第十五話 VSドラゴン
俺たちはミュールを先頭に『魔の森』を進んでいた。とはいえ、ドラゴンの場所がわからないから必然的に探り探りで進んで行くことになる。
俺も【魔力感知】でドラゴンを探そうとするも見つからない。だが、妙な違和感がある。魔力の感じがいつもと違う…ような気がする。
レイナによると強大な魔力を持つ魔物は周りの空気の魔力にも影響を与え、環境が変化したりすることがあるとのこと。それだけ危険な存在ということか…。
あと、毎回思うがレイナの知識量が凄すぎる。困ったときのレイナ先生だな。これからもわからなかったらレイナに聞くことにしよう。
それから出発する前にミュールから色々な物資が配られた。なんでもギルドに貯蓄してあった物資らしく、それをつぎ込むほどの非常事態であることがわかる。
物資は主に携帯食糧やポーションだった。ポーションはHPやMPを回復させるアイテムで冒険者には必需品だそうだ。使ったこと無いけど。
そんなことを考えていると【魔力感知】に強烈な反応があった。しかし、それは俺には届かなかった。異常なまでのプレッシャー。それがドラゴンなのかはわからないが、そこに何かが居るというのははっきりとわかった。すると俺以外も警戒を始めた。
「皆さんわかっているとは思いますが警戒を。おそらくこの近くにドラゴンがいます」
ミュールが冒険者たちに警戒を促す。だが、これに気づかないなんてありえない。
そして、進むとそれは現れた。体長五メートルはありそうな巨体、まるで木の幹のような太く強靭な後ろ脚、長く鋭い牙と爪、そして全身を覆う堅牢な鱗。これが━━━ドラゴン。
小さい頃に図鑑で見たティラノサウルスみたいな見た目をしているが、ティラノサウルスもこんなプレッシャーは放っていなかっただろう。生きてるティラノサウルスにも会ったことないが。
いや、そんなこと考えてる場合じゃねぇ。急いでドラゴンに【鑑定】を発動させる。
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名前:なし
種族:地竜
職業:なし
ランク:B
Lv:59
HP:3279/3279
MP:2627/2627
攻撃:2893
耐久:4386
敏捷:1638
持久:2574
器用:1842
魔法:1761
幸運:48
‹スキル›
【地属性魔法Lv7】【魔力感知Lv7】【魔力操作Lv6】
【地竜Lv4】
‹耐性スキル›
【打撃耐性Lv6】【斬撃耐性Lv7】【刺突耐性Lv6】
【火属性耐性Lv2】【水属性耐性Lv4】【風属性耐性Lv7】
【地属性耐性Lv4】【光属性耐性Lv3】【闇属性耐性Lv3】
【無属性耐性Lv2】【状態異常耐性Lv2】
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やっぱり馬鹿みたいなステータスしてやがるな…。耐久特化の物理型って感じか?だが、魔法や敏捷も高い。当たっても効かねぇくせにいざとなったら避けられるってなんなんだよ。フザケてんのか。
今は殺した魔物を食っているようで、こちらには気付いていない。ひとまず俺は【鑑定】で得た情報を冒険者たちに共有する。とりあえずミュールに伝えるのがいいな。
「ギルドマスター、こいつは地竜だ。物理攻撃と風属性に高い耐性を持ってる」
「…!わかりました。なぜわかったのかは後で聞きますからね」
そこはもうどうでもいい。ここは勝つことが最優先だからな。それに困ったら記憶喪失で押し通すつもりだ。
「後衛職は一斉に攻撃を。前衛職は攻撃のあと、ドラゴンを取り囲みます。風属性に耐性があるようなので、風魔法使いは前衛職に魔法支援をかけてください」
ミュールは地竜に気づかれないよう、小声で指示を出す。魔法支援は自身の魔力を用いて自分以外を強化する魔法だ。あまり上昇率は高くないが、【身体強化】と合わせることで大きな効果を発揮する。
俺は後衛職と一緒に【無属性魔法】を放つ。魔法は命中したが、地竜はなんか当たったなくらいの反応しか示さない。少しは効けよ、バケモンが。
「グルァァァァ!」
地竜は俺たちのほうを向き、咆哮する。それだけで前衛にいた冒険者たちが吹き飛ばされる。音圧…!?叫び声一つでこの被害かよ!とことんフザケてんな!
意図せず最前線となった俺はバットを握って懐に潜り込み、脚めがけて思い切りバットを振る。そこで予想外のことが起こった。
バットが折れた。
「…は?」
予想だにしなかった出来事に思考が止まる。地竜はその隙を見逃さず、蹴りを放つ。俺は反射的にバットを前に出し、後ろに跳ぶ。
「がはっ…!」
それでも地竜の攻撃はハンパじゃない。俺は近くの木まで飛ばされ、体を打ち付けた。俺がぶつかった木は窪み、盾代わりにしたバットは真っ二つに折れていた。
「ソースケさん!大丈夫ですか!?」
「あぁ、なんとか…って感じだな」
そのまま座り込んでいるとレイナが駆け寄って来る。あまり心配させたくないので、少し強がった。本当はめちゃくちゃ痛い。ポーションを飲むと幾分か痛みが和らいだ。
俺はポーチからもう一本のバットを取り出す。『魔の森』を彷徨っていたときに万が一のために創っていた物だ。しかし、これではまたすぐに折れてしまうだろう。どうしたものか…
「ごはぁ…!」
そんなことを考えていると一つのうめき声が聞こえた。うめき声がしたほうを向くとそこには━━━血塗れのウォルフが倒れていた。他の冒険者たちは同じように倒れているか、立っていても疲労困憊のようだった。すぐに助けに行ける人間はいない。
助けなければと考えるより体が先に動いていた。俺はウォルフに牙を向けていた地竜にバットを振り下ろす。地竜がこちらを向いた。まずい、と思ったときにはもう手遅れだった。
俺は左肩から地竜に噛みつかれた。今まで体験したことの無い激痛が俺を襲う。逃れるため、がむしゃらに繰り出した拳がたまたま地竜の目に当たる。
地竜は一瞬怯んだものの、回転して尻尾を俺に叩きつける。俺は避けようとするも、ボロボロの体ではそれも叶わず、直撃を食らってしまう。
「〜〜っ!」
激痛のあまり声も出せない。俺を煩わしく思ったのか地竜は俺に近付いてくる。立てない。動くことすらできない。せめて意識だけでも途切れさせるな。そんな必死の抵抗も虚しく、俺は意識を手放した。




