↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
16/33

第16話 好きな人。

 朝の生徒会室には、まだ誰の姿もなかった。

 それを確認し、カサンドラは静かに扉を閉める。


 まだ登校している生徒が少ない、早朝。


 窓から差し込む朝の光は、大きな長机の上を斜めに横切り、整然と並んだ椅子や壁際の書棚を淡く照らしている。


 背後で扉が完全に閉じたことを確かめてから、カサンドラは胸元に抱えていた書類を下ろした。


 先週の金曜日、初めて参加した生徒会の会議で取った記録を、正式な形へまとめ直した議事録である。

 生徒会書記である以上、完成した議事録を届けるために朝からここへやって来ても、何ひとつ不自然なところはない。


「…………」


 カサンドラは誰もいない室内を見回した後、手元へ視線を落とした。

 議事録の上には、一通の白い封筒が重ねられている。


 昨夜、自室の机に向かって何度も書き直した手紙だった。

 それほど悩んだというのに、書かれている内容そのものは驚くほど短い…というか薄い。


   本日の放課後、もしお時間がおありでしたら、

   生徒会室前の中庭で少しお話しできませんでしょうか。

   ご都合が悪ければ、どうぞお気になさらず。


 婚約者である王子に、ほんの少しだけ話をする時間をもらえないかと尋ねただけである。

 愛を綴ったわけでもなければ、人目を忍ぶような場所へ呼び出したわけでもない。


 待ち合わせに選んだ生徒会室前の中庭も、二人で落ち着いて話すには都合がいい。

 それでいて誰かに見られて困るような場所ではなかった。

 一般の生徒が頻繁に往来する場所ではないものの、生徒会役員なら普通に出入りするため、妙な勘繰りをされる心配もないだろう。


 我ながら、随分無難な内容にしたと思う。

 それなのに、昨夜から妙に落ち着かなかった。


「……何故、これだけのことでこんなに緊張するのでしょう……」


 当然ながら、誰も答えてはくれない。

 カサンドラは小さく息を吐き、まず議事録を提出用の書類受けへ置いた。

 これで生徒会書記としての用事は終わり、手元には白い封筒だけが残る。


 王子がいつも使っている席まで歩き、その前で足を止めた。

 封筒を持つ指先には、いつの間にか余計な力が入っている。


 今ならまだ、何もなかったことに出来る。

 その考えが一瞬頭を過ぎったものの、カサンドラは白い封筒をそっと机の上へ置いた。


 宛名には『アーサー王子へ』と記し、その下には差出人として自分の名前を書いてある。

 たったそれだけの文字が、誰もいない広い机の上では妙に目立って見えた。


 婚約者なのだから、手紙を渡すこと自体には何の問題もない。

 そう分かっているのに、置いたばかりの封筒を回収したい気持ちが僅かに残っている。


 カサンドラは伸びかけた指を途中で止め、そのまま手を握り込んだ。


 入学してから、ようやく一週間が過ぎた。

 同じ教室で毎日のように顔を合わせ、昼食では同じ卓につき、生徒会でも一緒に仕事をするようになったが、王子と二人きりで落ち着いて話す機会はほとんどない。


 王子が悪魔へ変わってしまう未来を回避したい。

 けれど、そのために何かをしたいと願っているくせに、カサンドラは肝心のアーサー本人について、まだ何も知らないに等しかった。


 ゲームで描かれていた『ラスボス王子』ではなく、この世界で生きている彼自身を知らなければならない。

 この手紙は、そのための最初の一歩なのだ。


「……よし」


 小さく呟いたカサンドラは、今度こそ封筒から手を離した。


 ああ…緊張する…!

 本当に手紙を置いて良かったの!?


