2 明け渡しカウントダウン(18)
──立村はなぜ、友だちを見捨てるようなことを言うのだろうか。
しぱらく無言を通していた立村だが、
「人によるよ。そうだね、関崎の言うとおり、古川さんは最後まで諦めないよな」
自分に言い聞かせるようにつぶやいた。
「当たり前だろう。自分が何かやらかしたわけでもない、あるとすれば親だけだ。それをだぞ、仕方ないだろと見過ごす訳にはいかないだろ」
「そうだね」
気乗りしない相槌のみ返ってくる。やはり立村は本心では共感していないのだろう。無理強いしても虚しい。話を変える事にした。
「じゃあ、そうだ。万が一古川が戻ってこれない場合の女子評議は誰がいいと思う? なかなか思い当たらない。いろいろ顔を思い浮かべてみているんだが、古川以上の存在感はない」
「あの人以上の存在感をもとめても無駄だよ。例えば他のクラスであれば清坂氏なり、轟さんなり、あと静内さんなり名の通った女子が思い浮かぶけどこのクラスは三年間メンバーがこのままだからな」
「賢くないとは言わないが、クラスをまとめられるかと考えると、なかなか難しそうだ。こう言ったらなんだが、うちのクラスの連中は委員会活動よりも部活動、および学外活動に熱心だ。男女問わずとも言える」
たぶん、藤沖もその辺りを心配しているのだろう。あいつがクラスをほとんど顧みず好き勝手に応援団活動に没頭していられたのも、古川にすべてを任せていられたからという部分が大きい。それでも一部の不穏分子……たとえば江波あたりの吹奏楽部集団……がぶつくさ言っているのだ、このまま古川がいなくなったらそいつらを抑えられるとは思えない。もちろん乙彦も手をこまねいているわけではないけれど、いかんせん生徒会副会長の我が身、どこまでクラスメートの面倒を見ることができるのか、それもあぶない。
「立村は、誰が適任だと思う? あくまでも古川がどうしても戻ってこれないと仮定しての話だが」
「今の段階では言えない」
即答された。思いもがけぬ反応だった。
「言えないということは、それなりにお前の中では候補がいるのか」
「いなくはない。けど、今、口にしたらかえって話がこんがらがりそうな気がする」
思わせぶりなことを言うが、立村が親しく話している女子といえば古川以外一人しかいない。単刀直入に突っ込んで見る。
「疋田か」
立村は上目遣いで乙彦を見上げた。答えなかった。
「うちのクラスでお前がまともに話している女子はそのくらいだろう」
たたみかけてみるものの、立村は答えを返さない。まただんまりを決め込む。しかたないので、乙彦なりの所感を述べてみる。
「正直なところ、あまり向いているようにはみえない。それこそ学外活動オンリーだから、藤沖と同じ運命を辿りそうだ。音大目指していると聞いたが、どうなんだろう」
宇津木野ほどではないにしても、ピアノ演奏に関しては優れた才能を持っていることを知らぬ者はない。だが、その才能とクラス運営能力とは全く別だ。確かに愛想はいいしちょこまか動き回るし、規律委員の仕事も楽しそうに果たしていたが、いきなり評議というのはどんなものだろう。




