番外編 とある魔族の哄笑
時は戻ってソースケの出発直後━━━
「フフフ、アハハ、アッハッハッハッハ!」
とある魔族は━━━ベルフェルは一人で哄笑する。
「異常なまでに高いステータス、【鑑定】スキル、そして『ユニークスキル』…━━━間違いない、彼は転生者だ!」
ベルフェルはソースケが転生者であることを確信していた。
「職業が『なし』と表示されたのはおそらく【偽装】スキルだろうけど、Bランクの『測定の水晶』をごまかせるとはね。アレも神からの贈り物だろうな」
ベルフェルは魔族にしては珍しい研究者気質の魔族である。高い洞察力と豊富な知識によりソースケの事情を次々に当てていく。
「しかし、神も『ユニーク魔法』系の『ユニークスキル』を与えるとはね。今はまだ僕にも劣るが、彼が更に力をつけていけば…」
ベルフェルは『ユニークスキル』を使いこなし、さらなるステータスと高い技術を身につけたソースケを想像し身震いする。
「彼は必ず僕を超える強さを手に入れるだろう。もしかするとあの男すらも超えるかも…。やはりそうなる前になんとしてでも手に入れなきゃ…」
と、ベルフェルが考えていると突如として目の前の空間が歪む。【無属性魔法】の上位魔法、【空間魔法】。さらにその中でも上位とされている『空間転移』である。
本来ならば瞬時に戦闘態勢に入らなくてはならないが、ベルフェルは落ち着いている。魔力反応からよく知った人物であることがわかっているからだ。
やがて空間が割れ、中から一人の女性が現れる。腰まで伸びた美しい金髪に同じく金色の瞳、人形のように整った感情の見えない顔、貴族のような服を身に纏い、腰には一本の長剣を差している。
「━━━これは珍しいお客さんだね。何のようだい、ルア」
ベルフェルにルアと呼ばれた女性は口を開く。
「━━━あの方からの御命令です。至急全幹部を招集するようにと。私は伝令兼迎えを命じられました」
鈴を転がしたような美しい声だがまったく感情の感じられない声で告げた。ベルフェルはそのことを気にする様子も無く話を続ける。
「へぇ、あの方が緊急招集とは珍しいね。なにか非常事態かな?」
「話している時間はありません。早く行きますよ。己の立場を自覚しなさい。━━━魔王直下魔王軍最高幹部『七罪魔将』【怠惰】のベルフェル」
「相変わらず堅苦しいなぁ。わかったよ。━━━魔王直下魔王軍最高幹部『七罪魔将』筆頭【傲慢】のルア」
そうしてベルフェルとルアは『空間転移』で向かった。
━━━魔族の本拠地、魔王城へ。
◇ ◇ ◇
「━━━相変わらず陰気臭いとこだね」
「口を慎みなさい。早く向かいますよ」
魔王城に到着したベルフェルとルアは招集された会議室へと向かう。白亜の廊下は美しくはあるが、ベルフェルの言う通り重苦しい印象を与える。
理由はここの空気にある。ここら一帯は普通より空気に含まれる魔力が多いのである。それも下級の魔物や並の人間は生きることすらできぬほどに。
魔族は魔力への耐性が高く即死はしないものの、並の者では動くことすらままならない。ここで普通に歩いているベルフェルやルアが異常なのである。
ゆえに密談や極秘会議にもってこいのため、魔王軍の本拠地となっているのである。
ベルフェルとルアはある扉の前で立ち止まる。重厚な金属製の扉で鍵穴などはないが、登録してある魔力を流すと開く特殊な扉である。
二人が中に入ると八脚の椅子が用意された円卓があり、すでに五人が席についていた。ベルフェルとルアはそれぞれあらかじめ決まっている席についた。
「よぉ、ベルフェル!ちったぁ強くなったか?『七罪魔将』の面汚しがよぉ!」
ベルフェルが座ろうとすると、一人の男が大声で呼びかける。細身だが引き締まった体に真紅の髪、さらに額から二本の漆黒の角を生やしている。『七罪魔将』が一人、【憤怒】のサターという男である。
「アハハ、やめてあげなよサターさん。ベルフェルが可哀想だよ?」
「まったくだ。そんな男でも我ら『七罪魔将』の一員であるぞ」
そこに少年と老人が待ったをかける。しかし、二人とも顔には笑みを浮かべており、内心ではベルフェルを嘲笑っているのが見て取れる。それぞれ【強欲】のモーマン、【暴食】のゼブルと言い、『七罪魔将』の一員である。
「アタシとしては本当にこの男に『七罪魔将』としての実力があるのかどうか、不思議なもんだけどねぇ」
そう言うのは【嫉妬】のレヴィア。ベルフェルはそれらを冷めた目で見ていた。それが気に食わなかったのか、サターが食ってかかる。
「おいおい、なんだその目は?文句があるなら実力で示せよ。まっ、お前にゃ無理だろうがな!なにせお前は━━━」
「そこまでです、サター。席につきなさい」
それを遮ったのはルアだった。さらにルアは続ける。
「ベルフェルを『七罪魔将』に定めたのは魔王様です。それに異を唱えるということは、魔王様に異を唱えるのと同じこと。それ以上続けるのならば━━━私が相手になりますが?」
「チッ、わかったよ…」
サターは渋々ながら席についた。ベルフェルは礼を言うこともなく席につく。その後まもなく、会議室の扉が開かれ一人の青年が現れる。すると全員が一斉に膝をついた。
「そう畏まらなくていい。顔を上げてくれ」
その言葉で皆が顔を上げる。あれほど言い争っていた者たちが一斉に膝をつく人物はただ一人。その青年こそが━━━現魔王にして彼らの主、ガランである。
「さぁ、会議を始めようか」
三人称視点難しいです。




