48
‹耐性スキル›
【打撃耐性Lv4】
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うん、弱くはない。弱くはないが…って感じだな。俺なら簡単に倒せるレベルだし、レイナやウォルフでも一体なら問題無く倒せるだろう。
ホーンシープ…訳したら角羊か。そのまんまだな。名付けたやつのネーミングセンスを疑うな。名付けたの誰だ?神か?なら納得だな。
「三体か…一人一体でええな?」
「あぁ」
「大丈夫です」
ウォルフがそれぞれ単独での討伐を提案し、俺とレイナが同意を示す。その瞬間、俺たちは散開する。固まって戦うと戦いづらいからだ。
俺は【身体強化】と【思考加速】を発動させ、ポーチから大剣を取り出す。それを終えたところで、ホーンシープの一体が俺に向かって突進してくる。
ステータスやホーンシープの角から攻撃方法はなんとなく予想はついていた。俺は大剣を大上段に構え、ホーンシープの眉間めがけて振り下ろす。ホーンシープは縦から真っ二つになった。
うむ、グロい。これからは倒す方法も考えることにしよう。思ったより早く終わったので、俺はレイナとウォルフの戦いを見ることにした。
ウォルフはホーンシープの突進を躱し、脚を斬りつけている。どうやら逃げられないように立ち回っているようだ。ホーンシープは脚を斬られ続けて攻撃も逃走もできない様子だった。ウォルフはホーンシープがよろけた隙を見逃さず、最高速度で接近し、首を刎ねる。
ウォルフの戦闘スタイルは高い機動力で敵を翻弄し、双剣で切り裂くというものだ。敏捷のステータスはどんどんと上がり、未だに俺より高い。
レイナは手数重視の魔法を撃ち続け、ホーンシープを徐々に弱らせていった。レイナの敏捷のステータスはホーンシープより低いが、倒されない理由は…
「『水魔壁』!」
この魔法だ。『水魔壁』は水の魔力で壁を作り、敵の攻撃を阻む魔法だ。レイナは魔法のステータスが高く、ホーンシープの突進でも『水魔壁』が揺らぐことは無い。
「『水魔槍』!」
レイナはホーンシープが立ち止まった瞬間に今使える最高火力の魔法を撃ち込む。大きな槍の形をした水がホーンシープを貫き、絶命させる。
二人はかなり強くなっていた。俺がギルドの医務室で寝ていたときに鍛えていたのだろうか。
その後、ホーンシープをポーチにねじ込み、その場を後にした。ホーンシープは毛皮、肉、角など利用できる部分が多く、村に泊めてもらうときの代金のかわりにするそうだ。
だが、ホーンシープは体長一メートルほどで当然ポーチには入らない。容量ではなく、入れる口の大きさの問題だ。
なので、解体して入れた。解体したのはウォルフだ。故郷のアニマでしたことがあるらしく、めちゃくちゃ手慣れていた。
俺たちは村に向かって再び歩き出した。
◇ ◇ ◇
しばらく歩くと、前に数軒の家が見えた。アレがノーダ村だろう。到着した頃にはもう夕方になっていた。早く休みたい。そんなことを考えていると…
「お、おい!もしかして冒険者様じゃないか!?」
「ほ、本当だ!早く村長に伝えろ!急げ!」
という声が聞こえてきた。なんだろう、嫌な予感がする。なにかわからないが、面倒事の気配がする。
「ぼ、冒険者様!ようこそ、いらっしゃいました!早速で申し訳ありませんが、村長の家に向かっていただけませんか?何卒よろしくお願いいたします!」
先程、話していた男の一人がこちらへやって来た。村長の家に…?なぜだ?何か問題でも起こっているのだろうか。
「レイナ、ウォルフ、どうする?」
「よくわかりませんが…行ったほうが良さそうなのは間違い無いですね…」
「せやなぁ…ここで断ったらさらに面倒なことになりそうやしな…」
「そうだな…そうするとしよう」
こうして俺たちは村長の家に向かうことにした。どうやらまた面倒なことになりそうだ。




