第十九話 いざ次の街へ
その後、他の目撃者をどうするかという問題が出たため話し合った結果、ミュールがギルマス権限で黙らせることが決定した。一応俺の魔法の効果だと説明するらしいが権力で無理矢理黙らせることに変わりはない。
褒賞の話は、俺をBランクに昇格させるつもりだったらしいが、そんな大層な地位につく気はないので辞退させてもらった。
しかし、ギルドとしても俺を昇格させないと面倒なことになる恐れがあるらしいので、レイナとウォルフをFランクにしたら、Eランクになるという条件で納得してもらった。二人は快諾してくれた。
それと俺が前に着ていた服は地竜との戦闘でボロボロになったので、新しい服をくれるそうだ。なにげにこれが一番嬉しい。
「これで話は大体終わりましたかね。後々褒賞などは届けさせますので」
「あぁ、色々とありがとう」
「それはこっちのセリフですよ。繰り返しになりますが、この街を救ってくれて本当にありがとうございました」
ミュールは再び頭を下げる。立場が下の者にも平然と感謝出来る人間は意外と少ない。やはり、ミュールは誠実な男だ。秘密を話したのは間違ってなかったな。
さて、これから何をしようか。リハビリがわりにゴブリン狩りにでも出掛けようか…。
「貴方はまだ安静にしてないとだめですよ。ゴブリン狩りとかは行けませんからね」
…やっぱりあの人読心術でも持ってるんじゃねぇか?
「わかった」
俺は大人しく部屋でジッとしていることにした。
◇ ◇ ◇
それから一週間俺は部屋でジッとしていた。ぼーっとしてるのももったいないので、この世界の知識を教えてもらうことにした。講師はもちろんレイナ先生だ。レイナの知識はどっから手に入れたんだろうか。
まずは魔法について。魔法には属性があり火、水、風、地、光、闇の六つである。属性によって有利不利が存在し、地は火に、火は水に、水は風に、風は地に弱く、光と闇はお互いに弱いという性質がある。イメージとしてはポケ○ンのタイプみたいなものだ。
属性は基本的には一人一属性。だが稀に複数の属性を持つ者もいるらしい。羨ましい話だ。しかし、属性魔法が使えればその属性のすべての魔法が使えるとは限らない。
属性魔法は系統に分かれ、火属性なら炎や灰、煙などに分岐する。さらに同じ炎系統の火属性だったとしても爆発系だったり、燃焼系だったりとさらに細分化される。正直言ってマジで面倒臭ぇ。
一応これは向き不向きの話で理論上は一つの属性魔法を覚えたらその属性のすべての魔法は使えるらしいが…レイナの話によればそんなやつはいないらしい。
あと、無属性魔法は属性に関わらず使うことのできる魔法だそうだ。しかし、普通は最初から魔力の属性に左右されるため、無属性魔法の習得は難しいらしい。
…説明してくれているレイナには悪いがここまで面倒だとは思わなかった。いつしか俺は途中から思考を放棄し、『すべての属性のすべての魔法が使えれば最強』と頭の悪い結論を出していた。
次にお金について。これはレイナに聞いたことと俺の主観が混ざっている。この世界のお金は主に銅貨、銀貨、金貨、白金貨の四種類だ。それぞれ百枚で一段階上の硬貨と同じ金額となる。
ここからは俺の主観だが大体銅貨が十円、銀貨が千円、金貨が十万円、白金貨が一千万円といったところだろうか。もっとも銅貨と銀貨しか使っていないため、他の硬貨は推測でしかないが。
白金貨とかどこで使うんだよ。国家取引くらいだろ。それだったら金貨百枚作れ。絶対にそっちのほうが需要あるから。
最後は国について。この世界には大小さまざまな国が存在するが、有名なのは『四大国』と呼ばれる四ヶ国。
一つ目は『人族国家・聖アルトリア王国』。人間が多く在住し、他の国との交易を経済の中心としている国家である。人族国家と言われているが最も多くの種族がいる国でもある。エルガーもアルトリア王国に所属しており、宗教の中心としても有名だそうだ。
アルトリア…確かレイナの名字もアルトリアだったはずだが…。もしかして…いや、まさかな…。
二つ目は『獣人国家・アニマ』。獣人が多く、農業を中心としている国である。獣人は他の種族よりも体力や身体能力、感覚器官が優れていて国家直属の『獣人騎士団』は無類の強さを誇るという。ウォルフもアニマ出身である。
三つ目は『精霊国家・スピーリト』。エルフ族の国家であり、他の種族は住むことは許されない。エルフ族は排他的な種族でスピーリト以外で暮らすことはほとんど無いそうだ。
四つ目は『鍛冶国家・スティラ』。ドワーフ族が暮らす国家である。ドワーフ族は鍛冶や製作業を職にする者が多く、技術はどの国よりも優れている。作成したものを輸出することで国益を得ている国だ。
この四ヶ国をまとめて『四大国』と言う。しかし、最近発足し、かなりの勢力を持つ国家があるらしい。
それが━━━『魔人国家・ベイリアス』。魔族が作り上げた国家であり、所属する魔族の戦力は『四大国』すべての戦力に匹敵すると推測されている。
そもそも魔族とは人類━━━人間、獣人、エルフ、ドワーフをまとめた呼び方━━━に対抗する種族の総称であり、かつては人類を滅亡寸前まで追い込んだこともあるそうだ。
けど、ベルフェルは俺を助けてくれた。魔族にも色々いるということだろうか。もしかしたらわかり合えるかもしれないな。
と、色々なことを学んでいたらあっという間に一週間は過ぎた。
◇ ◇ ◇
どうやら俺がギルドの医務室にいた二週間でレイナとウォルフが出発の準備は終わらせてくれていたらしい。言い出したのは俺なのに本当にいいやつらだ。
俺たちは普段あまり使われないエルガーの東門から出発することにした。というのも、地竜を倒したことで俺の顔は知れ渡っているらしく出発を知られるとかなりの人数の人が集まってしまうらしい。
なんでもこの街の領主とその側近たちの会議では俺の銅像まで建てようとしたらしい。ミュールに頼んでやめさせてもらった。そんなことをしたら俺は二度とこの街に来ない自信がある。
俺たちを見送ってくれるのはミュール、地竜のことを伝えてきたアルバ、この街で一番最初に会った衛兵のおっさん━━━ラグルスというらしい━━━の三人だった。
「ソースケ君、レイナさん、ウォルフ君。他の街に行ってもお元気で。また来てくださいね。街をあげて歓迎しますよ」
「ありがとよ、ソースケ。お前のおかげで仲間たちを弔うことが出来た。何かあったら言ってくれ。力になるぜ」
「あん時の兄ちゃんがここまで凄いとは思わなかったぜ。お前ならどこに行っても大丈夫だろうよ。頑張れよ」
三人は三者三様の励ましの言葉を掛けてくれた。ミュール、それはやめてくれ。目立つのは好きじゃない。アルバ、違う街に行くのにどう言えというんだ。ラグルス、お前はなんで領主とかを差し置いてここに居るんだ。色々と言いたいことはあるが、俺は一つだけ言葉を返す。
「ありがとう。そっちも達者でな」
俺はそう言って笑った。俺があまり笑わないからか、俺以外の五人はかなり驚いていた。だが、皆もすぐに笑顔になり、手を振って俺たちは歩き出した。
…考えてみたら、俺が転生してから一ヶ月くらいしか経っていないんだよなぁ…。実に濃い一ヶ月だった。もしかしたらこの一ヶ月で今までの十六年と同じくらいの密度があったかもしれない。
さて、次の街では何があるかな。俺たちは期待を胸に次の街へ歩いていった。