 昼食の時間になっても、カサンドラの落ち着かない気分は収まらなかった。

 指定された席へ着き、給仕が運んできた料理を前にしても、気づけば何度も王子の様子を窺っている。


 同じ卓についているアーサーは、普段と何も変わらない。

 食堂には大勢の生徒が集まっているが、王子達の席では先週と同じように静かに食事が進み、食器の触れ合う小さな音の合間に短い言葉が交わされる程度だった。


 王子もいつも通りの穏やかな表情を浮かべており、朝の手紙について触れてくる様子はない。

 そもそも、生徒会室へ立ち寄って手紙を読んでくれたのかどうかさえ分からなかった。


 しかも自分は、手紙の最後に『ご都合が悪ければ、どうぞお気になさらず』などと書いてしまったのである。


 あれは王子への配慮なのか、それとも来てくれなかったときの予防線なのか…


 既に読んでいるのに何も言わないのだとすれば、この無反応そのものが返事なのではないかという不安まで湧いてくる。


 そんなことを考えているうちに、目の前の料理の味までよく分からなくなってきた。

 すぐそばにご本人がいるのだから、「尋ねれば解決」する問題なのに。


 本人へ直接聞けるくらいなら、最初から手紙などという手段に訴えていない!


 結局は放課後になるまで待つしかなく、カサンドラはもどかしい時間に心をジリジリと焼かれていたのである。




 ※




「カサンドラ様!」


 昼食を終えて教室へ戻ったところで、背後から名前を呼ばれたカサンドラ。

 朝から王子の手紙について考えてばかりいたせいで、不意を突かれて危うく肩を跳ねさせるところだった。


「はい、なんでしょう」


 どうにか動揺を表へ出さず、いつも通りの笑顔を浮かべて振り返る。

 一切の動揺を出さない自分に自画自賛。


 視線の先には、栗色の髪と蒼い瞳を持つ三人の少女が並んでいた。


 フォスター家の三つ子である。


 顔立ちは驚くほどよく似ているが、カサンドラが三人を見間違えたことは一度もない。

 話し方も表情も仕草もそれぞれ異なるため、誰が誰なのかは最初から明白だった。


 ゲームの中で長い間見続けてきた『主人公』と同じ顔をしていても、三人の纏う雰囲気はそれぞれ違う。


 けれど今日は、その三人にいつもとは違うものが加わっているのが分かる。

 三人とも、左右の耳の少し上あたりに、同じ色の細いリボンを一つずつ結んでいたのだ。


 リゼの髪には左右に赤いリボンが結ばれ、その鮮やかな色が彼女のきりりとした雰囲気によく映えている。

 リタの耳元では二つの黄色いリボンが揺れ、よく動く表情を一層華やかに見せていた。

 リナの青いリボンは左右で控えめに揺れ、彼女の柔らかな佇まいによく馴染んでいる。

 三人が並ぶと同じ幅、同じ結び方のリボンなのに、それぞれまるで違った印象を与えていた。


「まあ。皆様、そちらのリボン、とても可愛らしいですね」


「あ、気づきました?」


 真っ先に反応したリタが嬉しそうに一歩前へ出ると、左右の黄色いリボンが栗色の髪の横で軽く揺れた。


「今日からつけることにしたんです!

