第十一話 ゴブリンとの戦闘(虐殺)
数分も歩くと、目的のゴブリンの集落に辿り着いた。木をそのまま柱にして、木の葉や藁を被せただけの家とは言えないような家が建ち並んでいる。俺たちは近くの茂みにてゴブリンたちを観察していた。
「なぁ…マジで行くんか?」
「やめたほうがいいと思いますけど…」
未だに反対し続けているレイナとウォルフを無視し、俺は観察を続ける。思っていたよりゴブリンが多いな。だいたい百二十匹くらいか?どうにかなる数ではあるか。
「最悪の場合は逃げるから大丈夫だ」
「そういう問題やないんやけどな…。もうええわ、ヤケクソや。皆殺しにしたる」
「説得は無理みたいですしね…。こうなったら私も最後まで付き合いますよ」
レイナもウォルフも覚悟を決めてくれたようだ。本当にありがたい。俺一人と三人では難易度が段違いだからな。
「二人が渋るようなら、二人には退路の確保を頼もうと思っていたんだが…」
「そしたら、お前の負担がデカなるやろ。オレも前で戦うわ」
「退路の確保なら私に任せてください!」
ふ、二人とも…なんていいやつらなんだ。今後必ず礼をしなければならないな。
「わかった。だが、戦う前に…ウォルフ、【身体強化】を教えてくれないか?」
「…それ、今じゃないとアカンか?」
「当然だろう。スキルがあるのと無いのでは雲泥の差だ。お前も知ってるだろう」
【身体強化】が使えればより早くゴブリンたちを殲滅することができるからな。
「それはそうやけど…いや、説得は時間の無駄やな。つっても、オレが使うときの感覚くらいしか教えられんで?」
「あぁ、それで大丈夫だ」
あと、時間の無駄とはどういうことだ?とは聞かなかった。なにか嫌な予感がしたからだ。わかっている危険に自ら飛び込むほど俺はバカじゃない。
「そんじゃいくで。イメージは『魔力で薄い膜を作るイメージ』や。そのイメージ通りに魔力を動かすんや」
俺はウォルフの言う通りにイメージする。レイナも話を聞いていたみたいで同じようにしている。薄い膜を作るイメージ…。こうか…?
[条件を達成しました。【身体強化Lv1】を獲得しました]
よし、獲得できたな。早速【身体強化】を発動させる。すると先程より楽に魔力を纏わせることができた。
「できたぞ」
「うぅ…私はできません…」
「言うとくけど、レイナが普通やからな?オレも習得まで一週間掛かったんやけど…」
そういえばベルフェルも俺は飲み込みが早いと言っていたな。やはり、高いステータスのおかげなのだろうか。
「まぁ、そこはいいだろう。レイナもあとで覚えればいい。まずはゴブリンを倒そう。俺が合図を出すから、一斉に飛び出すぞ。レイナはここで退路の確保だ」
「はい!」
「おう!」
二人はそれぞれの返事をする。どうやらやる気に満ち溢れているようで、目を輝かせている。さぁ、殲滅といこうか。
まず俺たちは自身の戦闘準備を行う。俺はバットを取り出し、各種スキルを発動させる。ウォルフは双剣を引き抜き、レイナは修道服に忍ばせていた杖を構えた。
「行くぞ…せーのっ!」
俺の合図で俺とウォルフは飛び出し、それぞれの魔法を発動させる。
「『魔弾』」
「『水弾』!」
「『付与・火』!」
発動させると、俺とレイナの魔法は敵を撃ち抜き、ウォルフは双剣に炎を纏わせる。ウォルフの【付与魔法】の魔法だろうか。教わることが増えたな。
ゴブリンたちは魔法で撃ち抜かれた者を踏み越え、俺たちに突撃してくる。俺はバットを振り、ウォルフは双剣で切り刻む。レイナが心配だったが魔法で向かって来る敵を撃ち落としている。向こうの心配は不要のようだ。
ゴブリンは各個撃破を狙ったのか俺に一斉に飛びかかってくる。…狙う相手を間違えたな。
慌てて駆寄ろうとするウォルフを止め、新たな魔法を発動させる。
「『魔散弾』」
『魔弾』より大きい魔力弾が弾け、無数の魔力弾が十体余りの敵を貫いた。
『魔散弾』は小さな無数の魔力弾で多くの敵を撃ち抜く魔法だ。一発の威力は『魔弾』に劣るが、対多数にはもってこいの魔法である。
さらにゴブリンたちが怯んだ隙を突き、近くの三体を殴り飛ばす。
逆側ではウォルフが相変わらずの速度で敵を切り裂いている。ゴブリンでは反応すらできないはずだ。なぜならウォルフのステータスは敏捷と持久だけなら俺より高いのだから。
レイナも大丈夫そうだし、俺もゴブリンの掃除に専念するとしよう。俺たちはそのまま集落中のゴブリンを殲滅していった。
◇ ◇ ◇
数分後、俺たちは特に問題も無くゴブリンの殲滅を終えた。レイナは戦闘で魔力を使い果たしたようで地面に座り込んでいる。
「まさか、本当に倒せるなんて…」
「意外とやれば出来るんやな」
だから問題無いと言っただろう。あとは、ギルドに戻って報告すれば…って、あれ?
「そういえばゴブリン十体の討伐ってどう証明するんだ?」
「魔物には『証明部位』っていうのがあってそれを持っていけば『討伐した』と認められます。ゴブリンの場合は耳だったはずです」
そうなのか、耳を持っていけば…って、俺頭吹き飛ばしてるのがあるな…。まぁ、無事なのだけでも十体分はあるだろう。もっと早く聞いておけば良かったな。
その後、俺とウォルフで頭が無事なゴブリンから耳を切り取っていった。全部で百体ほどになった。
なぜ全部取ったかというと、エルガーではゴブリンが多すぎて常にゴブリンの討伐依頼があるらしい。そこにゴブリンの耳を持っていけば討伐した分の報酬が得られるそうだ。しかし、それを聞くとますます頭を吹き飛ばしたのが惜しまれるな…。
切り取った耳は俺のポーチに入れておいた。ウォルフに「なんやそれ!?」と聞かれたが、いちいち説明するのが面倒なので後で説明するとごまかした。
さて、耳も回収したし、ギルドに戻るとしよう。あっ、レイナは大丈夫だろうか?
「レイナ、歩けるか?」
「す、すみません…もう少し待ってくれませんか?」
レイナは戦闘での魔力切れが尾を引いているらしく、立つことすらままならない様子だった。
「おいおい、このままやと別の魔物もくるで?」
「仕方無い、担いでいこう」
「「え?」」
俺は来たときと同じようにレイナを小脇に抱えた。
「お、降ろしてください!もう大丈夫です!」
レイナはそう言って暴れ出す。さっき「待ってくれ」と言っていたやつがそんなすぐ回復するわけ無いだろう。
俺は無視して来た道を戻っていく。しばらくすると、レイナは顔を真っ赤にして黙り込み、ウォルフはニヤニヤしながら俺とレイナの様子を眺めていた。…何してんだこいつら。




