表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
37/41

第37話「自分の」

週末の食事の前に、美咲さんと玲奈さんに連れられて店へ来た。

白嶺様ではない。彩華のことは白嶺様が見る。私は『服を、一枚、自分で決めたい』とだけ家で言って、許可をもらった。白嶺様はソファに沈んだまま「行け。私の目は一度休ませる」と答えた。

店内で玲奈さんが次々に服を掛け、美咲さんが「これはムンムンさんに合いそうです」と絞る。私はラックの前で止まった。下の方に、スカートが並んでいる。今まで履いたことがない。装束でもスーツでも、借り物のズボンでもない。なぜか手が伸びた。理由は説明できない。会いたいです、と送った相手に会う夜に、これを履きたい気がした。

『これ、を、試します』

「おお、スカート。意外。いいじゃん」

玲奈さんが目を丸くし、美咲さんが「似合うと思います」と微笑む。試着室の鏡の中で、膝から下が今までと違う。動ける。逃げられる。なのに、柔らしく見える。自分が選んだ線だ。白嶺様の「ムンムンの文でいい」に近い、ムンムンの丈だ。

「……うん、かわいい。かわいい」

玲奈さんの評価に、顔が熱くなる。美咲さんが「自分で決めたのが、いちばんいいです」と言った。会計は自分の食い扶持から出す。通帳の数字が、また自分の形になる。

店を出ると、玲奈さんが「陽太、見るの楽しみ」と笑い、私は『やめてください。まだ、熱いです』と返した。袋の中のスカートが、歩くたびに軽く当たる。今まで自由に生きてこなかった自分が、丈を自分で決めた。恋と呼ぶらしい気持ちの隣に、布の選択が並んだ。

家に帰り、白嶺様に袋を見せる。だらしなさのまま、白嶺様は目だけ開けた。

「スカートか。お前が選んだな」

『はい。自分の、意思で。履いたことは、ありませんでした。なのに、欲しくなりました』

「いい。着て行け。説明は不要だ」

『はい』

彩華が袋に触れ、私は高く上げた。鍵を確認しながら、週末の夜を思った。会いたいです、と送った続きを、自分の丈で歩く。

影の一覧にはなかったスカートが、今夜の棚のいちばん上にある。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