 まだ私達を間違える人が多いから、これなら少しは分かりやすいんじゃないかって」


「週末にリナが買ってきてくれたんです」


 リゼが付け加えると、リナは少し照れたように、耳の上で揺れる青いリボンの片方へ指先を触れた。


「同じ幅のものが三色並んでいましたので…。

 三人で使うのにちょうどいいかと思いまして」


「それぞれの色は、リナさんがお選びに?」


「私は黄色がいいって、自分で決めました!」


 尋ねられたリナより先にリタが答え、嬉しそうに胸を張った。


 その隣で、リゼが呆れたように妹を見る。


「買ってきたリナより先に、好きな色選ぶなんて――遠慮がないんだから」


「私もリタには黄色が似合うと思っているし、気にしないで」


 僅かなやりとりの間でも、三人の性格の違いが瞭然だ。


「だって、黄色が一番可愛かったし!」


 リタが当然のことのように言い切ると、リナが楽しそうに笑った。

 リゼは何か言い返そうとしたようだが、結局は諦めたらしく、小さく息を吐いている。


 ただ、こうして改めて三人を見ていると、なるほど良いアイデアだなと感じた。

 左右に二つずつ結ばれた色違いのリボンは遠目からでもよく目立ち、それぞれの色も本人によく似合っている。

 これなら間違われる回数もグンと減るはずだ。


 これがイメージカラーなのかもしれない。

 三人のやり取りを眺めているうちに、カサンドラも自然と頬が緩んだ。


「でも、本当はリボンなんて…なんか、子どもっぽいというか…。

 カサンドラ様はどう思います?

 やっぱり、別の方法が良いでしょうか?」


 リゼは「うーん」と腕を組みながら、左右の耳の少し上で揺れる二つの赤いリボンを気にするように視線を上げた。


 左右に一つずつリボンを結ぶとなると、少し幼く見えるのではないかと気にしているのだろう。

 けれど、どちらも細いリボンを小さく結んでいるだけなので、子どもっぽいというより可愛らしい印象の方が強かった。


「よくお似合いですよ」


 と思ったまま伝えると、リゼは少し照れたように頬の端を赤くした。

 彼女は照れ屋なのだろう。


 カサンドラからすれば、そもそも三人を見分けるためにリボンは必要ない。

 それでも周囲の人間には随分便利な目印になるのだろうし、三人が同じ制服を着て並んで歩いていれば、初対面の人間が迷ってしまうのも無理はなかった。


「これで、少しは名前を間違えられなくなると思います」


 リナが片方の青いリボンへ触れながらそう言った後、何かを思い出したようにカサンドラを見る。


「カサンドラ様には、最初から必要なかったような…」


「あ、確かに! カサンドラ様は最初から見分けてましたよね? すごいですー!」


 リタも改めて気づいたように目を丸くした。


 カサンドラはその指摘を受け、ドキッとする。

 自分が彼女たちを見分けることができた理由など、まさか言えるはずもない。

 折角こうして自分に向けてくれた笑顔が一瞬で消えて、遠巻きにされかねない。


「表情も話し方も随分違いますもの」


「ほら、やっぱりリゼはすぐ分かるんですよね!

 いつも難しい顔してるから!

 眉間の皺とかそろそろ痕がついてそう」


「リタ!」


 左右の赤いリボンを揺らして姉が振り向くと、リタは笑いながらリナの後ろへ半歩だけ逃げた。

 ふふん、と得意顔のリタの表情は真夏のヒマワリを思わせるはつらつとした笑顔。


 最初は三人とも、リボンを見せるためにカサンドラに話しかけてきたのかと思っていたのだが。

 次第に彼女たちがそわそわし始め、周囲の生徒たちの視線を確認するようになった。


「それで皆さま。今日はどうかなさいました?」


 すると、三つ子の動きが一斉にピタッと止まる。


「え、ええと…用事と言いますか…」


 リタの顔が赤くなり、ワタワタと両手を振る。


「実はカサンドラ様に折り入ってお聞きしたいことが」


 真剣な表情になるリナ。


「…できれば、あまり人のいないところが良いんですが…」


 普段あまり他人の視線など気にしないリゼも、困ったようにチラチラと生徒が近くに来ないか緊張している様子だった。


「それでは、今日から選択講義ですし…。

 別の場所で、お話を伺いますね」


 午後から始まる選択講義の後は、教室に集まることなくそのまま解散で下校となる。

 したがって皆、自分の荷物を持って履修予定の講義室に向かうこととなるのだ。


 全校生徒がバラバラになって移動するため、人気がないところを探すのは難しいが…


 カサンドラ達は、学園内にいくつもある中庭の中で先客がいない静かな場所を見つけ出す。

 あまりゆっくりしていたら午後の講義が始まってしまうが、彼女たちの真剣な眼差しに中途半端な場所では良くないと思ったのだ。


「ここでしたら、他の方に聞こえないと思いますよ。

 どうぞ、遠慮なくおっしゃってくださいね」


 改めて尋ねると、緊張のあまりほぼ無言でカサンドラの後についてきていた三人が――顔を見合わせた。


 一体、何だろう?


 だが三人は中々口を開こうとはしなかった。


 先ほどまで妹を窘めていたリゼが急に口を閉ざし、何かを言おうとしては躊躇うように視線を彷徨わせる。

 普段は比較的はっきりと物を言う彼女にしては、珍しい反応だった。


 時間だけが無為に過ぎていく。


「カサンドラ様に、少しお聞きしたいことがあります」


 だがリゼは覚悟を決めたように、一歩踏み出す。


「わたくしに?」


「はい。その……」


 リゼは一度言葉を止め、僅かに頬を赤くしながら視線を逸らした。

 カサンドラが急かさず待っていると、やがて意を決したように顔を上げる。


「ジェイク様には、婚約者はいるんでしょうか?」


「…………え?」


 予想していなかった質問に、カサンドラは思わず笑顔で固まった。


「あっ、ラルフ様もです!」


 間髪入れず、隣からリタが身を乗り出した。


「リタ!」


「だって、私も同じこと聞きたいし」


「順番を守りなさいよ」


「結果が分かれば同じだから!」


「二人とも」


 言い争いになりかけたところへ、リナの穏やかな声が入った。

 大きな声を出したわけでもないのに、それだけで姉二人が一度口を閉じる。


 リナは二人の様子を確かめてから、改めてカサンドラへ向き直った。


「……シリウス様にも、婚約者の方はいらっしゃるのでしょうか」


 普段と変わらない柔らかな声音だった。

 けれど、左右の耳の上で揺れる青いリボンの下に見える頬は、姉達と同じように薄く色づいている。


 カサンドラは三人を順番に見た。

 ここまで揃えば、さすがに質問の意図を間違えることはない。


  え?

  なんで突然そんなこと聞くの?


「三人とも、婚約者はいらっしゃいませんよ…」


 若干、声が上擦る。

 動揺が――肩口からひょっこり顔を覗かせたのかもしれない。


『本当ですか!?』


 三人の声が、見事なほど綺麗に重なった。

 それまで緊張していた表情も一斉に明るくなる。


 同じ顔立ちをした三人が揃って嬉しそうな顔をするものだから、カサンドラまでつられて笑いそうになった。


 いや、笑っている場合ではないのだが。


「少なくとも、わたくしが存じ上げている限りでは、特別に親しくされているご令嬢もいらっしゃいません」


「じゃあ、好きになってもいいってことですか!?」


 リタが胸元で両手を握り、勢いよく尋ねる。


 …好き。


 ええと…それはつまり、三人とも好きな男性がいるということか。

 それもゲームの攻略対象である三人の男子生徒。


 大変喜ばしく、微笑ましい事態…のはずだったのに。


 カサンドラは今、果てしない宇宙の中に一人漂っているのかと錯覚するほど、茫洋とした感覚に支配されていた。


 もしかしたら自分の聞き間違いかもしれない。


 なんとか精神宇宙遊泳から帰還したカサンドラは、引き攣った笑みを浮かべて三人を見渡した。


「ええと…。リゼさんがシリウス様を…?」


「違います! …ジェイク様です」


 リゼは勢いよく全否定した後、小さな声で呟くように信じがたい名前を述べた。


「では、リタさんもジェイク様――」


「なんでですか、私は…ラルフ様です!」


 リタは珍しく真顔で否定したのち、ぐっと拳を固めて別の男子の名前を宣言する。


「ええと…」


「シリウス様です」


 何も問うことなく、リナは普段通り優しい微笑みを浮かべてハッキリと言い切った。


 絶句。


 そんな三人を眺めながら、カサンドラは今聞いたばかりの話を頭の中で整理した。


 リゼが気にしている相手はジェイクらしい。

 リタが想いを寄せているのはラルフで、リナが意識している相手はシリウスだった。


「…………え?」


 ゲームでは、主人公の育て方によって攻略しやすい相手が変わった。


 現在の三人へ当てはめるなら、リゼにとって最も攻略しやすかったのはシリウスで、リタならジェイクとの相性が良い。

 リナの場合は、ラルフとの関係が最も進めやすい組み合わせになる。


 ところが、実際に三人が心を動かされた相手は、その組み合わせから綺麗に外れている。


 もちろん、相性が良くないからといって、その相手との恋愛が成立しないわけではない。

 攻略の難易度が高くなるというだけだ。


 …相当なコツと努力が必要という点を差し置いて、カサンドラにとってあまりにも衝撃的な告白だったのである。


 なんということでしょう。

 全員、聖女にならない組み合わせ!?


 ゲームでは、誰かと恋仲になれば、それだけで聖女へ至れるわけではなかった。

 必要な条件を揃えた上で決められた道筋を進み、その先にようやく聖女となる結末が待っていたのだ。


 各攻略キャラの真エンディングに至るイベントは、カサンドラにとって最終的なセーフティーネットのようなものだった。


 もし、この世界でも同じ条件が必要なのだとしたら。

 4月の段階で、誰も聖女へなれないという結果が確定…!?


 そう考えた瞬間、胸の奥に冷たいものが広がった。


 もし聖女が現れないまま、ゲームと同じ未来を迎えてしまったら。

 王子が悪魔へ変わってしまった時、一体世界はどうなってしまうのか。


「あの……カサンドラ様?」


 リゼの声を聞き、カサンドラは我に返った。

 三人が、不安そうにこちらを見ている。


「やっぱり、無理…ですよね」


 先ほどまであれほど勢いのあったリタも、今では心配そうに眉を下げている。


「身分も違いますし、迷惑になってしまうでしょうか……」


 リナまで遠慮がちにそう続けた。


 その三人を見た瞬間、カサンドラの中で膨らみかけていた不安が止まった。


 ほんの少し前まで、三人ともあんなに嬉しそうに笑っていた。

 好きになった相手に婚約者がいないと知っただけで、三人揃って顔を輝かせていたのだ。


 世界がどうなるのか、聖女になれるのか、王子が悪魔へ変わってしまうのか。

 そんなことは、この子達には何の関係もない。


 三人は世界を救うために恋をしたわけではないし、聖女になるために相手を選んだわけでもない。

 誰かと出会い、その人の言葉や行動に触れ、心を動かされた末に、ただ好きな人が出来ただけなのだ。


 それなのに、自分だけが未来を知っているという理由で、都合のいい相手に誘導する!?

 そんなの、カサンドラがするべきことではない。


 それならば、答えは一つだった。


 王子を絶対に悪魔にはさせない。


 聖女に世界を救ってもらう未来は、そもそも王子の死も前提である。

 王子が悪魔へ変わる未来そのものを起こさなければいいだけの話だ。


 最初からそのために未来を変えようとしていたはずなのに、自分は彼女たちの存在に無意識に甘えていた…!

 主人公ならなんとかしてくれるのではないか、と。

 他力本願が過ぎる!


 そう決めてしまえば、三人の恋をゲームの組み合わせへ合わせる必要などどこにもなかった。

 三人が好きになった相手を、世界の都合で変えさせる理由もない。


「いいえ。好きになってはいけないなどということは、決してありません。

 申し上げた通り、婚約者もおられませんし」


 三人が揃って顔を上げた。


 左右に赤いリボンを結んだリゼも、黄色いリボンを結んだリタも、青いリボンを結んだリナも、ゲームの中では一人だった『主人公』をただ三人に分けただけの存在ではない。

 それぞれ違う性格を持ち、違う将来を思い描き、自分自身の気持ちで誰かを好きになった三人の少女。



    乙女ゲーマーは、恋する女の子の味方なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。