第十四話 出陣
その後、俺たちはギルドに集合した。ミュールに言われてレイナとウォルフを呼んだら、二人とも今やってることを放棄してまでついて来てくれた。
ギルドにはエルガー内の全冒険者約百名が集まっていた。しばらく待っているとギルドマスターのミュールが冒険者たちの前に立ち、話し出す。
「ギルドマスターのミュールです。皆さんご存知の通り、『魔の森』にドラゴンが出現しました。アルバさんの報告の後すぐにギルドの職員を派遣したところ、事実であることが確認されました。現在ドラゴンはエルガーに向かって移動しているとのことです」
ミュールが告げるとギルドはざわめき出す。アルバというのは俺がギルドにいたときに飛び込んできた冒険者の名だ。彼らのパーティはこの街ではトップの実績を持つパーティだそうだ。
そんな彼らがやられたのならば騒然となるのも仕方無い。むしろその状況で落ち着いている俺がおかしいのかもな。ミュールはさらに話を続ける。
「皆さんに集まってもらったのは他でもありません。そのドラゴンを討伐するためです。ギルドではこれより討伐部隊を編成しドラゴンの討伐へ向かいます」
その言葉に冒険者たちは一斉に騒ぎ立てる。反対を示す声が大部分を占めているようだ。
「皆さんが反対するのもわかります。ですから志願者を募ります。ドラゴン討伐部隊に参加する者は二時間後にギルドの正面口の前に集まってください。一人も志願者がいない場合━━━私が一人で行きます」
ミュールがそう宣言するとギルドは静まり返る。ミュールの言葉に込められた気迫と決意を感じたからだ。ミュールの目には静かに火が灯っていた。
一度その場は解散となり、俺、レイナ、ウォルフの三人はその場に立ち尽くしていた。どうするかとりあえず話し合おうということになった。
「どうしますか?」
「俺は…ドラゴンについてよく知らない。まずはドラゴンがどういう存在か教えてくれないか?」
俺が記憶喪失という設定を知っているレイナはドラゴンについて詳しく説明してくれた。
レイナ曰くドラゴンには『ステージ』と呼ばれる階級があるそうだ。全五段階でそれにより、ランクや強さが大きく異なってくるらしい。
ステージ1は『下位竜種』と呼ばれ、生まれてから大体一年から十年の竜が該当する。竜の中では若い部類だが、Cランクと侮れる相手ではない。
ステージ2は『属性竜種』。生まれて十年から五十年の竜が該当する。『下位竜種』が属性を持った姿である。ランクはBランクにあたり熟練の冒険者でも狩ることは難しいと言われる。
ステージ3は『中位竜種』。生まれてから五十年から百年の竜が該当する。これはAランクであり人里に現れたら、街どころか国を上げて討伐に挑むクラスである。
ステージ4は『上位竜種』。生まれてから百年以上の竜が該当する。竜の最終進化であり、Sランクに相当する。Sランクは人間がギリギリ討伐出来るランクであるとされている。
そしてステージ5は『竜王』と呼ばれる。生きた年月で辿り着くことは出来ず、各属性の竜の頂点であると認められたときのみ進化出来る。そのため、『竜王』は世界に六体しか存在しないが、もっとも有名なSSSランクとして恐れられている。
さらに『属性竜種』以上は火、水、風、地、光、闇の六つの属性に分かれ属性によって特徴が変わってくるそうだ。
レイナによるとアルバたちのパーティがやられたことからおそらくステージ2以上だと推測されると言う。
今までに受けた依頼でわかったのはレイナは知識だけではなく断片的な情報からでも推測することが出来る冷静な思考が持ち味だということだ。レイナの予測は外れることは少ない。
「ありがとう、レイナ。ここまでの話で討伐部隊に参加するかを決めたい。二人の意見を聞かせてくれ」
俺は説明してくれたレイナに礼を言い、二人の意見を求める。ここまでの話でわかったが、ドラゴンは相当危険な存在のようだ。
はっきり言えば俺たちがこの街のために戦う義理は無い。いざとなったら逃げればいい。さらにぶっちゃけるなら俺はよく知らないこの街の住人よりも二人のほうが何倍も大事だ。二人を危険に晒したくない。だが、おそらくこの二人は…
「…私が戦いで役に立たないのはわかっています。けど…本音を言うなら討伐部隊に参加したいです」
「オレは自分の命が大事や。死にたくはない。せやけど、目の前の助けられる人間見殺しにして生きるのは気分が悪い。やから、討伐部隊に参加したい」
そう言うと思っていた。この二人は会ってから日はあまり経っていないが人を見捨てることが出来ないのはわかっていた。ならば、俺の答えは一つ。
「レイナとウォルフが行くなら俺も一緒に行こう。前とは逆になったな」
ゴブリンの集落に二人を無理矢理連れて行ったことを思い出し、俺たちは笑った。あぁ、やっぱり二人の顔はこっちがいい。死にに行くわけじゃない。少しでも笑っていたい。
◇ ◇ ◇
俺たちが冒険者ギルドへ向かうとすでに数人の志願者がが集まっていた。その中にはミュールやアルバ、衛兵のおっさんの姿もある。衛兵でも志願者を募ったようだ。
時間まで待つと総勢二十四人の討伐部隊が結成された。ミュールが号令を出し、全員で『魔の森』に向かって歩き出す。
こうして俺たちはドラゴン討伐に向かった。このとき俺はまだ知らなかった。世界最強の種族と呼ばれるドラゴンの恐ろしさを。
シリアスシーンを書く能力が欲しいです。




