第十八話 告白
俺たちは特に何事も無くギルドマスターの部屋に到着した。俺が寝ていた部屋はやはりギルドの医務室だった。そのため、さして時間もかからず到着できた。
あと、歩いていたらやっぱり傷が痛みだしたので、ウォルフに肩を貸してもらった。もう大丈夫だと思ったのに…。自分が思うより重症のようだ。
レイナがドアをノックし、俺たちはギルドマスターの部屋に入った。
「やあ、ソースケ君。怪我はもう大丈夫ですか?」
俺たちが部屋に入るといつもどおりの笑みを浮かべたミュールがいた。
「えぇ、お陰様で。まだ痛みはありますが、こうして歩けるくらいには回復しました」
俺はミュールに対し、敬語で返す。レイナとウォルフが少々驚いたような顔をしている。俺だって敬語くらいは使える。日本の義務教育をなめるなよ。まぁ、確かにあまり得意ではないが。
ミュールも少々驚いたように目を見開いた。そういえば、地竜と戦う前は敬語じゃなかったな。ミュールはすぐに表情を戻し俺たちに話す。
「それは何よりです。どうぞ、座ってください。あと、無理に敬語は使わなくても大丈夫ですよ」
俺の心境を読んだような言葉に俺は驚く。俺は無愛想なほうで転生する前は「何考えてるかわからない」と言われることもしばしばあった。読心術でも使えるのか…?まぁ、そこはさておき、敬語を使わなくていいならばお言葉に甘えるとしよう。
「わかった、ありがとう」
「やはり、そちらのほうが貴方らしくていいですね」
その言葉を聞き、俺たちはギルドマスターの執務室━━━部屋の前のプレートにそう書いてあった━━━のソファに腰をかける。
執務室には机を挟むように二つのソファが置いてあり、俺たちは空いているソファに右からウォルフ、俺、レイナの順で座った。俺たちが座ったのを確認するとミュールは話し出した。
「まずはお礼を。地竜を倒し、この街を守ってくれたこと、ギルドマスターとしてもこの街の住民としても深く感謝しています。本当に…ありがとうございました」
そう言うとミュールは深々と頭を下げる。ミュールとしては死活問題であったのだろう。ミュールは頭を上げさらに話を続ける。
「つきましては、お礼として何か差し上げたいと思っているのですが、何かご希望はありますか?私が渡せる物ならば何でも構いませんよ」
え、今何でもって…っと、出してはいけないネタが口から飛び出しそうになってしまった。慌てて出そうになった言葉を飲み込む。
お礼かぁ…。特別ほしいものとかは無いんだよなぁ…。しかし、ここで貰わないのも失礼に当たるだろう。何かないか…?あ、そうだ。売ってなかったが、ここにならあるかもしれない。
「それなら…地図を貰えないか?」
「地図…ですか?」
「あぁ、この街のじゃなくて出来るだけ広い範囲のものだとありがたい」
ミュールは俺の答えが予想外だったようで少し驚いたような表情をした。実は旅をするために地図が必要だと思っていたが、どこにも売ってなかったのだ。もしかしたらあるかもしれないと思って言ってみたのだが…
「そんなものでいいなら、私のを差し上げましょう。この国の領地ならば載っていたはずです」
「い、いいんですか?」
俺より先になぜかレイナが反応した。レイナに尋ねると地図はかなり貴重なものらしい。それもこの国すべての地図となると大きな街に一枚あるかどうかという代物だそうだ。
理由は二つあり、一つ目は製紙技術が未発達で紙が貴重だということ。二つ目はあまりにも詳しい地図は戦争などに利用される恐れがあり、多くは作れないそうだ。
あれ、俺もしかしてかなりヤバいこと言ったんじゃねぇか?念の為、ミュールに確認すると
「大丈夫ですよ。君なら悪用はしないと信じてますし、私の地図は…手に入れる術はありますしね」
とてもいい笑顔で言った。最後に少し闇が見えたのは気のせいだということにしておこう。
「さて、ここからが本題です。ソースケ君、覚えてますか?僕が『後で聞きますからね』と言ったこと」
ミュールは笑みを消し、とても真剣な表情で問いかけた。あぁ…あれかぁ…。面倒なことになりそうだと思ったのを覚えている。
「一応覚えてはいる」
「そうですか。それでは早速質問に移ります。まずはドラゴンの種族と耐性がわかったのはなぜか。次に戦闘中にいきなり大剣が現れたのはなぜか。そしてあの地竜を圧倒できたのはなぜか。知りたいのは大きく分けてその三つです。答えたくないなら大丈夫ですが…」
ミュールは指を三本立て問いかけてくる。どう答えようか悩んでいる俺をレイナとウォルフも見つめている。
…話すべきだろうか。だが、これを話せばもしかしたらレイナやウォルフも巻き込まれる可能性がある。この二人は短い付き合いだが信頼している。情報を話したりはしないだろう。
それでも…二人に何かあったら。そう考えるだけで恐ろしい。二人を巻き込むことなんてしたくない。そう考えていると、レイナが俺に話しかける。
「ソースケさん、何かあるなら話さなくてもいいんですよ。私は何があってもソースケさんの味方ですから」
そう話すレイナとともにウォルフも肩を叩き、同意を示す。…味方ならば隠し事が許されるわけではないがレイナもウォルフも俺を安心させようとしたのだろう。だったら俺は…それに応えなければならない。
そうして俺はすべてを打ち明けた。俺が転生者であること、『ユニーク魔法』系の『ユニークスキル』を所持していること、神によって謎の力を与えられ地竜を倒せたこと。
「━━━これが俺の話せるすべてだ。」
「そんなことが…」
レイナはただひたすらに驚き、ウォルフは理解が追いついていないのか頭を抱え、ミュールは何かを考え込んでいる。
いきなり神がどうとか、転生者がどうとか言われても混乱するだろう。俺は誰かが話し始めるのを待つことにした。
しばらく待っていると、考え込んでいたミュールが話し出した。
「とりあえず事情は理解しましたが…にわかには信じがたい話ですね…。とにかくここでの話は他言無用とします。いいですね?」
ミュールはレイナとウォルフに問いかける。二人は大きく頷く。…やはりこの二人は信じてくれた。二人はそれぞれ理由を話し出す。
「私は信じますよ。ソースケさんは私の命の恩人ですから。転生者でもユニークスキルの所持者でもそれは変わりません」
「オレとしては転生者や、ユニークスキルや言われてもなんのこっちゃわからんけどな。ソースケについて行くて決めたんはオレやからそこを変える気はないってだけや」
レイナもウォルフもどうであれ俺は変わらないという意見のようだ。本当に…ありがたい。
だからせめて…二人に何があったとしても必ず守り抜こう。それが俺ができるせめてもの恩返しだ。




